高市政権の政策 給料が上がる経済”の実現戦略

第1章:高市政権が掲げる「給料が上がる経済」とは
2025年、日本経済は長引くデフレからの完全脱却と、実質所得の向上という二重の課題に直面しています。その中で、高市早苗政権が掲げる経済ビジョン「給料が上がる経済の実現」は、単なるスローガンではなく、構造的な変革を伴う政策パッケージとして注目を集めています。
高市政権が目指す方向性は明確です。企業収益の拡大を労働者の賃金上昇につなげると同時に、国内の消費力と生産力を強化し、内需を中心とした持続的成長モデルを確立すること。この点で、かつて国民民主党の玉木雄一郎代表が提唱した「賃上げを伴う供給力強化」「内需主導型経済」構想との親和性が高いと言えます。
経済の現状:賃金停滞の背景
過去20年以上、日本の実質賃金はほとんど上がっていません。OECD諸国の中でも賃金水準は下位に位置し、生産性向上が賃金に反映されない「分配の歪み」が続いています。特に中小企業では、コスト上昇を価格転嫁できず、人件費を抑制せざるを得ない状況が常態化しています。
また、企業の内部留保は2024年時点で過去最高の540兆円を超える一方で、家計所得の伸びは停滞。これが消費マインドの低下、ひいてはデフレ的傾向の長期化を招いてきました。高市政権はこの構造を断ち切るべく、「分配の改革」と「生産性の底上げ」を同時に進める方針を打ち出しています。
高市政権のビジョン:「強い成長」と「持続的賃上げ」
高市首相は、就任時から「賃上げを成長の中心に据える経済運営」を明言しています。これは単なる景気刺激策ではなく、企業が自律的に賃上げを継続できる環境を整える構造改革を意味します。その柱となるのが次の三点です。
- ① 生産性の高い企業への支援強化: 設備投資やデジタル化、AI導入を後押し。
- ② 賃上げ促進税制の拡充: 賃上げを実施する企業への税優遇措置を強化。
- ③ 中小企業の価格転嫁支援: 取引構造の見直しを通じて、賃上げの原資を確保。
これらの政策は、単なる「一時的な景気対策」ではなく、賃金上昇と生産性向上を連動させる仕組みを意識したものです。
玉木構想との接点:「賃上げを伴う供給力強化」
国民民主党の玉木雄一郎代表は、以前から「賃上げを伴う供給力強化こそが真の成長戦略」と主張してきました。高市政権の方向性は、この理念と重なります。すなわち、賃上げを単なる分配ではなく「供給力の向上」へとつなげ、国内の生産基盤を強くすることが目的です。
具体的には、労働市場改革、教育投資、人材育成、スタートアップ支援といった領域を重視し、「人への投資」を通じて経済全体の潜在成長率を高める政策構成となっています。
なぜ「給料が上がる経済」が必要なのか
少子高齢化が進む中で、外需依存の経済構造では成長を維持できません。個人消費の拡大が伴わなければ、企業の投資も持続せず、国全体の成長力が低下します。だからこそ、「給料が上がる経済」は単なる賃金政策ではなく、国家の生存戦略といえます。
高市政権の狙いは、所得の底上げを通じて「働く人が報われる社会」を実現すること。その鍵となるのが、賃上げと供給力強化の両立です。次章では、その中核となる玉木構想「賃上げを伴う供給力強化」の具体的なメカニズムについて詳しく見ていきます。
次へ:第2章:玉木雄一郎の「賃上げを伴う供給力強化」構想とは
第2章:玉木雄一郎の「賃上げを伴う供給力強化」構想とは

「給料が上がる経済」を実現するためのキーワードとして、玉木雄一郎代表が一貫して訴えてきたのが「賃上げを伴う供給力強化」です。この言葉は単なるスローガンではなく、日本経済の構造的課題に対する明確な解決策を示しています。
「賃上げ」だけでは持続しない理由
玉木氏が問題視しているのは、過去の政策が「分配」だけに偏り、生産性や供給能力の向上が伴わなかった点です。補助金や一時的な現金給付では、一瞬の消費拡大は起きても、持続的な賃金上昇にはつながりません。企業の利益構造や生産性が変わらなければ、賃上げは継続不可能なのです。
玉木氏はこれを「供給側の強化を伴わない分配は、砂上の楼閣」と表現しています。つまり、賃上げを支えるのは企業の生産性向上と付加価値創出力の強化であり、単なる政府主導の給付ではないという立場です。
