補正18.3兆円は適正規模か?GDPギャップで読み解く本当の評価

この記事のもくじ

補正予算18.3兆円は大きすぎるのか?まず疑問を整理する

2024年補正予算18.3兆円について、野党は「過大だ」「財政が悪化する」と強く批判しています。世論でも「18兆円はさすがに大きいのでは?」という空気が広がっています。しかし、この“感覚的な大きさ”は本当に正しいのでしょうか。結論から言えば、この前提には大きな誤解があります。 経済学の視点では、補正の適正規模は「不足している需要の大きさ」で判断します。つまり、見た目の数字が大きいかどうかは重要ではありません。そこで本記事では、専門家である高橋洋一氏が「むしろ規模はぴったり」と語る理由を丁寧に解説します。

高橋洋一氏の結論:「規模はぴったり」その理由とは

高橋氏は今回の補正予算を「ストライクの規模」と評価しています。その理由は、日本経済には依然として約20兆円のGDPギャップ(需要不足)が残っているためです。補正予算18.3兆円に加え、減税の効果を含むと総規模はおよそ21兆円になります。つまり“不足する需要20兆円に対し、21兆円の対策”という構図が成立します。 これは経済政策の教科書的な考え方で、ギャップと政策規模が整合している状況です。「補正が大きすぎる」のではなく「不足分を埋めるために必要な規模だった」というわけです。まずはここを押さえておくことが重要です。

この記事が扱う4つの論点:誤解を解くための基礎情報

この記事では、補正予算18.3兆円がなぜ「規模ぴったり」と評価されるのかを、次の4つの柱から解説します。

  • ① GDPギャップ20兆円という“経済の穴”の正体
  • ② 補正18.3兆円+減税を合わせて21兆円となる理由
  • ③ 金利上昇が財政悪化ではなく成長期待で起きているという事実
  • ④ 日本の財政リスクを示すCDSが上昇していない理由

この4点を理解すると、「18.3兆円は大きすぎる」という印象が、データと論理で覆ります。政策評価は数字の大小ではなく、経済の現状と照らし合わせて判断する必要があるのです。

結論:18.3兆円は“ようやく適正規模”である

結論を整理すると、今回の補正は「例外的に大きい」のではなく、むしろ「今までが小さすぎた」ことが問題でした。これまでの補正は表面的な数字だけ大きく、中身(真水)が小さい年もありました。結果としてGDPギャップは解消されないまま残り続け、成長を阻害してきました。 今回の補正+減税の総額21兆円は、その不足分をようやく埋める規模に達しています。これは日本経済がデフレから脱却しつつある今、極めて重要なタイミングです。次章からは、この結論の根拠を一つずつ深掘りしていきます。

GDPギャップとは何か?経済の“穴”を簡単に説明する

補正予算18.3兆円の妥当性を理解するためには、まず「GDPギャップ」という概念を押さえる必要があります。GDPギャップとは、本来の潜在的な経済力と、実際の経済活動の差を指します。簡単にいえば、日本経済には「本来出せるはずの力」がまだ眠っているということです。 このギャップがプラスなら「供給不足」、マイナスなら「需要不足」を意味します。現在の日本は明確に“需要不足”であり、これを埋めるためには財政政策が必要になります。つまり、補正予算18.3兆円の評価をする際は、このギャップの大きさを基準に見ることが重要になります。

日本に残る20兆円規模のGDPギャップとは?内閣府データを読み解く

内閣府が公表する需給ギャップは、コロナ禍以降に大きく悪化し、その後も完全には回復していません。高橋洋一氏は、この最新データを基に「日本にはおよそ20兆円のGDPギャップが残っている」と分析しています。これは政府が補正予算を組む際の“理論的基準値”になります。 20兆円の需要不足が存在するということは、経済が本来の成長力を発揮できていない状態です。消費は戻りきらず、企業の投資も抑えられ、賃金の伸びにも影響が及びます。つまり、GDPギャップは“経済のへこみ”であり、政策により埋める必要がある、ということです。

なぜ20兆円のギャップが残ってしまったのか?背景を整理する

日本のGDPギャップが長期的に解消されない理由は複数あります。第一に、コロナ禍で落ち込んだ消費が完全には戻らず、回復の勢いが弱かった点があります。第二に、企業が賃上げに慎重で、所得の伸びが需要を押し上げるほど強くなかったことです。そして第三に、過去の補正予算が理論値に比べて小さく、需要を十分に押し上げられなかったことも大きな要因です。 高橋氏は「今回の補正は、ようやくギャップ埋めに必要な規模」と指摘しています。つまり、20兆円のギャップに対して18.3兆円+減税効果=21兆円という対策は、むしろ理論的に“適正規模”なのです。

