ガソリン税25.1円廃止へ|暫定税率決定で価格は140円台に

ガソリン税暫定税率が50年ぶりに廃止へ【結論】
2025年12月28日、参議院本会議で「ガソリン税暫定税率廃止法案」が全会一致で可決されました。これにより、1974年から続いてきたガソリン1リットルあたり25.1円の上乗せ税率が、2025年12月31日でついに廃止されます。さらに、軽油税でも2026年4月から17.1円が削減されることが決まりました。これは50年以上維持されてきた仕組みが大きく変わる歴史的な転換点です。
今回の廃止決定は、与野党6党が修正合意し、物価高対策の一環として成立しました。ガソリン価格の上昇が全国的に続く中、多くの生活者や企業が強い負担を感じてきた背景があります。政治の場で珍しい「全会一致」という結果は、ガソリン価格抑制の必要性が広く共有されていたことを示しています。
ガソリン価格はどう変わるのか?
25.1円の暫定税率廃止により、全国平均で163円台後半にあるガソリン価格は、140円台まで下がる可能性があります。政府は急激な値下がりによる混乱を防ぐため、補助金を現在より段階的に増やしながら価格を調整する方針を示しました。このため、値下がりは一気に進むのではなく、週ごとの変化を見ながら緩やかに進む見通しです。
地域差が生じる理由としては、次のポイントがあります。
- 卸売価格が地域によって異なる
- 輸送コストに差がある
- 独立系スタンドの競争環境が地域によって違う
そのため、都市部では145〜150円台、地方では140円を切る地域も見込まれています。特に車依存の高い地方にとって、この値下がりは直接的な恩恵になります。
家計と企業に起こる即時の変化
ガソリン代が25.1円下がると、一般家庭の自家用車利用では月数千円の節約につながります。例えば、 月に60リットル給油する家庭では月1,500円の削減となり、年間だと18,000円もの負担軽減です。複数台所有の家庭では、さらに大きな節約になります。
企業にとっても影響は大きく、特に荷物を運ぶ物流業界では燃料費がコストの大部分を占めます。ガソリン価格の引き下げは、物価上昇を抑える効果を生み、消費者にとっても間接的なメリットが期待できます。さらに観光産業でもドライブ需要が増え、地方経済の活性化にもつながる可能性があります。
まとめると、今回の暫定税率廃止は、生活者・企業・地方経済に幅広い恩恵をもたらしつつ、価格安定のための補助金政策と合わせて進む重要な政策転換です。この政策の本当の効果は、2026年の軽油税削減も含めて数年間にわたり現れていくでしょう。
1974年に始まったガソリン税「暫定税率」の誕生背景
ガソリン税の暫定税率は、1974年の第一次石油危機をきっかけに導入されました。当時、日本は急激な経済成長の最中にあり、道路網を整備するための財源が深刻に不足していました。そこで政府は、当面の資金を確保する目的で、ガソリンに25.1円を上乗せする「暫定措置」を設けました。本来は一時的な制度とされていましたが、社会インフラの需要増により、そのまま長期間継続されることになりました。
この暫定税率は「道路特定財源」として活用され、高速道路、幹線道路、地方の生活道路など、多岐にわたる整備に用いられてきました。導入当初、日本の道路整備は発展途上であり、財源不足は深刻な課題でした。暫定税率は、その状況を改善するための即効性のある財源確保策として歓迎されました。
50年近く残り続けた政治的・財政的背景とは
「暫定税率」は一時的な措置として始まりましたが、実際には50年近く維持されました。その理由は大きく分けて三つあります。
- 道路整備が継続的に必要だったため:高速道路の延伸や老朽化対策など、常に新たな財源が求められました。
- 特定財源の仕組みが政治的に維持されてきたため:道路予算を確保するため、政治の場では暫定税率を維持する方向が繰り返し選ばれました。
- 税収が大きく、廃止による財政への影響が極めて大きかったため:この上乗せ分は年間約1.5兆円規模の税収となり、容易に廃止できない構造が定着しました。
2000年代後半には、暫定税率の廃止を巡る議論が一段と活発になりました。特に2008年には、暫定税率が期限切れとなり、一時的にガソリン価格が大幅値下げとなる“ガソリン値下げ競争”が全国で起こりました。しかし政府はその後、税収不足による財政悪化を懸念し、暫定税率を復活させました。この一連の流れが、暫定税率維持の強い政治的力学を示しています。
暫定税率が生活に与えてきた影響とは?
