自民党総裁選2025徹底予測|岸田票はどこへ?林芳正が本命?小泉進次郎・茂木敏充は?岸田票から読む総裁選の未来

自民党総裁選制度と「票」の構図を徹底解説

自民党総裁選は、日本の政権の行方を大きく左右する重要な選挙です。総裁選の結果次第で首相が交代することも珍しくなく、事実上「日本のリーダーを決める選挙」と言えます。では、この総裁選はどのような仕組みで進められ、どのように「票」が動いていくのでしょうか。まずは制度そのものを整理し、「岸田票」が今後どこへ流れるのかを理解するための基盤を作ります。

総裁選の基本ルール

自民党総裁選は、大きく分けて「国会議員票」と「党員票」の2種類で構成されています。国会議員票は自民党に所属する衆議院・参議院の国会議員に与えられる票であり、一人につき一票を持ちます。一方、党員票は全国の自民党員によって投票され、各都道府県支部を通じて集計されます。

この2種類の票は「同数」に扱われるのが基本で、たとえば自民党議員が370人であれば、党員票も370票に調整され、合計740票で競われます。つまり、国会議員票と党員票が同じ重みを持つことがポイントです。

1回目投票と決選投票の仕組み

総裁選は通常、1回目の投票で過半数を獲得した候補が勝利となります。しかし、過半数を得られなかった場合は上位2人による決選投票に移ります。このとき、党員票の扱いが大きく変わります。決選投票では、国会議員票に加え、全国47都道府県支部連合会にそれぞれ1票ずつ、計47票が割り振られる仕組みです。

つまり、決選投票になると国会議員票が圧倒的に重みを持ち、地方党員票の影響は縮小します。この仕組みは派閥や党内人脈の影響力を強める傾向にあり、裏側での調整や駆け引きが結果を左右する大きな要因となります。

フルスペック選挙と緊急時対応

自民党総裁選には「フルスペック選挙」と「緊急対応型」の2種類があります。通常は国会議員票と党員票を同数で競うフルスペック方式ですが、災害や解散総選挙が迫っている場合には、党員票を省略し、国会議員と都道府県連票のみで選出するケースもあります。
過去には2012年の安倍晋三総裁誕生時、また2020年の菅義偉総裁選出時に緊急対応型が用いられました。

この方式の違いは、「世論を反映しやすいか、それとも国会議員の意思を重視するか」という本質的な対立でもあります。党員票が重視されると世論の支持を得やすい候補に有利となり、逆に議員票中心では派閥や院内力学が大きな意味を持ちます。

派閥と「票」の関係

自民党総裁選を語るうえで欠かせないのが「派閥」の存在です。自民党の歴史の中で、派閥は資金力・組織力・人材育成の源泉として機能してきました。そして総裁選においては派閥単位での投票行動が一大勢力となります。

ただし、2023年から2024年にかけて相次いだ派閥の解体・縮小により、その影響力は低下しつつあります。特に「岸田派(宏池会)」の解体は大きなインパクトをもたらし、今回の総裁選では「岸田票」がどこへ流れるかが最大の注目点のひとつとなっています。

まとめ:票の力学を理解する重要性

自民党総裁選は単なる人気投票ではなく、制度や票の配分によって大きく結果が左右されます。党員票は世論の影響を反映しますが、最終局面では国会議員票が決定的役割を果たすため、議員同士の人間関係や派閥力学がものを言います。

この仕組みを理解しておくことで、次に解説する「岸田票」の行方や候補者ごとの戦略がより鮮明に見えてきます。総裁選を正しく読み解くためには、まずこの制度の構図を押さえておくことが不可欠なのです。

岸田票とは何か?自民党総裁選における意味と構成

自民党総裁選を語る上で最も注目されるキーワードの一つが「岸田票」です。では、この「岸田票」とは一体何を指すのでしょうか。単に岸田文雄首相の支持者というだけではなく、長年にわたり自民党内で独自の影響力を持ってきた派閥、そしてその政策的な立ち位置や支持基盤が複雑に絡み合った存在です。本稿では「岸田票」の正体を解き明かし、なぜ次期総裁選でその動向がカギを握るのかを解説します。