「供給力強化」とは何か
供給力とは、簡単に言えば「経済がモノやサービスを生み出す力」です。これが弱まると、たとえ需要があっても生産が追いつかず、結果的に物価上昇や景気停滞が起きます。日本では、少子高齢化や人手不足により、この供給力が年々低下しています。
玉木構想では、次の3つの柱によって供給力を底上げすることが提唱されています。
- ① 人への投資: 教育・職業訓練・リスキリングを通じて生産性を向上。
- ② 中小企業の生産性改革: DX・設備投資・価格転嫁支援を推進。
- ③ 地方経済の再活性化: 地方拠点産業への補助金やインフラ整備で地域供給力を強化。
これらは単なるバラマキ政策ではなく、「生産基盤の強化」と「所得増加」を同時に実現する戦略です。特に人への投資は、今後の人口減少時代における最も重要な経済政策とされています。
賃上げを支える仕組みづくり
玉木氏は、賃上げを企業の「義務」ではなく「成果」として促すべきだと強調します。そのためには、政府が賃上げを行う企業に対して明確な報酬(税制優遇、補助、優先調達など)を与える必要があります。
実際、玉木氏が国会で提案した「賃上げ促進税制の抜本拡充」は、現在の高市政権の方針にも反映されています。中小企業に対しては、賃上げ実施時の法人税減免や、賃上げ分を原材料費として価格転嫁できる仕組みを整えることが求められています。
「人への投資」が経済成長の原動力に
玉木構想の最大の特徴は、賃上げを「消費拡大」ではなく「供給力拡大」の一手段とみなしている点です。これは、いわゆる“新しい資本主義”の理念にも通じます。人材投資によって企業が新たな価値を生み、その成果が労働者の所得増へ還元される。このサイクルが経済の安定成長をもたらすのです。
具体的な施策としては、以下のような政策が挙げられます。
- 公的リスキリング支援の拡充(年3,000億円規模)
- 教育訓練給付制度の拡大とIT人材育成支援
- 中小企業の設備投資に対する減税・補助制度
- スタートアップ・イノベーション支援基金の創設
これらは一見ばらばらに見えますが、すべて「供給力強化」という一本の軸でつながっています。
賃上げの“持続性”をどう確保するか
一時的な賃上げブームではなく、毎年賃金が上がる構造を作るには、次の3条件が必要です。
- 企業の付加価値が上がる(=生産性が上がる)
- 価格転嫁ができる公正な取引環境
- 人材育成によるスキルアップの連鎖
玉木氏はこの「三位一体モデル」を提唱し、「賃上げと供給力は対立ではなく共存の概念」だと指摘しています。これこそが、内需を基盤とする成長戦略の核となる考え方です。
高市政権との連携の可能性
高市政権は「成長と分配の好循環」を掲げていますが、その中身を実効性のある形で構築するには、玉木構想のような供給力強化の視点が不可欠です。すでに自民・国民民主両党の政策協議においても、人への投資や賃上げ促進策の方向性で一致点が多く見られます。
つまり、「給料が上がる経済」は特定政党の政策ではなく、日本全体が共有すべき国家戦略へと発展しつつあるのです。
第3章:内需主導型経済への転換が不可欠な理由

日本経済の長期停滞を打破するためには、「外需依存」から脱却し、「内需主導型経済」へ転換することが不可欠です。これこそが、玉木雄一郎氏が提唱する“給料が上がる経済”の中核思想であり、高市政権の経済政策とも方向性を共有する部分です。
外需依存の限界:グローバル化の終焉と供給制約
日本はこれまで、輸出主導による成長モデルを採用してきました。製造業の競争力と円安効果によって、外需を中心に経済を拡大してきたのです。しかし2020年代に入り、そのモデルは明確に限界を迎えています。
背景には、次の3つの構造的変化があります。
- ① グローバルサプライチェーンの分断: 米中対立や地政学リスクにより、海外依存の生産体制が不安定化。
- ② 為替変動のリスク拡大: 円安による輸出増加の効果が、輸入コスト高騰で相殺される構造。
- ③ 国内市場の空洞化: 海外生産移転により、国内の雇用・所得循環が弱体化。