暫定税率は長年にわたり、ガソリン価格を押し上げる要因となってきました。特に車が生活の基盤となっている地方では、ガソリン価格高騰は家計負担を直撃し、経済活動全体に大きな影響を与えてきました。
- 家計負担の増加:車通勤や送迎が必要な家庭では、ガソリン代の上昇が月に数千円規模の支出増加となりました。
- 物流コストの上昇:運送業や宅配業は燃料費が主要コストであるため、暫定税率は運賃の上昇につながりました。
- 地方の経済停滞に影響:ガソリン価格が高い地域では、人の移動が減り、観光需要にも影響が及んでいました。
その一方で、暫定税率は道路整備の基盤財源としては一定の役割を果たしてきました。安全な道路の維持、災害復旧、高速道路網の拡充など、国民生活を支えるためには欠かせない部分もありました。
今回の暫定税率廃止は、長年続いた制度の大きな転換を意味します。生活者への負担軽減が期待される一方で、道路財源の新たな確保策が必要となるなど、今後の議論にもつながる重要な政策変更です。
与野党6党が合意した背景とは?
ガソリン税の暫定税率廃止が実現した最大の要因は、与野党6党が初めて「物価高対策」で完全に歩調を合わせたことです。2024年以降、原油高と円安の影響でガソリン価格が上昇し、消費者からの不満が強まりました。政治の現場でも「ガソリン価格を下げろ」という声は大きく、支持率の低下を懸念する政府と野党側が利害一致したことが、今回の修正合意につながったのです。
物価高圧力が政治を動かした理由
政府は2023年からガソリン補助金を実施してきましたが、価格の高止まりは止まりませんでした。特に地方では1リットル170円台が続き、生活者だけでなく中小企業からも強い改善要望が出ていました。こうした圧力の蓄積が、政党間の垣根を越えた合意へとつながりました。政治的に「反対すれば支持率が下がる」という空気が共有され、与野党共通の優先課題となったのです。
政府補助金との整合性をどう取ったのか?
暫定税率の廃止には価格変動のリスクがあります。政府は急激な値下がりが市場を混乱させることを懸念し、補助金を段階的に増やす方式を採用しました。これにより、卸売や小売の価格調整がスムーズになり、ガソリンスタンドの混乱を最小限に抑えられます。政党間協議の中では、補助金の規模や期間について最も激しい議論が交わされ、最終的に「段階的調整」が妥協点となりました。
補助金増額の仕組みと目的
補助金は元売り業者に支給され、流通段階での急な値下げを避ける役割を持ちます。たとえば、1リットル25.1円が一気に消えると、卸価格が乱れスタンド間の競争が過熱する恐れがあります。補助金により値動きが緩やかになれば、消費者は混乱なく恩恵を受けられます。政府はこの補助金を2026年まで段階的に調整する方針を示し、政党側もこの方向性を支持しました。
参院本会議で全会一致となった政治的意味
今回の法案は、珍しく「反対ゼロ」で可決されました。通常、税制変更には与党と野党の対立が起きやすいのですが、今回は生活者に直接メリットがある政策であったため、全ての政党が賛成に回りました。全会一致という結果は、国会が「物価高と向き合う姿勢」をアピールする象徴的な出来事でもあります。さらに、選挙前の政党にとっても支持獲得の材料となり、政治的メリットが大きい判断でした。
選挙戦略としての側面も大きい
ガソリン価格は日常生活に直結し、有権者が最も敏感に受け取る政策の一つです。政党は「生活者のための政策」を示すことで支持率向上を狙いました。また、物価高対策は選挙の争点となりやすく、政党にとって反対する理由がないテーマです。今回の一致は、政策的判断というより「政治的必要性」が強く働いた結果ともいえます。
法案成立までの最終プロセス
修正合意後、委員会審議では与野党が価格影響や税収減への懸念について確認を行い、大きな対立はありませんでした。その後、参議院本会議へと送られ、全会一致で可決。衆議院での審議も速やかに進む見込みで、廃止は予定通り2025年12月31日に実施されます。政治プロセスとしては極めて短期間での決着であり、それだけ優先度が高かったことを示しています。