岸田派(宏池会)の歴史と特徴

「岸田票」の出発点は、自民党の有力派閥であった宏池会(こうちかい)にあります。宏池会は池田勇人元首相を源流とする中道リベラル色の強い派閥で、経済重視・穏健外交を特徴としてきました。派閥政治が全盛だった時代から続く伝統ある勢力であり、吉田学校の流れをくむ「ハト派」的な政策志向を代表しています。

宏池会は派閥としては比較的小規模でありながらも、理論と政策を重視する姿勢で党内に存在感を示し続けてきました。派手な資金力や強力な選挙マシーンを持つわけではないものの、官僚出身者や政策通が多く所属し、党内の政策形成において一定の発言力を保持してきました。

岸田政権誕生と「岸田票」の確立

2021年の総裁選で岸田文雄氏が勝利し首相に就任したことで、宏池会は党内の中心的な派閥に浮上しました。この時点から「岸田票」と呼ばれる票のまとまりが明確に形成され、総裁選や党内人事において大きな影響を持つようになったのです。

岸田首相は「聞く力」を掲げ、対話と合意形成を重視する姿勢をアピールしました。これに共感した議員や地方組織が「岸田票」を支える母体となり、結果として安倍派や麻生派といった他派閥と並び、総裁選において決して無視できない存在となりました。

政策的な位置づけと支持層

「岸田票」は単なる派閥の数だけでなく、政策志向によっても特徴づけられます。宏池会系の議員や支持層は、以下のようなスタンスをとる傾向が強いとされます。

  • 経済政策:財政規律を重視しつつも、必要に応じて柔軟な財政出動を認める中道的立場。
  • 外交・安全保障:対米関係を基軸にしつつも、中国や近隣諸国との関係改善を模索する穏健外交。
  • 社会政策:教育・医療・福祉などへの配慮を強調し、バランスの取れた社会保障政策を志向。

このように「岸田票」は保守一辺倒ではなく、党内の中道リベラル勢力を代表する票のまとまりであると位置づけられます。そのため、総裁選では「保守色の強い候補」よりも「中道・調和型の候補」と親和性が高いとみられています。

派閥解体による「浮動化」

しかし2024年、宏池会を含む主要派閥が相次いで解散・縮小を余儀なくされました。これは政治資金問題や派閥運営に対する批判の高まりが背景にあります。この影響で、かつては「まとまりのある票」として機能していた岸田票が浮動化しつつあります。

つまり、もはや「岸田派だから自動的に岸田票」という構図は崩れ、個々の議員が自らの選挙区事情や将来のキャリアを踏まえて自由に支持先を選ぶ時代に移行したのです。これにより、次の総裁選では「誰が岸田票を引き寄せるか」が最大の焦点となります。

岸田票を握るキーパーソン

現在、岸田票の行方を決める上で注目されるのは、かつて宏池会に属していた有力議員たちです。彼らは岸田首相との関係を持ちながらも、必ずしも「岸田路線の継承」を望んでいるわけではありません。それぞれが次のリーダーに賭ける思惑を持ち、派閥なき時代に新しい結集軸を模索しています。

このため、次期総裁選では「岸田票」は必ずしも一つの候補にまとまって流れるとは限らず、複数候補に分散する可能性も十分にあります。この分散の度合いこそが、総裁選全体の勝敗を大きく左右するのです。

まとめ:「岸田票」とは何を意味するのか

「岸田票」とは、単なる一派閥の残存勢力を超えて、自民党内における中道リベラル的な政策志向と、岸田首相を支えた人脈や基盤の総称といえます。その存在は派閥解体後もなお重要であり、次期総裁選において各候補が最も注目する「票の塊」として位置づけられています。

次章では、この「岸田票」が今後どのように動くのかを理解するため、岸田政権下での支持動向や派閥解体の影響を詳しく見ていきます。

岸田政権下での支持動向と党内の亀裂

自民党総裁選を占う上で避けて通れないのが、現職である岸田政権の評価です。2021年に誕生した岸田政権は、「安倍・菅政権後の安定政権」としてスタートしましたが、3年の歩みの中で支持率の乱高下や党内対立を経験し、現在は厳しい局面に立たされています。本章では、岸田政権の支持動向と、党内で広がった亀裂を整理し、「岸田票」がなぜ流動化しているのかを解き明かしていきます。