過去の補正予算はなぜギャップを埋められなかったのか?比較で見える問題点

過去の補正予算を振り返ると、一見すると大規模に見える年度もありました。しかし、その多くが「事業規模だけ大きくて、真水(実際にGDPを押し上げる支出)が小さい」という共通点を持っています。結果として、経済全体に与える効果が十分でなく、GDPギャップの解消には至りませんでした。 高橋氏はこの点を問題視し、「これまでの補正は必要額に達していなかった」と指摘します。今回の18.3兆円が“ようやく理論値に近い”と評価されるのは、まさに過去の不足を補う構造になっているからです。つまり、21兆円という数字は単なる大型予算ではなく“経済の穴を埋めるために必要な規模”なのです。

補正18.3兆円+減税で21兆円へ──この数字の意味とは?

2024年の補正予算は18.3兆円ですが、実際の景気押し上げ効果を考えると「税収減・減税効果」を含めた総規模は約21兆円になります。この21兆円という数字は偶然ではありません。経済学では、景気を安定させるためには「GDPギャップ=不足分の需要」と同じ規模の政策を実施することが理論上の最適解になります。 高橋洋一氏は、日本に残るGDPギャップを約20兆円と試算しています。そして今回の政策規模が約21兆円であることから、「ギャップを埋めるにはほぼストライク」と判断しているのです。数字が大きく見えるのは、過去の対策が小さすぎたからに過ぎません。

高橋洋一氏の計算ロジック:教科書通りの財政政策

高橋氏の論点は極めてシンプルで、経済学の基本に沿ったものです。財政政策は「需要の不足分=GDPギャップ」を埋めるために行います。したがって、ギャップが20兆円あるなら、政策規模は20兆円程度が目安になります。今回の補正+減税21兆円という規模は、この“理論値”と一致します。 さらに、財政政策には乗数効果が存在し、特に短期ではGDP押し上げ効果が明確に現れます。高橋氏は、真水部分がしっかり確保されている点も評価しています。「補正の額が大きく見えるが、むしろ今までが小さすぎた」というのは、このロジックが背景にあります。

どの施策が景気に効くのか?需要に直結する部分を見極める

補正予算の効果を判断する際には、「どの施策が実際にGDPを押し上げるのか」を見極めることが重要です。例えば、以下のような分類が可能です。

  • ●消費を直接押し上げる施策(給付金、減税、低所得者支援)
  • ●投資を誘発する施策(設備投資支援、研究開発費、GX関連)
  • ●短期的には効果が弱い施策(将来向けの制度整備、選挙色の強い政策)

今回の補正+減税では、需要を即時に押し上げる要素が多く含まれています。特に減税は消費性向が高く、短期の押し上げ効果が期待できます。これらを合算すると、GDPギャップに対してほぼ適切な押し上げになると分析できます。

政策として妥当か?国際基準で見ても「適正規模」と言える

政策規模21兆円は、国際基準で見ても決して過大ではありません。IMFやOECDの分析では「需給ギャップを埋める規模の財政政策」が推奨されており、日本の20兆円ギャップに対し21兆円を投じるのは理論的に妥当です。 さらに重要なのは、日本が長年デフレ傾向にあったという事実です。デフレ脱却を確実にするためには、ギャップを確実に埋める規模の政策が必要になります。今回の補正は、その条件を初めて満たしたとも言える内容です。高橋氏が“ストライク”と断言する根拠は、まさにここにあります。

過去の補正予算が“必要額に届かなかった”根本理由とは?

補正予算18.3兆円が「大きすぎる」と批判される一方で、高橋洋一氏は「今までが小さすぎた」と指摘します。実は、過去10年の補正予算には明確な共通点があります。それは、事業規模だけ大きく見せ、実際にGDPを押し上げる真水部分が極端に少なかったことです。つまり、見かけだけの“大型補正”が続き、本当に必要な需要喚起ができていなかったのです。 その背景には、財務省の緊縮姿勢や「後の増税で帳尻合わせ」を前提にした予算の組み方があります。この構造が続いたことで、GDPギャップは解消されず、経済の潜在力を長年押し下げてきました。

財務省の構造的な緊縮姿勢:数字を大きく見せる“トリック”

過去の補正予算が効果を発揮しなかった理由の一つが、財務省の緊縮体質です。財務省は「国債残高の拡大」を嫌い、表向きの“支出額”は大きくしても、実際に景気を押し上げる真水の割合を低く抑える傾向があります。典型例として、以下の点が挙げられます。

  • ● 低利融資や保証枠で“事業規模”を膨らませる
  • ● 実質的には将来負担を伴う支援へ誘導する
  • ● 本当に必要な消費刺激策を小規模に抑える

このため、補正予算が数十兆円と発表されても、実際にGDPに効く部分は数兆円しかなかった年も多くあります。表面上の数字は派手でも、中身は小規模──これが長年続いてきた問題なのです。

