配偶者に先立たれたら年金はいくら減る?老後夫婦の年金と遺族年金の落とし穴

老後夫婦の年金はいくらもらえる?モデル年金23万円の現実

老後の生活を考えるとき、多くの人が最初に気にするのが年金額です。 「夫婦2人なら年金で何とか暮らせるのでは?」 そう考えている人も多いでしょう。 しかし、その前提には大きな落とし穴があります。

結論から言うと、標準的な老後夫婦の年金額は月約23万円です。 ただし、これはあくまで「条件付き」の数字です。 この条件を理解していないと、老後に大きな誤算が生まれます。

モデル年金23万円の前提条件とは

現在公表されているモデル年金は、次のような家庭を想定しています。

  • 夫:40年間会社員として勤務
  • 平均月収:約45万円(ボーナス込み)
  • 妻:専業主婦

いわゆる昭和型の標準家庭です。 この前提で算出された年金額が、月およそ23万円となります。 これは夫婦2人分を合計した金額です。

年金は「2階建て構造」になっている

日本の公的年金制度は、2階建て構造になっています。 これは老齢基礎年金老齢厚生年金の組み合わせです。

モデル年金23万円の内訳は、以下の通りです。

  • 妻の老齢基礎年金:約7万円
  • 夫の老齢基礎年金:約7万円
  • 夫の老齢厚生年金:約9万円

合計すると、7万円+7万円+9万円で約23万円になります。 ここで重要なのは、厚生年金は夫の分しかないという点です。

「夫婦で23万円」は永遠にもらえるわけではない

この数字を見て、安心した人もいるかもしれません。 しかし、ここで一度立ち止まる必要があります。

23万円という年金額は、夫婦2人がそろって生きている間だけの話です。 どちらか一方が亡くなった瞬間、前提条件は崩れます。

特に注意すべきなのが、夫が先に亡くなるケースです。 厚生年金の多くを占めるのは、夫の収入に基づく部分だからです。

平均支出と比べると見えてくる現実

65歳以上の夫婦世帯の平均支出は、月約28万円前後とされています。 年金23万円だけでは、すでに不足している家庭も少なくありません。

それにもかかわらず、配偶者に先立たれた場合、 年金がどう変わるかまで考えている人は多くありません。

老後の年金対策で本当に重要なのは、 「夫婦でもらえる金額」ではなく、 一人になった後、いくら残るのかです。

この仕組みを正しく理解することが、 老後破綻を防ぐ第一歩になります。

次のパートでは、 配偶者に先立たれた場合、年金はいくら減るのかを クイズ形式で具体的に解説していきます。

配偶者に先立たれたら年金はいくら減る?社会保障クイズで理解する

老後夫婦の年金を考えるうえで、最も重要なのがこの視点です。 それは、どちらかが亡くなった後、年金はいくら残るのかという点です。

ここからは、理解を深めるためにクイズ形式で考えてみましょう。

【社会保障クイズ】夫が亡くなったら妻の年金はどうなる?

前提条件は、いわゆるモデル年金世帯です。

  • 夫:厚生年金に40年間加入
  • 妻:専業主婦
  • 夫婦の年金合計:月約23万円

この夫が先に亡くなった場合、 妻が受け取れる年金はどうなるでしょうか。

  • A:自分の老齢基礎年金だけになる
  • B:夫婦2人分の年金の半額になる
  • C:自分の基礎年金+夫の遺族年金がもらえる
  • D:年金額は変わらない