岸田政権発足時の期待感

岸田文雄首相は2021年の総裁選を制し、第100代内閣総理大臣に就任しました。当時は「聞く力」を前面に掲げ、国民との対話や丁寧な合意形成を重視する姿勢が注目を集めました。前任の菅義偉政権が短命に終わった反動もあり、「安定した政治への期待」が岸田政権を後押ししました。

初期の支持率は50%前後と比較的高く、コロナ対応や経済再建への期待感が国民の間に広がっていました。特に「新しい資本主義」構想は、格差是正と成長の両立を掲げ、与野党を超えて議論を呼びました。

支持率の低下と要因

しかし、その後の岸田政権は徐々に支持率を下げることになります。主な要因は以下の通りです。

  • 物価高・円安:世界的なインフレに加え、円安の進行で生活必需品やエネルギー価格が高騰。生活者の不満が政権に直撃しました。
  • 増税議論:防衛費増額や少子化対策の財源として増税が取り沙汰され、国民の反発を招きました。
  • 旧統一教会問題:自民党議員と宗教団体の関係が問題化し、説明責任を果たしきれなかったことが信頼低下につながりました。
  • 政治資金問題:派閥をめぐる裏金疑惑や資金の不透明さが批判を浴び、党全体の信頼を揺るがしました。

これらの要素が重なり、2023年以降、岸田政権の支持率は20%台に低迷。世論調査では「政権交代が望ましい」との声すら強まり、党内からも危機感が広がりました。

党内対立と岸田政権への不満

支持率低迷とともに、党内の不満も強まりました。特に以下の3つの点が亀裂を生む要因となりました。

  1. 政策路線の曖昧さ:「新しい資本主義」が抽象的で、具体的成果を見せにくかった。
  2. 派閥運営の混乱:宏池会を率いる岸田首相自身が派閥解体を余儀なくされ、リーダーシップに疑問符がついた。
  3. 人事の偏重:首相官邸主導の人事で、一部の側近や派閥メンバーを重用しすぎるとの批判が出た。

これらが重なり、かつては首相を支えていた議員たちの間にも「次のリーダーを模索すべきだ」という声が強まっていきました。

派閥解体と岸田票の漂流

2024年、政治資金問題を背景に自民党主要派閥が次々と解体・縮小されました。岸田派(宏池会)も例外ではなく、結果として「岸田票」というまとまりは事実上崩壊しました。
派閥なき時代においては、各議員が自らの選挙区事情や世論の動向を踏まえて投票先を決めざるを得ません。これはつまり、かつての「派閥単位の票固め」が機能しなくなったことを意味します。

特に岸田首相自身が派閥解体を主導したため、「仲間を守れなかったリーダー」としての印象が残り、宏池会系議員の間でも不満が根強く残っています。このため、岸田票は次の総裁選で分散する可能性が極めて高いと見られています。

野党や世論の影響

岸田政権の低迷は、野党にとっても追い風となりました。立憲民主党や日本維新の会は「岸田政権不信」を攻撃材料とし、世論の一部を取り込みました。特に若年層や都市部有権者の間では「自民党への信頼低下」が鮮明になりつつあります。

この世論の変化は、自民党議員にとって無視できない要素です。次の選挙で議席を守るためには、「岸田路線から距離を置く」ことが有効と判断する議員も少なくありません。こうした空気もまた、「岸田票」を分裂させる方向に働いています。

まとめ:岸田政権の支持低下が生む票の再編

岸田政権は発足当初こそ安定感を評価されましたが、物価高や増税議論、派閥問題を背景に支持率を急落させました。その過程で党内の不満が噴出し、岸田票はもはや一枚岩ではなくなっています。
次の総裁選では、かつて岸田首相を支えた議員たちがどの候補を選ぶのかが最大の焦点となり、結果次第で自民党の勢力図が大きく書き換えられる可能性があります。