過去5年の補正予算を比較すると“問題の深刻さ”が見える

2020年以降の補正は一見すると「歴史的な大規模」が続きました。しかし、その多くは事業規模を膨らませた結果であり、真水は少ない状態でした。例えばコロナ対策の補正では、事業規模100兆円超という年度もありましたが、実際にGDP効果があった部分は限定的でした。 ポイントは「数字が大きくてもギャップは埋まっていない」という事実です。ギャップが埋まらなかったということは、政策規模が必要額に届いていなかったということです。高橋氏が「今回が初めて理論値に近い」と評価する背景には、こうした長年のミスマッチがあります。

今回だけ“例外的に適正規模”になった背景──政治と経済情勢の変化

今回の18.3兆円が例外的に“妥当”になった背景には、複数の要因が重なっています。まず、日本経済がデフレ脱却に近づき、需給ギャップ解消が政治課題として明確化してきました。次に国際的な金利環境が変化し、成長を伴う財政出動が評価されやすい流れがあります。 さらに、物価上昇を受けて「国民への還元」が政治的に必要となり、従来のような小規模補正では世論に応えられなくなりました。その結果、補正+減税=21兆円という“教科書通りの規模”がようやく実現したのです。つまり、今回は偶然ではなく、環境変化によって必要な規模に近づいたといえます。

金利が上がると危険?よくある誤解を整理する

金利が上がると、メディアでは「日本の財政が危険」「国債が売られている」といった論調が増えます。しかし、これは本質を外した議論です。金利は単なる“危険度の指標”ではなく、経済の状況を示す複合的なサインです。特に現在のような状況では、金利上昇の主因は財政悪化ではなく成長期待の回復にあります。 金利は「経済の体温」とも言われ、経済成長が期待される局面では自然に上昇します。欧米ではインフレ率と成長率の上昇に伴い、金利が3〜5%まで正常化しています。日本も同じ動きに入っているだけであり、“危険”という評価は当てはまりません。

高橋洋一氏の主張:金利上昇は“いい傾向”であり危険ではない

高橋氏は、現在の金利上昇を「財政悪化によるものではない」と明確に否定します。理由はシンプルで、日本の国債市場は極めて安定しており、金利が上昇する際に必ず動くCDS(信用リスク指標)が全く動いていないからです。もし財政破綻リスクが高まっているのなら、CDSは敏感に反応し急騰するはずです。 しかし実際には、日本のCDSは低水準で安定しており、世界的にも「安全な国」の位置にあります。つまり現在の金利上昇は、成長期待と物価上昇の正常化に伴う自然な動きであり、日本経済が“ようやく普通の姿に戻りつつある”と見るべきなのです。

国債金利の推移を見ると「異常ではない」ことがわかる

2022年以降の日本の10年国債金利を見ると、日銀の金融政策修正と世界的な金利上昇の流れを受けて、徐々に上昇しています。これは日本だけではなく、アメリカ・ヨーロッパも同様です。特に米国は4〜5%、欧州は3%近くまで上昇しており、日本の上昇幅はむしろ小さい部類です。 つまり、日本の金利上昇を「財政危機のサイン」と見るのは誤りで、グローバルな金融環境の変化に伴う正常な動きです。また、物価上昇が続く中で金利が低いままのほうが市場としては歪みが生じやすく、本来の経済の姿とは言えません。日本の金利上昇は、この歪みが解消されているに過ぎないのです。

なぜ成長局面では金利が上がるのか?経済学の基礎から説明する

金利は「資金需要」と「期待インフレ率」によって決まります。景気が悪い時は企業の資金需要が弱く、消費も伸びないため金利は下がります。しかし、景気が回復し、投資や消費が活発になると、資金需要が高まり金利は上昇します。これは経済の正常な反応です。 また、期待インフレ率が上がると、名目金利も自然に上がります。日本は長年デフレが続いたため、金利が不自然に低い状態でした。現在の金利上昇は、「デフレ脱却が視野に入ってきた」という強いサインです。これを危険と捉えるのではなく、景気回復の証拠として見るほうが正しい理解になります。

CDSとは何か?“国の信用リスク”を図る最重要指標

財政議論で最も誤解されているのが「CDS」の存在です。CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は、国が債務不履行になるリスクに対する“保険料”を示す指標で、世界の投資家が最も重視する信用リスク指数です。もし財政が悪化しているなら、このCDSが真っ先に跳ね上がります。 具体的には、CDSが高いほど「破綻リスクが高い」と判断され、低いほど「安全」と評価されます。つまり、金利よりもはるかに直接的に「国の信用」を表す指標です。日本の財政破綻を本気で心配するなら、まずこのCDSを見る必要があります。