少し考えてみてください。

正解は「C:自分の基礎年金+夫の遺族年金」

正解はCです。 配偶者が亡くなった場合でも、 一定の条件を満たせば遺族年金を受け取れます。

遺族年金というと、 子育て中に配偶者を亡くした人の制度という イメージを持つ人も多いでしょう。

しかし、年金生活に入った後でも、 遺族年金が支給されるケースはあります。

遺族厚生年金はいくらもらえるのか

遺族厚生年金の金額は、 亡くなった配偶者の老齢厚生年金額の75%です。

モデルケースでは、 夫の老齢厚生年金は約9万円です。

9万円 × 75% = 約7万円。 これが遺族厚生年金の目安額になります。

妻が受け取れる年金の合計額

夫が亡くなった後、 妻が受け取れる年金は次の2つです。

  • 妻自身の老齢基礎年金:約7万円
  • 夫の遺族厚生年金:約7万円

合計すると、月約14万円になります。

夫婦2人で生活していたときの23万円と比べると、 約9万円の減少です。

年金は「半分」ではなく「大きく減る」

よくある誤解が、 「2人分の年金だから、1人になれば半分」 という考え方です。

実際には、そう単純ではありません。 厚生年金の一部しか引き継がれないため、 収入は大きく減少します。

特に家計を年金に大きく依存している場合、 生活水準を一気に下げざるを得ないケースもあります。

この仕組みを知らないまま老後を迎えると、 精神的なダメージも非常に大きくなります。

次のパートでは、 そもそも遺族年金をもらえないケースについて 詳しく解説していきます。

遺族年金がもらえないケースに注意|老後破綻を防ぐために知るべき現実

ここまでで、配偶者に先立たれた場合でも 遺族年金を受け取れるケースがあることを解説しました。

しかし、注意すべきなのは、 遺族年金は誰でも必ずもらえる制度ではない という点です。

条件を満たしていなければ、 年金収入が一気に激減する可能性があります。

遺族厚生年金を受け取るための条件

遺族厚生年金を受給するためには、 いくつかの重要な条件があります。

  • 亡くなった配偶者が厚生年金の受給権を持っている
  • 厚生年金の加入期間が原則25年以上

この条件を満たしていない場合、 遺族厚生年金は支給されません。

特に注意が必要なのが、 国民年金のみで老後を迎える夫婦です。

国民年金のみの夫婦が直面する現実

自営業やフリーランスとして働いてきた夫婦は、 老後の年金が国民年金のみになるケースが多くあります。

この場合、夫婦2人が元気なうちは、 それぞれの老齢基礎年金を合わせて生活できます。

しかし、配偶者に先立たれた瞬間、 受け取れる年金は自分の老齢基礎年金だけになります。

金額の目安は、月およそ7万円前後です。

年金が突然7万円になるリスク

夫婦2人で生活していたときは、 月14万円前後の年金があった家庭でも、 一人になると半分以下になることがあります。

この変化は、段階的ではありません。 突然訪れます。

何も知らずに老後を迎え、 ある日急に収入が大きく減る。

これは、精神的にも家計的にも 非常に大きな負担になります。

平均支出と年金額のギャップ

65歳以上の単身世帯の平均支出は、 月およそ16万円前後とされています。

一方、国民年金のみの単身世帯では、 年金収入が7万円程度になることも珍しくありません。

この差額を埋める手段がなければ、 生活水準を大きく下げる必要があります。

「知らなかった」では済まされない老後リスク

年金制度は複雑です。 そのため、多くの人が 「何となく大丈夫だろう」と考えがちです。

しかし、老後になってからでは 選択肢はほとんど残されていません。

だからこそ、現役世代のうちに、 自分たちが遺族年金の対象になるのか。

この点を把握しておくことが、 老後破綻を防ぐために欠かせません。

次のパートでは、 年金だけに頼らない老後戦略について 具体的に解説していきます。

年金だけに頼らない老後戦略|配偶者死亡リスクに備える資産形成

ここまで見てきた通り、 老後の年金は「長生きリスク」を軽減するための制度です。

しかし、年金だけで すべての老後リスクをカバーできるわけではありません。

特に大きな盲点が、 配偶者に先立たれた後の生活です。

公的年金は「保険」であり「生活費の全額」ではない

公的年金は、 長生きしても一定の収入が続くよう設計された仕組みです。

そのため、 「夫婦がそろっている間」は比較的安定します。

一方で、 配偶者を失った後の生活費までは、 十分に補償されていません。

年金制度に過度な期待をすると、 想定外の生活苦に直面する可能性があります。

年金だけで暮らすのが厳しい人の特徴

次のような人は、 年金だけの老後が厳しくなりやすい傾向があります。

  • 国民年金のみで老後を迎える
  • 厚生年金の加入期間が短い
  • 配偶者の収入に大きく依存してきた
  • 生活費を下げるのが苦手

特にフリーランスや自営業の夫婦は、 配偶者死亡後の収入減少が深刻になりがちです。

配偶者死亡リスクに備える現実的な対策

重要なのは、 「年金を増やす」ことではありません。

それよりも、 年金以外の収入源を用意することです。

具体的には、次のような対策が考えられます。

  • 現役時代からの長期積立投資
  • 生活費1〜2年分の現金確保
  • 住居費を抑えた住環境の整備
  • 働けるうちは少額でも収入を得る

これらは、 配偶者を失った後の精神的負担を 大きく軽減してくれます。

「もしも」を前提にした老後設計が安心を生む

老後設計で本当に大切なのは、 楽観的な想定をしないことです。

「どちらかが先に亡くなる」 この現実を前提に考える必要があります。

そのうえで、 一人になっても生活が成り立つか。

この視点で資産と支出を見直すことが、 後悔しない老後につながります。

まとめ|老後の安心は「知識×準備」で決まる

老後夫婦の標準的な年金額は、 2人で月約23万円です。

しかし、 配偶者に先立たれると、 年金は14万円以下まで減る可能性があります。

さらに、 条件次第では遺族年金すら受け取れません。

だからこそ、 年金制度を正しく理解し、 資産形成を並行して進めることが重要です。

老後の安心は、 運ではなく準備で決まります。

状況月額年金の目安
夫婦2人(モデル年金)約23万円
夫死亡・遺族年金あり約14万円
夫死亡・遺族年金なし約7万円