つまり、外需頼みの経済では「企業は儲かっても、国民の給料は上がらない」構造が生まれやすいのです。この歪みを是正するのが、内需主導型経済への転換です。
内需主導型経済とは何か
内需主導型経済とは、国内の「消費」「投資」「所得」の好循環を基盤に成長を図る経済モデルを指します。企業が国内で利益を上げ、従業員に賃金を還元し、その所得が消費を刺激して再び企業活動を活性化させる――この循環が強固に回る経済です。
このモデルを確立するためには、次の3つの要素が欠かせません。
- 持続的な賃上げ:家計の可処分所得を増やし、消費を拡大する。
- 国内投資の拡大:設備・人材・技術への再投資を促す。
- 生産性の底上げ:デジタル化・地方分散で供給力を維持。
玉木構想における「賃上げを伴う供給力強化」は、まさにこの3つを同時に実現することを狙っています。単なる消費刺激策ではなく、内需を“構造的に強くする”政策です。
なぜ今、内需拡大が必要なのか
日本のGDPの約6割は個人消費が占めています。にもかかわらず、家計所得の停滞により、国内需要が長期的に低迷しています。2024年度の実質賃金は前年比▲1.2%とマイナスが続き、消費支出も減少傾向が鮮明です。
一方で、企業の現預金は540兆円超。これは国内に資金が滞留していることを意味します。もしこの一部でも国内投資や人材育成に回れば、日本経済は大きく活性化する可能性を秘めています。
つまり、内需拡大は「国民の給料を上げること」そのものであり、同時に企業の持続的成長を支える基盤でもあるのです。
内需強化のカギは中間層の復活
消費を拡大する主役は、中間層です。しかし日本では、非正規雇用の増加や可処分所得の減少により、中間層が細り続けています。これを立て直すためには、次のような施策が求められます。
- 正規雇用化と賃金格差の是正
- 住宅ローン・教育費負担の軽減
- 中小企業の賃上げ支援と価格転嫁の徹底
これらは単なる社会政策ではなく、内需を活性化する“経済政策”でもあります。賃金上昇と消費拡大が相互に作用する構造を再構築できれば、国内市場の成長余地は依然として大きいのです。
内需主導型成長の国際的潮流
実は、内需重視の経済戦略は世界的にも広がっています。アメリカのバイデン政権は「インフレ抑制法(IRA)」を通じて、国内製造業と雇用を強化。ドイツもグリーン投資を国内需要に結びつける政策を進めています。
日本もこの流れに沿い、経済安全保障と内需拡大を両立させることが求められます。その実現には、エネルギー、デジタル、半導体などの戦略分野への国内投資が不可欠です。
高市政権と玉木構想の接点:内需を基盤にした成長構造
高市政権の「給料が上がる経済」構想と、玉木雄一郎氏の「賃上げを伴う供給力強化」は、方向性こそ異なれど、根底にある理念は共通しています。それは、「国内で稼ぎ、国内で回す経済」への転換です。
この内需主導モデルこそが、少子高齢化社会における持続可能な経済の形。次章では、この構造転換を支える具体的な供給力強化策──中小企業支援、人材投資、DX化などの実践的アプローチについて解説します。
次へ:第4章:供給力強化の具体策(中小企業支援・人材投資・DX化)
第4章:供給力強化の具体策(中小企業支援・人材投資・DX化)

「給料が上がる経済」を実現するためには、単なる理念ではなく、現場で機能する具体策が不可欠です。ここで鍵を握るのが「供給力強化」です。日本経済の基盤を支える中小企業、そして人材とデジタルの力をどう活かすか――この点が経済再生の分岐点となります。
中小企業の生産性を高める構造改革
日本の企業の約99.7%は中小企業であり、雇用の7割を担っています。しかし、大企業との取引構造や価格交渉力の弱さにより、利益率が低く、賃上げ余力が乏しいのが現実です。この構造を変えなければ、「給料が上がる経済」は実現しません。
高市政権は2025年度予算で「中小企業の価格転嫁対策」「設備投資支援」「IT導入補助」を重点分野として位置づけています。玉木雄一郎氏も同様に、「価格転嫁ができなければ、賃上げは夢物語だ」と指摘しています。
政府が進める主な施策には以下のようなものがあります。
- ① 価格交渉の可視化: 下請け取引における価格転嫁状況を見える化し、適正取引を促進。