日本のCDSは安定した低水準──破綻リスクは“全く上がっていない”

結論から言えば、日本のCDSはここ10年以上、世界でも最も低い水準にあります。2024年時点でもCDSは安定しており、日本の信用リスクは非常に低い評価を受けています。財政破綻を本当に懸念すべきならCDSが急騰するはずですが、現実はむしろ「安全資産」と見なされ続けています。 高橋洋一氏が「財政悪化で金利が上がっているわけではない」と断言する根拠もここにあります。CDSが動かない=財政不安ではない、という国際基準の判断が下されている証拠です。つまり、金利上昇は“危険シグナル”ではなく、市場の信頼はむしろ揺らいでいないのです。

他国と比較すると日本の信用力は“トップクラス”である

CDSを国際比較すると、日本の立ち位置がより明確になります。例えば、イタリアや韓国は日本の数倍のCDS水準で、財政リスクが高いと評価されています。米国は国債発行額が巨大ですが、政治的なデフォルト懸念でCDSが変動しやすい国です。 その中で日本のCDSは極めて低く、主要国の中では「最もデフォルトしにくい国」と見なされています。つまり、債務残高の大きさだけで“財政危機”と判断するのは完全に誤りで、投資家は日本国債を安全資産として評価し続けています。これが、破綻論が現実と矛盾する最大の理由です。

財政破綻論が誤解される理由──自国通貨建て国債という特殊性

多くの人が財政危機を誤解するのは、「家計と国の財政を同じように考える」からです。しかし国家は独自の通貨を発行できるため、家計とは全く異なる仕組みで運営されます。日本国債のほぼ全てが“自国通貨建て”で発行されており、デフォルトする構造ではありません。 さらに、国債の保有者の大半は国内の金融機関や日銀であり、外国に依存していない点も日本の強みです。だからこそ、世界の投資家は日本の財政を「極めて安定」と評価し、CDSも低水準で推移し続けているのです。破綻論が繰り返される中でも市場は全く揺らがない──それが事実です。

結論の再確認:補正18.3兆円は“ようやく理論値”に到達した規模

この記事を通して明らかになったのは、補正予算18.3兆円が「大きすぎる」のではなく、「20兆円のGDPギャップを埋めるために必要な規模」だったという事実です。補正+減税の総額は約21兆円となり、経済の不足分にほぼ一致します。これは高橋洋一氏が“ストライク”と表現した理由でもあります。 また、この規模が「ようやく適正」であるといえる背景には、過去の補正が小さすぎたこと、真水の不足が続いて需要を押し上げられなかった歴史があります。その結果、ギャップは長期間残存し、経済の潜在成長力を押し下げてきました。今回の補正は、その流れを転換する重要な政策です。

今回の補正が持つ意義:デフレ脱却と成長の底上げを後押しする

今回の補正が単なる“景気刺激策”にとどまらない理由は、日本経済が長年抱えてきたデフレ体質からの脱却に直結するからです。GDPギャップを埋める政策は、名目成長率の改善、賃金の上昇、投資拡大などに波及しやすく、持続的な景気回復を支える基盤になります。 また、金利上昇が成長期待を反映する正常な動きであること、CDSが低水準で安定していることから、市場は日本の財政を「安全」と判断しています。そのため、今回の補正は危険どころか、むしろ成長の後押しとなる政策です。過去の「足りなかった補正」を反省し、必要な規模を投入できた点は大きな進展です。

今後必要となる政策:財政・税制・成長戦略の3点セット

今回の補正で需給ギャップが理論上ほぼ埋まるとしても、それだけで日本経済が長期的に強くなるわけではありません。今後は、以下の3つの方向性が重要になります。

  • ● 成長戦略:イノベーション、スタートアップ支援、生産性向上
  • ● 税制改革:消費税の硬直化改善、所得税の簡素化、投資減税
  • ● 財政政策の安定化:真水を確保した補正の継続、不要な事業規模の削減

特に高橋氏は、財政政策の“量”だけでなく“質”が重要であると繰り返し強調しています。GDPを押し上げやすい政策に集中し、補正予算が経済に確実に効く構造を維持することが重要です。今回の補正がその第一歩になる可能性があります。

関連記事リンクと読者への次の行動提案

補正予算や経済政策を理解するには、複数の視点からの情報が必要です。以下は信頼性の高い外部資料のリンクです(2024年時点の最新情報に基づく)。

この記事をきっかけに、政策規模の“見た目”ではなく“実質”を見る視点を養っていただければ幸いです。補正予算は経済の未来を左右する重要なツールであり、数字の大小だけで評価するのは危険です。今後も最新情報をもとに、わかりやすい経済分析を提供します。