次章では、過去の総裁選における「票の流れ」の事例を振り返り、今回の「岸田票」がどのように分散・再編されるのかを予測する手掛かりを探っていきます。

過去の総裁選から学ぶ「票の流れ」

自民党総裁選において、「派閥票」や「浮動票」がどのように動くかは勝敗を大きく左右します。特に1回目の投票で過半数を取れなかった場合、決選投票に向けて各候補が票を取り込むための調整を行うことになります。その際に鍵を握るのが「票の流れ」です。
ここでは過去の総裁選の事例を振り返り、派閥の解体やリーダー交代の局面で票がどのように動いたのかを分析し、今回の「岸田票」がどこに向かうのかを考える手がかりにします。

2001年:小泉純一郎旋風と派閥の崩壊

2001年の総裁選は、自民党内の派閥政治を大きく変えた選挙でした。当時の小泉純一郎候補は、派閥の支持を十分に得られない「泡沫候補」と目されていました。しかし、党員票で圧倒的な支持を獲得し、一気に形勢を逆転。結果として派閥の論理を超えた世論主導の勝利となりました。
この事例は、「党員票の力」が派閥の縛りを凌駕し得ることを示し、その後の総裁選における大きな教訓となりました。

2012年:安倍晋三の復活と票の再編

2012年の総裁選では、1回目投票で石破茂氏が1位、安倍晋三氏が2位という結果でした。党員票で圧倒的に優位だったのは石破氏でしたが、決選投票に入ると状況は一変します。国会議員票が重視される決選投票で、安倍氏は他派閥からの支持を取り込み、最終的に逆転勝利しました。
この事例から分かるのは、「決選投票では国会議員票が決定打になる」という点です。党員票で優位に立っても、派閥間の調整や議員間の力学によって勝敗は大きく変わるのです。

2020年:菅義偉の一本化と派閥調整

安倍晋三首相の辞任を受けて行われた2020年の総裁選では、菅義偉官房長官が有力派閥から次々と支持を受け、実質的に派閥の「一本化」候補として選出されました。このときは緊急対応型の選挙方式が採用され、党員票が縮小されていたこともあり、派閥の力がそのまま勝敗を決めました。
この事例は、選挙方式によって票の動きが大きく変わることを示しています。フルスペック方式であれば党員票の重みが増しますが、簡易型では派閥調整が最優先となるのです。

2021年:岸田文雄の逆転劇

2021年の総裁選は、河野太郎氏が世論調査で圧倒的に優位に立ちながらも、最終的に岸田文雄氏が勝利するという逆転劇でした。河野氏は党員票で強さを見せましたが、決選投票で議員票を取り込めず敗北。一方、岸田氏は派閥の支持を固めた上で、決選投票において安定した票を得て勝利しました。
この事例からも明らかなように、「決選投票における票の流れ」が勝敗を決定づけるのです。

票の流れに共通するパターン

以上の事例から、自民党総裁選における「票の流れ」にはいくつかの共通パターンが見えてきます。

  • 党員票は「世論の反映」であり、人気候補に有利に働く。
  • 決選投票では「国会議員票」が決定打となる。
  • 派閥が結束して投票する場合、一本化候補が有利になる。
  • 派閥解体や流動化が進むと、票は分散し、調整次第で勝敗が変わる。

現在への示唆

今回の総裁選で注目される「岸田票」も、これら過去のパターンを踏まえて考える必要があります。岸田政権の支持率低迷や派閥解体によって、「まとまった票」としての力は弱まっているものの、依然として数十票規模の議員票を動かす可能性があると見られています。
その行方次第で決選投票の勝敗は大きく変わり、場合によっては勝者を決定づける「キングメーカー」となるでしょう。

まとめ:歴史から学ぶ「岸田票」の未来

過去の総裁選を見ると、「票の流れ」は常に固定的ではなく、情勢や方式、派閥間の駆け引きによって大きく変化してきました。今回の総裁選でも、岸田票がどの候補に流れるかが決選投票を左右する最大のポイントとなります。
次章では、具体的に現時点で出馬が予想される候補者ごとの関係性を整理し、岸田票との親和性を分析していきます。