25.1円引き下げがガソリン価格に与える直接的なインパクト
ガソリン税の暫定税率25.1円が廃止されることで、理論上はガソリン価格がそのまま25.1円下がる計算になります。現在の全国平均価格は163円台後半で推移しており、単純計算では138〜140円台が見えてきます。これは2020年以来の水準であり、消費者にとって過去数年で最も大きな値下がり幅になります。
ただし、実際の価格は地域差や卸売価格の変動により、必ずしも同じ幅で下がるわけではありません。都市部の激しい価格競争地域では140円台前半までの下げが見込まれ、地方では140円を切る店も出る可能性があります。一方、流通コストが高い地域では145円前後にとどまるケースも考えられます。
都市部と地方で価格差が生まれる理由
ガソリン価格は全国統一ではなく、地域ごとに約10〜15円の差が出ることが一般的です。今回の税率廃止でも、この価格差は解消されるどころか、むしろ拡大する可能性があると予測されています。その理由は次のとおりです。
- 輸送コスト:離島や山間部では配送コストが価格に反映されやすい。
- 競争環境:都市部はスタンド数が多く、競争が激しいため値下げが早い。
- 仕入れタイミング:在庫を抱えるスタンドは値下げが遅れることがある。
これらの要因により、暫定税率の廃止後は値下げのスピードや幅に差が生じると考えられます。
140円台は本当に実現するのか?専門家の試算
140円台の実現可能性については、原油価格と為替レートの影響を無視できません。2025年12月時点では、原油相場は1バレル80〜85ドル前後、為替は1ドル150円前後で推移しています。この条件はガソリン価格を押し上げる要素となりますが、税率廃止による25.1円減はそれを上回る効果を持っています。
有識者の試算では、以下のような価格推移が予想されています。
- 都市部:139〜145円
- 地方主要都市:137〜143円
- 郊外・農村地域:135〜140円
特に地方は車依存率が高いため競争が進みやすく、値下がり幅が大きくなる傾向があります。こうした分析から、140円台は十分に現実的な水準と言えます。
補助金制度との併用が価格形成に与える影響
政府は急激な値下がりを防ぐ目的で、2026年まで段階的に補助金を増減させる方式を取ります。この補助金は元売り企業に支給され、流通段階の価格乱高下を抑える役割を果たします。補助金があることで、スタンド側も安定した価格で販売でき、消費者が突然の値上がりに驚く状況を避けられます。
また、この仕組みにより、値下げがゆっくりと進むことで、スタンド間の「値下げ競争」が過熱しにくくなる効果も期待されています。逆に、補助金がなくなる2026年以降は、価格の変動幅が大きくなる可能性もあります。
消費者行動に表れる変化と予測される波及効果
ガソリン価格が大幅に下がると、消費者の行動にも大きな変化が見込まれます。特に以下の3つの動きが予測されています。
- ドライブ需要の増加:行楽地への移動が増え、観光業にも追い風。
- 給油間隔の短縮:価格下落期は給油を待つ傾向があるが、安定すれば日常的に給油が戻る。
- スタンドの競争激化:値下がり後は地域での競争が強まり、価格差が出る。
また、低価格が続けば燃費の悪い車の利用が増える可能性もあります。エコカーへの移行が一時的に鈍化する懸念はあるものの、全体としては消費活動が活発になるため、経済全体にはプラスの影響が期待されます。
ガソリンスタンド業界の変化と地域経済の今後
スタンド業界にとっては、値下がりは必ずしもプラスではありません。利益率が低くなることで、経営が厳しい小規模スタンドは統合や閉店が進む可能性があります。一方、大手は安定した仕入れと価格戦略が強みとなり、シェア拡大につながるでしょう。
地域経済にとっては、ガソリンが安くなることで人の移動が活発になり、観光、ショッピング、飲食などへの支出が増えることが期待されます。特に地方にとっては、ガソリン価格の低下は経済活動を支える重要な要素となります。
一般家庭の負担軽減効果はどれほど大きいのか?