- ② 生産性向上支援: 設備更新やデジタル化への補助金制度を拡充。
- ③ 取引公正化法の改正: 不当な買いたたきを防止し、賃上げ原資を確保。
これにより、企業規模を問わず付加価値の高い事業構造へ移行し、賃金上昇が継続的に可能な経営環境を整えることが狙いです。
人材投資とリスキリング:人への支出は「未来への投資」
玉木構想でもっとも重視されているのが「人への投資」です。OECD統計によると、日本の企業が人材育成に使う費用はGDP比0.1%程度で、先進国の中でも最低水準です。この「人材投資の少なさ」が賃金停滞の一因とされています。
政府は2025年までにリスキリング関連支出を年間1兆円規模に拡大し、特にデジタル・AI・グリーン分野の再教育を支援する方針です。玉木氏も「教育は最大の成長戦略」と述べ、職業訓練や高等教育への再投資を強く求めています。
具体的な制度としては以下の通りです。
- 教育訓練給付制度の拡充(対象講座の拡大・補助率引き上げ)
- 企業内リスキリング助成(生産性向上につながる学習支援)
- 職業訓練校・専門学校の再編とAI人材育成特区の設置
これらは単なるスキルアップ支援ではなく、「賃上げの源泉」を生み出す仕組みでもあります。人材が成長すれば企業の生産性も向上し、その成果が報酬へ還元される好循環が期待されます。
デジタル化(DX)で中小企業の生産性革命を
供給力を強化する上で欠かせないのがデジタルトランスフォーメーション(DX)です。特に中小企業では、未だに紙・FAX・手作業による非効率な業務が多く残り、生産性向上の大きな壁となっています。
高市政権は、地方自治体や中小企業を対象とした「DX推進補助金」を2025年度も継続。業務効率化によるコスト削減と、デジタル人材の育成を両立させる方針です。また、クラウドサービス導入への税控除も段階的に拡大しています。
DX化の効果は顕著で、経済産業省の試算によれば、デジタル投資を行った中小企業の平均労働生産性は未導入企業の約1.6倍に上昇しています。これは「給料を上げる原資」を自ら生み出す力を意味します。
地方分散とインフラ再整備も供給力強化の一環
人口減少が進む地方こそ、供給力強化の潜在力を秘めています。高市政権は「地方成長投資特区」を構想し、地方大学や地域企業への技術支援・スタートアップ育成を推進中です。これは玉木氏の「地域経済を主軸にした内需回復戦略」と軌を一にするものです。
また、物流やエネルギーインフラの再整備も重要です。災害リスクや国際供給網の分断に対応するため、国内の生産拠点分散とレジリエンス強化が求められています。これにより、国内経済の安定供給力を保ちながら賃上げ余力を確保することが可能になります。
「賃上げ」を可能にする経済構造へ
最終的なゴールは、賃上げを「一時的な政策成果」ではなく「企業文化」として定着させることです。生産性が上がり、価格転嫁が適正に行われ、従業員のモチベーションが高まる。この三つの条件が揃えば、賃上げは自然な経営判断として続いていきます。
供給力強化とは、単に“モノを多く作る”ということではなく、“より価値の高いものを生み出す力”を社会全体で底上げすることです。これができて初めて、「給料が上がる経済」が持続的に機能します。
第5章:賃上げを実現する企業政策と税制の役割

「給料が上がる経済」を持続的に実現するためには、企業が自らの力で賃上げを継続できる構造を作ることが不可欠です。その中心にあるのが、政府による企業支援政策と税制の設計です。これらは単なる財政措置ではなく、賃上げを促すインセンティブの仕組みそのものです。
賃上げ促進税制の拡充:実効性を高める仕組み
政府が現在推進している「賃上げ促進税制」は、企業が賃金を引き上げた場合に法人税を減免する制度です。2025年度からは、賃上げ率が一定基準(例:中小企業3%以上)を超えた場合、最大40%の税額控除が適用されるよう拡充される予定です。
この制度は、高市政権の重点施策の一つであり、玉木雄一郎氏が以前から主張していた「努力する企業が報われる税制」と方向性を同じくしています。単なる補助金頼みではなく、企業が自律的に賃上げを継続する仕組みを税制で支えるという考え方です。
また、税制の設計においては次の3つの改善点が議論されています。
- ① 成果連動型の控除率: 賃上げ率や投資額に応じて控除率を段階的に設定。
- ② 人材投資との連動: 教育・訓練費を賃上げと同様に控除対象とする。
- ③ 中小企業への重点支援: 賃上げ余力の乏しい企業に追加優遇を実施。
このように、税制が「報酬型インセンティブ」として機能することで、企業は賃上げを経営戦略の一部として位置づけやすくなります。
内部留保の活用と投資誘導
企業の内部留保は2024年時点で540兆円を超え、過去最大を更新しています。これを賃上げや投資にどう回すかが、経済活性化のカギです。玉木氏はこの点を強く指摘し、「内部留保課税ではなく、内部留保の再投資を促す税制」に転換すべきだと訴えています。
たとえば、以下のような政策が検討されています。
- 内部留保を設備投資・人材投資に使った企業への税優遇
- 賃上げと投資の両立を行う企業への追加控除
- 内部留保を現金配分した場合の税控除縮小(投資優遇との対比)
これにより、「企業が利益を溜め込む」構造から「利益を再投資する」構造へと変化させ、経済の循環力を高める狙いがあります。
中小企業の負担軽減と公正取引の確保
賃上げを進める上で最も大きな障壁となるのが、中小企業のコスト構造です。特に取引先との力関係が強い業界では、価格転嫁が難しく、原価上昇を吸収できないまま賃上げが困難な状況にあります。
この課題に対し、高市政権は「価格交渉促進法(仮称)」の制定を検討。発注元企業に価格転嫁への誠実対応を義務づける仕組みです。また、玉木構想でも「公正取引の確立」を最優先事項として掲げています。
政府は2025年度中に、以下の3つの支援策を同時実施する方針です。
- 取引適正化のモニタリング制度を拡充
- 公正取引委員会と中小企業庁による監視体制の強化
- 価格転嫁率の公表制度を拡大し、取引透明化を進める
こうした取り組みにより、「賃上げをしたくてもできない中小企業」を減らすことが期待されています。
企業ガバナンスと経営者の意識改革
賃上げの持続性を高めるためには、経営層のマインドセットの変化も不可欠です。近年、上場企業では「人的資本開示」の義務化が進み、賃上げや人材投資が企業価値向上の指標として扱われ始めています。
高市政権は、これをさらに後押しするため、ESG投資の基準に「人的資本の充実度」を追加する方向で検討を進めています。玉木氏も同様に、「賃金をコストではなく投資として捉える経営文化」が必要だと主張しています。
つまり、企業経営の価値観を「短期利益」から「長期的な人材価値」へと転換することが、真の賃上げ経済の土台になるということです。
税制・企業政策の相乗効果がもたらす未来
税制優遇、内部留保活用、公正取引の確立、そして経営意識改革――これらが連動することで、企業が自発的に賃上げを継続できる経済構造が形成されます。これは政府の介入による「賃上げキャンペーン」ではなく、市場が自然に機能する形での好循環モデルです。
この仕組みが根付けば、日本経済は「低賃金・低生産性」から「高付加価値・高賃金」へと進化します。高市政権と玉木構想が共に目指すのは、まさにこの構造転換です。
次へ:第6章:経済構造転換のカギを握る『内需×供給×賃上げ』の連動モデル
第6章:経済構造転換のカギを握る「内需×供給×賃上げ」の連動モデル

「給料が上がる経済」を実現するための中核にあるのが、「内需」「供給力」「賃上げ」の三要素を連動させる経済構造の再設計です。これら3つは独立した政策ではなく、相互に作用しながら好循環を生み出すシステムとして機能します。本章では、この“連動モデル”の構造と実現に向けた課題を解説します。
三位一体モデルの全体像
玉木雄一郎氏が提唱し、高市政権が実践に移しつつある経済モデルは、次のように整理できます。
【三位一体モデルの構造】
- ① 内需: 国民の所得向上による消費拡大
- ② 供給: 生産性・投資力の強化(供給力向上)
- ③ 賃上げ: 分配改革による所得の再循環
→ この3要素が循環することで、成長と分配が両立する。