総裁選候補者ごとの関係・親和性を徹底分析

自民党総裁選において「岸田票」がどこへ流れるのかを考える上で欠かせないのが、各候補者と岸田首相、さらには宏池会との関係性です。
候補者それぞれの政策スタンスや党内での立ち位置、さらには人脈や過去の経緯を丁寧に整理することで、「岸田票」との親和性が見えてきます。本章では有力候補とされる人物について詳しく解説します。

高市早苗:保守強硬路線と距離感

高市早苗氏は「保守本流」を強調する立場で、安全保障や憲法改正に積極的な姿勢を見せています。特に防衛費の大幅増額や対中強硬姿勢は党内右派の支持を集めています。
一方で、宏池会が伝統的に掲げてきた「穏健外交」「中道志向」とは相容れない部分も多く、岸田票との親和性は高くありません
ただし、岸田政権下で防衛費増額を決断した経緯から、一定の政策的接点は存在します。総じて「強硬路線を望まない宏池会系議員」は高市氏を支持する可能性は低いと考えられます。

小泉進次郎:世論人気と党内基盤の弱さ

小泉進次郎氏は、世論調査では常に上位にランクインするほどの人気を誇ります。環境政策や世代交代を訴える姿勢は若手議員や都市部の党員票に強く響きます。
しかし党内での基盤は依然として脆弱で、派閥に属さない「無派閥のスター候補」という立場です。
岸田票との関係性を考えると、「世論受けの良さを重視する議員」や「再選のために世代交代を意識する若手」が小泉氏に流れる可能性があります。とはいえ宏池会の伝統的な支持層である保守中道派とは政策志向がやや異なるため、大量の岸田票が集中するとは考えにくいでしょう。

林芳正:宏池会直系の後継候補

林芳正外相は、宏池会の出身であり「岸田票の最有力な受け皿」とされています。外交通として知られ、外務大臣としても安定感を示してきました。
宏池会の伝統的な「穏健外交」「経済重視」に最も近い候補であり、政策的にも岸田路線の継承者と位置づけられます。
岸田派解体後も宏池会系議員の多くが林氏のもとに結集する可能性が高く、岸田票の本流は林氏に向かうとみられます。特に外交・安全保障政策での経験は、安定志向の議員にとって安心材料となるでしょう。

小林鷹之:若手ホープと岸田政権の近さ

小林鷹之氏は、科学技術や経済安全保障の分野で存在感を高めている若手ホープです。岸田政権では経済安全保障担当大臣を務め、首相からの信任も厚い人物の一人です。
政策面では「現実路線」をとり、技術革新と経済強化を両立させる姿勢を見せています。宏池会出身ではないものの、岸田政権下での起用歴から「岸田票の一部が流れる可能性がある」候補です。
ただし知名度の面で課題があり、広範な議員票を獲得できるかどうかは未知数です。

茂木敏充:党内実力者と調整力

自民党幹事長の茂木敏充氏は、長年にわたり党運営に携わってきた実力者です。調整型でありながらも、自らの存在感を発揮し、党内の影響力は非常に大きい人物です。
岸田首相とも一定の協力関係を維持してきましたが、宏池会との親和性は必ずしも高くありません。
しかし、「政権運営の安定」を望む議員にとっては安心できる選択肢であり、岸田票の一部が茂木氏に流れる可能性は否定できません。特に現実主義的な路線を重視する議員が茂木氏に傾くと予測されます。

その他の候補者と岸田票

この他にも出馬の可能性が取り沙汰される候補は複数存在します。例えば河野太郎氏は党員票に強みを持ちますが、宏池会系の中道リベラル層とは政策的に距離があります。
また、世論の動き次第ではサプライズ候補が台頭する可能性も否定できず、岸田票が複数の候補に分散するシナリオも十分に考えられます。

まとめ:岸田票が最も流れやすい候補

各候補者の関係性を整理すると、林芳正氏が岸田票の最有力な受け皿となる可能性が高いことが見えてきます。宏池会直系であり、岸田路線を自然に引き継げる存在だからです。
ただし、党内のパワーバランスや選挙方式によっては、小泉進次郎氏や茂木敏充氏といった候補に一部の票が流れる可能性もあり、結果として「分散」するシナリオも想定されます。
次章では、これら候補ごとに「岸田票が流れる可能性」をさらに比較し、最終的にどの候補がどの程度の支持を得るかを予測していきます。

岸田票が流れる可能性が高い先を徹底分析

自民党総裁選の最大の焦点の一つが「岸田票の行方」です。宏池会の解体によって従来の派閥単位での結束は崩れましたが、それでも岸田票は数十票規模の影響力を持つと考えられています。この票がどの候補に流れるかによって、決選投票の結果が大きく変わる可能性があります。
ここでは有力候補ごとに「岸田票がどの程度流れるか」を具体的に分析します。

林芳正:岸田票の本流受け皿

最も有力な岸田票の受け皿は、やはり林芳正外相です。宏池会出身であり、岸田首相の後継者的な存在と目されています。外交・安全保障での経験と安定感は、宏池会系議員にとって大きな安心材料です。
特に「穏健外交」「経済重視」という政策スタンスは宏池会の伝統を受け継いでおり、岸田票の過半数は林氏に集まる可能性が高いと見られています。

ただし課題もあります。林氏は国民的人気が高いとは言えず、党員票で優位に立つのは難しいと予想されます。したがって、林氏が勝利するには岸田票をまとめた上で、他派閥からの議員票をどれだけ取り込めるかがカギとなります。

茂木敏充:調整型リーダーへの票流入

自民党幹事長の茂木敏充氏は、実務型で党内調整力に長けたベテランです。岸田政権下でも党運営を支えてきたことから、「安定継続」を重視する岸田票の一部が流れる可能性があります。
特に地方組織との関係が強い議員や、次の衆院選を見据えて「無難な選択」を志向する層は茂木氏を支持する可能性があります。

ただし、茂木氏は宏池会出身ではないため「伝統的な岸田票のすべてを取り込む」ことは難しく、一定数の票が流れるにとどまるでしょう。

小泉進次郎:若手・改革派議員の選択肢

小泉進次郎氏は、党員票・世論の支持で突出する候補です。宏池会系の中道派議員が必ずしも直接的に支持するわけではありませんが、次の選挙を意識する若手議員が「世論人気に乗る」形で小泉氏に流れる可能性は十分にあります。
つまり、岸田票の中でも再選に危機感を抱く若手議員の一部が小泉氏にシフトする構図です。

ただし党内では「実務経験不足」との懸念も根強く、宏池会の伝統的な票が大量に流れることは考えにくいでしょう。

高市早苗:政策接点は限定的

高市早苗氏は、憲法改正や防衛力強化を強く訴える保守強硬派の代表です。宏池会の「穏健外交」とはスタンスが異なるため、岸田票がまとまって高市氏に流れる可能性は低いと考えられます。
しかし、防衛費増額を決断した岸田政権下で一定の政策的接点が生まれたことは事実であり、安保重視派の岸田系議員が一部流れる可能性はあります。

小林鷹之:次世代リーダーとしての期待

小林鷹之氏は、経済安全保障担当大臣を務めた実績を持つ若手リーダーです。岸田政権下で起用されており、首相からの信任も厚い人物です。
宏池会出身ではないものの、岸田票の中でも若手議員を中心に一部が流れる可能性があります。知名度不足がネックですが、次世代を担う存在として「期待票」が投じられる可能性は否定できません。

比較:岸田票の流入予測

ここで候補ごとの「岸田票流入可能性」を整理します。

候補者岸田票の流入可能性理由
林芳正高い(過半数以上)宏池会直系、政策的親和性、後継者的存在
茂木敏充中程度党運営を支えた実績、安定志向の受け皿
小泉進次郎一部流入若手・世論人気を重視する層
高市早苗限定的安保重視派のみ、政策的親和性は低い
小林鷹之一部流入次世代リーダーへの期待票

まとめ:林芳正が最有力、分散シナリオもあり

総合的に見れば、岸田票の最大の受け皿は林芳正氏であることは明白です。しかし、派閥の解体や支持率低迷を受けて票は分散しやすい状況にあり、茂木敏充氏や小泉進次郎氏に一部が流れる可能性も高いと考えられます。
つまり、「林を軸とした分散」というのが最も現実的なシナリオでしょう。
次章では、この票の分散を左右する不確定要素や変数について掘り下げ、最終的な勝敗シナリオを展望していきます。

自民党総裁選を左右する変数と不確定要素

自民党総裁選は単なる「派閥間の票読み」だけでは決着しません。世論、メディア報道、地方党員の動き、そして直前の政治的駆け引きなど、多くの変数と不確定要素が結果を大きく左右します。
本章では、今回の総裁選で「岸田票」がどう動くのかを見極める上で重要となる変数を整理し、その影響を徹底的に分析していきます。

1. 地方党員票の動向

まず注目すべきは地方党員票です。自民党総裁選の特徴は、国会議員票と党員票が同数である点にあります。特にフルスペック方式で行われる場合、地方党員票の比重は極めて大きくなります。
過去の総裁選でも、小泉純一郎氏(2001年)、石破茂氏(2012年)などが党員票で圧倒的な支持を得て躍進しました。
今回の選挙でも、都市部や若年層を中心に支持を集める小泉進次郎氏が有利と見られており、「岸田票」が地方党員の動きによって部分的に影響を受ける可能性は十分にあります。

2. 世論とメディア報道

総裁選は党内選挙でありながら、世論やメディアの影響を強く受けます。世論調査の支持率や報道の扱いは、国会議員が投票先を決める際の重要な判断材料となります。
特に支持率が低迷している岸田政権においては、「次の選挙で戦える候補かどうか」が大きな判断基準となり、メディアに持ち上げられる候補が有利になる傾向があります。
そのため、「世論人気」が高い小泉進次郎氏や、安定感を強調できる林芳正氏が注目を集める可能性があります。

3. 選挙方式の違い

総裁選にはフルスペック方式緊急対応型方式の2種類があります。前者は国会議員票と党員票が同数となり、世論を反映しやすい仕組みです。一方、後者は党員票を省略し、国会議員票と都道府県連代表票のみで争われるため、派閥調整が決定打となります。
もし衆院解散が迫るなど緊急時対応となれば、「岸田票」の影響力は拡大し、議員票をどれだけ束ねられるかが勝敗の鍵を握ります。

4. 解散総選挙の時期

総裁選と衆院選のタイミングは密接に関わっています。仮に総裁選直後に衆院解散が見込まれる場合、国会議員は「選挙の顔になれるかどうか」を最重要視します。
その場合、世論に強い候補が有利となり、岸田票が分散して「勝ち馬」に乗る動きが加速するでしょう。逆に解散が遠い場合は、派閥内の調整や政権運営の安定が優先され、林芳正氏や茂木敏充氏に岸田票が流れやすくなります。

5. 他派閥との駆け引き

派閥の解体が進んだとはいえ、未だに派閥的な動きは存在します。安倍派や麻生派といった大派閥の残存勢力がどの候補に肩入れするかによって、岸田票の影響力も変わってきます。
特に決選投票では「どの候補と組むか」という戦略が重要であり、岸田票は「キャスティングボード」を握る存在となり得ます。

6. 政策テーマの争点化

総裁選では単なる人物人気だけでなく、政策も争点となります。特に以下のテーマが今回の総裁選を左右する可能性があります。

  • 防衛費増額と財源問題:増税か、国債か。岸田政権で議論されたテーマが再燃する。
  • 少子化対策:持続可能な社会保障制度の構築を誰が実現できるか。
  • 外交・安全保障:米中関係やウクライナ問題への対応。
  • 経済再生:円安・物価高への対応と「成長と分配」の実現。

これらの政策テーマに対する立場が、岸田票を持つ議員の判断基準となり、最終的な票の流れに影響を与えます。

7. サプライズ要素

自民党総裁選では、しばしば予想外の展開が起こります。例えば2001年の小泉純一郎氏や、2021年の岸田文雄氏の勝利はいずれも「番狂わせ」と呼ばれました。
今回も、情勢によっては新たな候補の台頭や、現状有力とされない人物が支持を集める可能性があります。この場合、岸田票が一気にその候補へ流れるシナリオも否定できません。

まとめ:変数が「岸田票」の価値を高める

自民党総裁選は、党員票・議員票の単純な合算では決まりません。地方票、世論、選挙方式、解散時期、派閥の動向といった多くの変数が絡み合い、その時々で「岸田票」の価値が変動します。
確実なのは、岸田票は少数に見えても決選投票でキャスティングボードを握る可能性が高いということです。
次章では、これらの変数を踏まえた上で「岸田票は最終的にどこに向かうのか」を総合的に予測します。

結論と予測:岸田票はどこに流れるのか

ここまで自民党総裁選の制度、岸田票の正体、政権下での支持動向、過去の票の流れ、そして候補者ごとの関係性や変数を整理してきました。最終章ではそれらを踏まえ、「岸田票はどこに流れるのか」という最大の問いに対して結論を提示します。

岸田票の本流は林芳正へ

結論から言えば、岸田票の本流は林芳正外相に流れる可能性が最も高いと考えられます。林氏は宏池会出身であり、政策的にも岸田路線を自然に継承できる立場にあります。
「穏健外交」「中道的な経済政策」という宏池会のDNAを体現しており、かつての岸田派の議員たちが安心して投票できる候補です。
特に岸田政権を支えた中堅・若手の議員は、「路線の継続」を選ぶことで有権者に一貫性を示したいと考えるため、林氏を支持する動きが強まるでしょう。

一部は茂木敏充・小泉進次郎へ分散

ただし、岸田票のすべてが林氏に集まるわけではありません。むしろ重要なのは「分散」という現象です。
安定志向を持つ議員の一部は、党運営に実績のある茂木敏充氏へ流れると予想されます。茂木氏は現実主義的な調整型のリーダーであり、派閥解体後の不安定な党内で「安定感」を求める層に支持されやすい存在です。
また、次の衆院選を見据えた若手議員の一部は、小泉進次郎氏の「世論人気」に乗る可能性があります。特に都市部選出の議員は「勝てる候補」を選びやすいため、小泉氏にシフトすることが想定されます。

高市早苗への流入は限定的

一方で、岸田票が高市早苗氏に大きく流れる可能性は低いと考えられます。政策スタンスの違いが大きく、宏池会系の中道リベラル層とは親和性が低いためです。
ただし、安全保障を重視する一部の議員は高市氏に票を投じる可能性もあり、数票単位での流入は想定されます。

票のシナリオ予測

以上を踏まえると、岸田票の流れは以下のようにシナリオ化できます。

候補者岸田票の流入割合(予測)特徴
林芳正50〜60%宏池会直系、政策継承の本流
茂木敏充20〜25%安定志向、党内調整力
小泉進次郎10〜15%若手・都市部、世論人気
高市早苗5%以下安保重視派のみ
小林鷹之数%期待票、次世代リーダー

決選投票での影響力

岸田票の分散は、1回目投票よりも決選投票で大きな意味を持ちます。特に林氏が決選投票に残った場合、岸田票の大半を固められるため優位に立つでしょう。
一方、林氏が決選投票に残れなかった場合は、岸田票の分散が決勝カードを大きく揺るがします。茂木氏や小泉氏が「漁夫の利」を得る可能性も十分にあります。

今後の注目ポイント

今後の情勢を見極める上で注目すべきポイントは以下の通りです。

  • 党員票の動向(小泉氏に有利かどうか)
  • 解散総選挙の時期(早期なら世論重視、遅ければ調整型)
  • 派閥残存勢力の動き(特に安倍派と麻生派)
  • メディアの扱いと世論調査(人気候補が誰になるか)

最終結論

総合的に見れば、岸田票の本流は林芳正氏に向かうと予想されます。ただし、票の完全な集中は難しく、茂木敏充氏や小泉進次郎氏に分散するシナリオが現実的です。
この分散が決選投票の勝敗を大きく左右し、場合によっては岸田票が「キングメーカー」として次期総裁を決定づける役割を果たすことになるでしょう。
すなわち、「岸田票」は消えたのではなく、形を変えて自民党総裁選の行方を握り続けているのです。