ガソリン税25.1円の廃止は、家計に直接的なメリットをもたらします。特に自動車の使用頻度が高い家庭ほど、節約効果は顕著になります。たとえば、平均的な家庭が月に60リットルを給油すると仮定すると、月間で約1,500円、年間では18,000円の負担減となります。もし2台所有の家庭であれば、この数字は倍になり、年間3〜4万円の節約も十分に可能です。
さらに、通勤や子どもの送り迎えなど、車の利用頻度が高い家庭は恩恵が大きく、地方の生活者にとっては生活費全体の軽減につながります。燃料費の値下がりは、電気代や食料品の値上がりが続く中で、貴重な「固定費の削減項目」として家計改善に寄与するのです。
車の使用状況別に見る家計のメリット
ガソリン価格の下落はすべての家庭に効果がありますが、そのメリットは利用状況により異なります。以下は代表的な家庭環境別の節約試算です。
- 通勤で毎日20km以上運転する家庭:年間で2万〜3万円の節約が可能。
- 子どもの送迎や買い物で頻繁に運転する家庭:年間1.5〜2万円程度の負担減。
- 週末だけ車を利用する家庭:年間5,000〜1万円の節約。
特に地方の子育て世代は車の利用頻度が高いため、今回の税率廃止によるメリットは非常に大きいといえます。
企業へのメリットは家計以上に大きい
ガソリン価格の低下は、実は家庭より企業のほうが影響が大きいと言われています。特に物流や運送、建設、観光など、車両が多く稼働する業界では、燃料費は経営を左右する重要なコスト要因です。暫定税率25.1円の廃止により、企業は以下のような恩恵を受けます。
- 運送業の燃料費が大幅に減少:1台あたり年間数十万円規模の負担軽減も。
- 商品価格の上昇を抑えられる:燃料費が減ることで価格転嫁の必要性が低下。
- 利益改善による従業員への還元:賃上げや投資に回す余力が生まれる。
特に中小企業では燃料費が固定費の大部分を占めているため、このコスト削減は経営の安定化に直接貢献します。複数台のトラックや営業車を保有する企業ほど、効果は大きくなります。
物流コスト低下が物価全体に広がる理由
ガソリン価格の下落は、物流コストを通じて日本全体の物価上昇圧力を軽減します。日本の物流の約9割はトラック輸送であり、燃料費が下がれば運賃の上昇を防ぐことができます。これにより、食品、日用品、衣料品など、生活必需品の価格が上がりにくくなります。
さらに、物流会社のコスト削減は競争を促し、価格引き下げが加速する可能性もあります。スーパーやドラッグストアなどの小売企業は、このコスト削減分を商品価格に反映しやすいため、消費者にとっては物価上昇の抑制という大きなメリットがあります。
観光業・地方経済に広がるプラスの波及効果
ガソリン価格が下がると、ドライブ旅行やレジャーが増える傾向があります。特に地方の観光地では、車で訪れる観光客が増加し、飲食店や宿泊施設の利用が増える効果が期待されます。こうした需要増は地域経済を活性化させ、地方の雇用にも良い影響を与えます。
また、各自治体が行う観光プロモーションと組み合わせることで、ガソリン値下げの効果をさらに高めることができ、地方創生の新たな追い風となる可能性があります。
企業の経営改善と市場の競争活性化
燃料費の減少は企業の利益改善に直結し、投資や設備更新にも資金を回しやすくなります。特に中小企業では、これまで先延ばしにしていた設備投資や車両更新が進む可能性があります。また、競争環境が改善し、より効率的な企業が生き残る市場構造が強化されます。
燃料費の下落により、利幅が改善した企業が価格競争を強めることで、消費者はさらに低価格で商品を購入できるようになります。この循環が広がれば、経済全体が活性化し、物価高対策としても非常に有効です。
道路財源1.5兆円減のインパクトは極めて大きい