つまり、内需が拡大すれば企業の売上が伸び、企業は賃上げと投資余力を得ます。生産性が上がれば、企業の利益率も上がり、再び所得向上へ還元される。この循環が安定して機能する社会が「給料が上がる経済」の姿です。
1. 内需拡大が賃上げの出発点
まず重要なのは、内需の拡大です。家計の可処分所得を増やし、消費を刺激することが賃上げの起点になります。高市政権は2025年度から、所得税・住民税の減税と子育て世帯支援を同時に行い、実質可処分所得を底上げする方針です。
玉木氏も「可処分所得を増やすことが最大の景気対策」と述べ、減税・補助金・教育費支援を内需拡大の三本柱として掲げています。消費マインドが改善すれば、企業は売上見通しを立てやすくなり、賃上げの判断が現実的になります。
2. 供給力強化が“支える側”のエンジンに
賃上げを支える裏側の力が、供給力強化です。これは「人材」「技術」「設備」の3分野で行われるべき取り組みを指します。
- 人材: リスキリングとキャリア教育で生産性を底上げ。
- 技術: DX・AI導入による業務効率化と高付加価値化。
- 設備: 国内生産回帰・エネルギー効率投資を推進。
供給力の底上げが進めば、インフレ圧力を抑えつつ安定的な経済成長が可能になります。つまり、賃上げによる物価上昇を「成長で吸収する」構造を作ることが目的です。
3. 賃上げが内需を再び押し上げる循環構造
三位一体モデルの最大の特徴は、賃上げが最終点ではなく再スタートの起点になることです。賃上げによって家計の可処分所得が増えれば、内需が拡大し、企業の売上が上昇します。その結果、企業はさらなる設備投資・賃上げを行う余力を得る――この循環が経済全体を押し上げるのです。
このメカニズムを政策として成立させるには、政府の調整役が不可欠です。具体的には、次のような政策連携が求められます。
- 賃上げ実施企業への税優遇と補助金の連動
- 教育投資と企業の人材育成支援の一体運用
- 公共投資と民間投資のタイミング調整による景気安定化
これらを同時並行で進めることで、経済全体の歯車が噛み合い始めます。
「トリクルダウン」から「ボトムアップ」へ
過去の日本では、「企業が成長すればやがて賃金が上がる」という“トリクルダウン理論”が主流でした。しかし、現実には企業の利益が賃金に十分還元されず、内部留保が積み上がる結果となりました。
玉木構想と高市政権の新しい経済モデルは、これを逆転させたボトムアップ型成長です。国民の所得を起点に内需を刺激し、そこから企業成長を促す構造――すなわち「下からの成長循環」を志向しています。
この考え方は、IMFやOECDも近年提唱する「包摂的成長(inclusive growth)」の潮流とも一致しています。
課題:三位一体モデルを持続させるための条件
理論的には完璧に見えるこのモデルも、実現にはいくつかの課題が存在します。主なものは以下の3点です。
- 賃上げの地域・業種間格差: 大企業中心の賃上げが続けば、地方や中小企業に波及しない。
- 物価上昇とのバランス: 名目賃金の上昇が実質所得の改善につながらないリスク。
- 財政の持続性: 減税・補助金政策の財源確保と中長期的な均衡。
これらを克服するには、短期的な景気刺激と並行して、中長期的な構造改革を続ける政治的意思が欠かせません。
連動モデルがもたらす新しい日本経済像
「内需×供給×賃上げ」の連動モデルが定着すれば、日本経済は次のような姿に変わります。
- 国内市場が安定的に成長し、外需ショックに強い経済体質へ
- 中小企業でも持続的賃上げが可能な高付加価値構造へ転換
- 国民の所得増加と社会保障の安定化が同時に実現
この「ボトムアップ成長モデル」は、高市政権が掲げる政策理念「強く、優しい経済」とも合致します。次章では、こうした構造転換の先に見える「給料が上がる日本」の未来像と展望をまとめます。
第7章:結論と展望―“給料が上がる日本”への道筋

「給料が上がる経済」は、単なるスローガンではなく、日本社会が次の時代に生き残るための国家戦略です。賃上げを通じて人々の生活を豊かにし、内需を活性化させ、供給力を底上げする。この循環を生み出すことこそが、高市政権と玉木構想に共通する最終的な目標です。
高市政権と玉木構想の融合:現実的な経済再生モデル
高市早苗首相が打ち出した「給料が上がる経済の実現」と、玉木雄一郎氏の「賃上げを伴う供給力強化・内需主導型経済」は、一見異なる政治勢力の政策に見えます。しかし両者の本質は同じです。すなわち、「分配を通じた成長」ではなく、「成長を通じた分配の持続性」を追求している点です。
この共通点を軸にすれば、超党派で実現できる現実的な経済再生モデルが見えてきます。
- 成長の源泉: 供給力の強化(人・技術・投資)
- 分配の仕組み: 公正な取引と税制優遇による賃上げ促進
- 循環の基盤: 内需拡大による安定成長
この「成長・分配・循環」の三本柱が連動すれば、日本経済は再び中長期的な成長軌道に乗ることができます。
実現に向けた3つの行動指針
では、「給料が上がる経済」を現実にするには、政府・企業・国民がどのように行動すべきでしょうか。ここでは3つの指針を挙げます。
- ① 政府:長期的視点での制度設計
減税や補助金の短期効果に頼らず、教育投資・税制優遇・価格転嫁制度の恒常化を行う。経済政策を“年度単位”ではなく、“世代単位”で設計することが重要です。 - ② 企業:人的資本経営の実践
賃上げを「コスト」ではなく「未来への投資」と位置づけること。社員の成長を企業価値と直結させる経営に転換すれば、労働意欲と生産性は確実に向上します。 - ③ 国民:消費・投資・学びの循環を意識
賃上げや減税による可処分所得の増加を、消費だけでなく学び直しや国内企業への投資に回すことで、経済循環を個人レベルで支えることができます。
この三者が同じ方向を向くことが、持続的な「給料が上がる社会」への第一歩です。
今後の展望:2030年、日本経済の転換点へ
もしこの経済モデルが順調に進展すれば、2030年頃には日本経済は大きな転換点を迎えると予測されます。生産性の向上、賃金の上昇、そして内需拡大が同時に進行することで、次のような成果が期待できます。
| 指標 | 2024年実績 | 2030年目標(想定) |
|---|---|---|
| 実質賃金 | 前年比 -1.2% | +2.0〜2.5% |
| 労働生産性 | OECD平均の84% | OECD平均の95%へ改善 |
| 家計消費支出 | 前年比 -0.9% | +3%成長 |
| 中小企業賃上げ率 | 2.5% | 4〜5%水準 |
このような成果が現実のものとなれば、日本経済は「低成長・低賃金」から「安定成長・高付加価値経済」へと確実に移行します。
「給料が上がる経済」は国民の信頼から始まる
最終的に、経済を動かすのは「人の信頼」と「期待」です。企業が未来を信じて投資し、国民が将来を信じて消費する。この心理的循環が、経済循環のエンジンとなります。
玉木雄一郎氏が述べた「人への投資が国を強くする」という言葉は、単なる経済論ではなく、国民の希望そのものです。そして高市政権が掲げる「強く優しい経済」も、その理念を現実化する政治的枠組みといえます。
“給料が上がる日本”は、必ずしも遠い未来の話ではありません。賃上げと供給力強化、内需主導の3本柱を確実に実行すれば、5年後には日本経済は「失われた30年」から「取り戻す10年」へと変わる可能性を秘めています。
まとめ:未来への羅針盤
本記事で解説してきたように、「給料が上がる経済」を実現する鍵は次の三つです。
- ① 賃上げを単なる分配でなく、生産性改革と結びつけること。
- ② 内需を基軸に、国内でお金と価値を循環させること。
- ③ 政府・企業・国民が共通目標として「人への投資」を続けること。
この3点を実行できれば、日本は再び力強い成長軌道に戻るでしょう。高市政権が描く未来と玉木構想が示す方向性は、今まさに一つの答えに収束しつつあります。
関連記事:
経済産業省|中小企業政策情報
財務省|税制改正資料(賃上げ促進税制)
日本経済新聞|賃上げと内需拡大の現状分析
“給料が上がる経済”は待つものではなく、創るもの。 その未来は、今の政策判断と、私たち一人ひとりの行動から始まります。







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