ガソリン税の暫定税率25.1円が廃止されることで、国と地方の税収は年間およそ1.5兆円減少すると見込まれています。この規模は国家財政に大きな影響を与える数字であり、単なる税収減ではなく「公共インフラの維持に直結する財源」が減ることを意味します。特に道路整備は日本の物流や通勤を支える重要基盤であり、財源の縮小は道路の老朽化対策にも影響を与える可能性があります。
日本国内の道路総延長は約120万kmにのぼり、その維持管理には多額の費用が必要です。舗装修繕、橋梁補強、災害復旧などを考えると道路予算の削減は現場に影響を及ぼすため、ガソリン税収の減少は国と自治体にとって重大な課題です。
国と自治体の財政へ及ぶ実質的な影響
ガソリン税の暫定税率廃止は、国だけでなく都道府県・市町村にも負荷をもたらします。道路整備費の多くは国からの税収配分に依存しているため、財源減少は地方自治体の予算調整を難しくします。特に、地方の道路網は老朽化が進んでおり、維持管理費の増加が問題視されています。
地方自治体ではすでに「橋梁老朽化問題」が深刻化しており、2030年までに約6割の橋が建設後50年を迎えると言われています。このような状況で財源が減ることは、インフラの維持に遅れが生じるリスクを高めます。結果として、道路の安全性低下や災害時の復旧遅れなど、生活者に直接悪影響が及ぶ可能性もあります。
税収減の穴埋めはどう進む?代替財源の可能性
1.5兆円という大規模な税収減を埋めるためには、いくつかの選択肢が議論されています。代表的な案としては以下の3つが挙げられます。
- 自動車関連税を再編し一本化する案:自動車重量税や自動車税を簡素化し、効率的な徴収へ。
- 走行距離課税の導入:EV普及を見据え、走った距離に応じて課税する新方式。
- 一般財源から道路予算を確保する案:現行の特定財源依存からの転換。
特に「走行距離課税」は世界でも導入が進んでいる税制で、日本でも検討段階に入っています。しかしプライバシーや管理コストの問題が指摘され、完全導入にはまだ時間が必要です。
道路老朽化による長期リスクと整備の遅れ
道路の老朽化は年々深刻さを増しており、橋梁・トンネルの老朽化は全国的に問題視されています。道路予算が不足すると、以下のリスクが現実化します。
- 危険箇所の補修が遅れ、事故リスクが増加
- 災害時の復旧が遅れて地域が孤立する可能性
- 物流の安定性が損なわれ、経済に影響を与える
特に豪雨災害の増加により、道路の崩落や地盤の弱体化が問題化している現在、財源不足はインフラ維持に重大な危険をもたらします。長期的には、日本の道路ネットワークの機能低下につながる可能性も指摘されています。
カーボンニュートラル政策との整合性が問われる
今回の暫定税率廃止は生活者にメリットがある一方、エネルギー政策の観点からは複雑な側面があります。政府は2050年カーボンニュートラルを掲げており、交通部門からのCO2削減は大きな課題です。ガソリン価格が下がると、燃費の悪い車の利用が増えたり、EV(電気自動車)への移行が遅れたりする可能性があります。
エネルギー政策関係者からは「税率廃止は温暖化対策の逆行ではないか」という指摘もあります。政府はEV補助金や再エネ推進政策とのバランスを取りながら、ガソリン税廃止後の環境政策を再構築する必要があります。
生活者メリットと財政リスクをどう両立させるか?
ガソリン税の暫定税率廃止は、生活者にとって大きなメリットであることは間違いありません。しかし一方で、財政リスクを無視することはできません。今後は以下のような政策判断が求められます。
- 安定した道路予算を確保する新たな税制の設計
- EV・燃費向上の促進とガソリン車依存の見直し
- 地方道路の老朽化対策を優先する公共投資の強化
暫定税率廃止は、国民生活を改善する効果が大きい一方で、道路財源や環境政策との整合性をどう確保するかが、今後の政策課題として大きく浮上しています。
日本のガソリン税は今後どう変わっていくのか?
ガソリン税の暫定税率廃止は歴史的な一歩ですが、日本のエネルギー政策全体を俯瞰すると「これで終わり」ではありません。むしろ、ここから税制の再構築が始まると見る専門家は多いです。2050年カーボンニュートラルを掲げる日本では、交通部門からのCO2削減が強く求められており、ガソリン依存を徐々に減らす方向は変わりません。
長期的には、走行距離課税やEV優遇税制など、新しい税体系が導入される可能性が高く、日本のクルマ社会そのものが変わっていく未来が予測されます。今回の暫定税率廃止は、エネルギー政策と税制改革の大きな転換期の入り口にすぎないのです。
生活者・企業・政府の三方向から見る未来の影響
今回の税率廃止により、生活者の負担が軽減し、企業のコスト圧力も緩和され、日本経済にはプラスの効果が広がると期待されています。しかし、政府は税収減の穴埋めを急がなければならず、財源確保のための税制改革が不可避となります。
生活者にとってはガソリン価格の下落が家計改善につながる一方、長期的には走行距離課税など新たな負担が増える可能性もあります。企業にとっては物流コスト削減が大きなメリットですが、環境規制が強化されれば車両更新や設備投資の必要性が増すかもしれません。また政府は、財政再建と環境政策の両立という難題を背負うことになります。
自動車産業とエネルギー市場への影響
ガソリン価格が下がることで、一時的にはガソリン車の販売が持ち直す可能性があります。しかし、世界的にはEVシフトが加速しており、長期的にはガソリン車依存から脱却する流れは変わりません。日本の自動車メーカーも、ハイブリッドやEVへの研究開発を強化しており、ガソリン税の廃止が業界の方向性を大きく変える可能性は低いとされています。
またエネルギー市場では、ガソリン需要の一時的な増加や在庫調整による価格変動が起こる可能性がありますが、中長期的には再生可能エネルギー比率の拡大や電動化が進むため、ガソリン市場の縮小は避けられないと考えられています。
公共インフラの未来と政府の課題
今回の暫定税率廃止により、道路財源の確保が最重要課題として浮上しました。道路の老朽化は全国的に進んでおり、橋梁・トンネルの補修も急務です。財源が不足した場合、公共インフラの安全性低下や災害復旧の遅れといった深刻な問題が発生するリスクがあります。
政府は今後、以下のような施策を進める必要があります。
- 新たな道路財源の確保(走行距離課税、一般財源の活用など)
- 老朽化インフラへの優先投資
- 自治体との連携強化による早期補修体制の構築
これらの取り組みがうまく機能すれば、暫定税率廃止による財政負担を補いつつ、日本全体のインフラをより持続可能な形で維持することが可能になります。
今回の廃止は“生活者に追い風”だが課題も残る
総合的に見ると、ガソリン税の暫定税率廃止は生活者と企業にとって非常に大きなプラス効果があります。ガソリン価格は140円台に下がり、月々の負担が軽減され、物流や物価にも好影響を与えます。しかしその一方で、道路インフラの老朽化や税収減といった長期的課題も浮き彫りになりました。
つまり今回の廃止は「国民生活を支えるための対症療法」であり、それを支える税制・エネルギー政策を今後どのように再設計していくのかが、日本社会全体の未来を左右する重要なポイントとなります。政府・企業・国民が三位一体で取り組むことが求められる段階に入りました。
最終結論:暫定税率廃止は大きな前進だが“次の議論”が始まる
今回の政策によって、生活者の負担軽減という大きな成果が得られます。しかし本当に重要なのは、ここから先の議論です。道路財源をどう確保するのか、環境政策とどう整合させるのか、そして車社会をどの方向へ導くのか。暫定税率廃止は、そのスタートラインにすぎません。
今後数年間、日本はエネルギー・税制・交通インフラの大改革期に突入します。今回の決定はその第一歩であり、日本の未来にとって大きな意味を持つ出来事です。
本記事が、ガソリン税廃止の本質と今後の展望を理解する手助けとなれば幸いです。







ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません