政府、外国人政策を全面見直しへ|土地取得・入管制度の再構築で「安全と共生」の両立を探る

政府が外国人政策を見直す背景
政府が外国人政策の見直しに踏み切った背景には、国内外で進む社会構造の変化と、安全保障上の課題がある。ここ数年、日本に在留する外国人の数は急増し、2024年時点で約330万人を突破。これは過去最多の水準であり、労働力としての受け入れと同時に、社会的摩擦や制度上の歪みも浮き彫りになっている。
特に、地方や観光地ではオーバーツーリズムの影響が顕著だ。観光客による生活インフラの混雑、地域文化への影響、さらには不法滞在・不法就労の増加が問題視されている。これにより「外国人との共生」という理念と「治安・秩序の維持」という現実の間にギャップが生じている。
さらに、地政学的リスクの高まりも見逃せない。防衛施設周辺や離島地域での外国人による土地取得が、経済安全保障の観点から懸念されている。特に中国資本による土地購入事例が報じられるたびに、国民の間には「安全保障上の抜け穴ではないか」との不安が広がっている。
こうした状況を受け、高市早苗首相は「一部の外国人による違法行為やルール逸脱に、国民が不安や不公平を感じている」と発言。政府として、外国人との共生を前提としつつも、ルールの再構築と運用の厳格化を進める必要があるとの認識を示した。
政府の方針転換は、単なる入管や土地規制の問題ではなく、人口減少社会の中で外国人をどう位置づけるかという国家戦略そのものに関わる。経済成長を支える労働力としての外国人と、国家安全を守るための統制とのバランスを取ることが、今後の日本社会における最重要課題となる。
関係閣僚会議の初会合で何が話し合われたのか

2025年11月4日、政府は首相官邸で「外国人政策に関する関係閣僚会議」の初会合を開催した。これは、外国人による土地取得ルールや不法滞在対策、出入国管理制度の強化などを一体的に検討するために設けられた新たな枠組みである。
会議では、高市早苗首相が「外国人の増加に伴い、一部で違法行為やルール逸脱が生じ、国民の不安や不公平感が広がっている」と指摘。政府として、外国人との共生を前提としながらも、秩序ある社会を維持するための制度改革を進める必要があると強調した。
首相は出席閣僚に対し、特に次の2点を重点課題として検討するよう指示した。
- ①既存ルールの順守と制度の適正化: 外国人労働、在留資格、住宅・土地取得に関する制度の実効性を高める。
- ②土地取得ルールを含む国土管理の見直し: 外国資本による土地購入の監視強化、防衛・重要インフラ周辺地域の安全確保を目的とする。
議長には木原稔官房長官が就任し、実務面では小野田紀美経済安全保障担当相が中心となる。小野田氏は会議後の記者会見で、「出入国管理の適正化やオーバーツーリズム対策、外国人による不動産保有の実態把握について、首相から具体的な指示を受けた」と明らかにした。
政府はこれらの議論をもとに、2025年1月を目途に「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」を改訂する方針を示した。高市首相は「国民が安心できる社会の実現に向け、スピード感をもって検討を進める」と述べ、年明け早々の方針発表を目指す。
この初会合は、単なる政策確認の場ではなく、今後の外国人政策全体の方向性を左右する重要なターニングポイントといえる。土地取得規制、入管制度、共生政策という三つのテーマが一体的に議論された点に、政府の本気度が表れている。
外国人による土地取得ルールの見直し

政府が今回の外国人政策で特に重視しているのが、外国人による土地取得ルールの見直しである。これまで日本では、外国人が不動産を購入する際に明確な制限がなく、国内の法制度上は日本人とほぼ同じ条件で土地を所有することが可能だった。
しかし、近年はこの自由度の高さが安全保障上のリスクとして注目を集めている。特に防衛施設や自衛隊基地周辺、離島、エネルギー供給拠点などの重要地域で、外国資本による土地買収が確認されている。2023年の内閣府報告では、北海道や沖縄県、長崎県対馬などで中国やシンガポール系企業の土地取得事例が複数判明した。
こうした状況を受け、政府は2021年に「重要土地等調査法」を施行し、防衛・インフラ周辺の土地利用状況を調査する仕組みを導入した。しかし同法は「購入そのものを制限する法律ではない」という限界を抱えており、実効性の強化が課題とされてきた。
今回の見直しでは、土地の利用目的を事前審査する制度や、重要地域での購入に対する許可制の導入などが検討されている。さらに、土地取引の背後にある資本の出所や所有構造を可視化する「実質的支配者の開示制度」の強化も有力案として浮上している。
経済安全保障の専門家・中西寛氏(京都大学教授)は、「外国人の土地取得そのものを排除するのではなく、国家の安全と透明性を両立させる制度設計が重要だ」と指摘する。つまり、外国資本を拒絶するのではなく、『誰が何の目的で土地を取得しているのか』を明確にする仕組みが求められているのだ。
また、国土交通省の担当者は「地方自治体との連携が不可欠」と述べており、国と自治体が共同で土地取引の監視・報告体制を整備する方向で調整を進めている。政府は2025年1月に改訂される外国人政策の中で、この土地取得ルール見直しを柱の一つとして正式に位置づける方針だ。
外国人による土地購入問題は、単なる経済取引の問題ではない。エネルギー・防衛・通信といった国の基盤に関わる領域と直結しており、「開かれた投資環境」と「国家安全保障」の両立が求められている。政府の新方針がどこまで実効性を持つかが、今後の焦点となる。
出入国・在留管理の強化方針

外国人政策の見直しにおいて、もう一つの大きな柱となるのが出入国・在留管理制度の強化である。政府は、不法滞在や不法就労の増加を背景に、より厳格で透明性の高い入管運用を目指している。
法務省の統計によると、2024年時点で日本国内の不法滞在者は約7万9,000人に上り、前年より約1割増加した。特に技能実習生や短期滞在ビザで入国後、在留期間を超えて滞在するケースが増えている。背景には、人手不足に悩む業界とブローカーの存在、そして制度の複雑さがある。
高市首相は会議で「出入国管理の適正化は、共生社会を守るための前提条件だ」と述べ、入管行政の見直しを各省庁に指示した。政府内では、以下の3つの方向性が検討されている。
- ① 不法滞在・不法就労の監視強化: AIによる在留資格情報の自動照合システムを導入し、在留カードの不正使用を防止。
- ② 在留資格制度の再編: 技能実習制度を廃止し、「育成就労制度」へ移行。労働者保護と転職自由度を高める。
- ③ 出入国データの一元管理: 税・雇用・在留情報を統合するデジタル庁主導の新データベース構想を推進。
特に注目されるのが、技能実習制度から「育成就労制度」への移行だ。従来の実習制度は、低賃金労働や人権侵害の温床となっていたとの批判が多く、国際的にも再設計が求められていた。新制度では、転職の自由度を高めると同時に、就労者が日本語や技能を継続的に学べる仕組みを整える予定である。
一方で、入管強化には慎重論もある。難民申請者や長期滞在者に対する過剰な取り締まりが「人権侵害につながる恐れがある」として、国際人権団体や法律家からの懸念も根強い。バランスの取れた制度設計が求められる中で、政府は2025年1月までに「実効性と人道性の両立」を目指す方針を示している。
法務省関係者は「日本の入管制度は、今後10年の外国人政策を左右する基盤になる」と語る。デジタル技術を活用した在留管理の高度化は、治安維持だけでなく、外国人が安心して暮らせる社会を支えるインフラにもなるだろう。
外国人との共生社会に向けた課題
政府が掲げる「外国人との共生社会」は、単なるスローガンではなく、人口減少時代の持続可能な社会を支える基盤として位置づけられている。しかし現実には、外国人住民が安心して暮らせる環境が十分に整っているとは言い難い。制度改革と並行して、地域社会に根ざした支援の充実が求められている。
2024年時点で日本に在留する外国人は約330万人。このうち労働者は約200万人を超え、製造業、介護、建設、農業など幅広い分野で欠かせない存在となっている。一方で、言語の壁や文化的な違いが原因で、孤立やトラブルに直面するケースも多い。
文部科学省の調査によると、日本語教育が十分に受けられない子どもは約2万人。学校現場では、学習支援員の不足や保護者とのコミュニケーション難が課題となっている。さらに、医療機関や行政窓口では多言語対応が追いつかず、生活情報へのアクセス格差も指摘されている。
こうした問題に対し、政府は2018年に「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」を策定した。しかし、自治体や地域ごとの取り組み格差が大きく、十分に機能していない現状もある。今回の見直しでは、国と地方の連携を強化し、共生の基盤を再構築することが重要なテーマとなる。
高市首相は「共生社会の実現には、外国人を単なる労働力としてではなく、地域の一員として受け入れる意識の転換が必要だ」と強調。今後は、自治体レベルでの相談窓口の拡充、日本語教育の無償化、多文化共生推進員の配置などが検討されている。
専門家の間では、共生社会を実現するためには「制度」と「心」の両輪が不可欠だと指摘される。制度面では在留支援や教育の充実、心の面では外国人への偏見や排他意識をなくすための教育・啓発活動が鍵となる。国民の理解と協力なくして、真の共生は成り立たない。
政府は、2025年1月に改訂予定の外国人政策の中で、社会統合政策を強化する方針を掲げている。経済と文化が共に発展する「多文化共生型国家」を実現できるかどうか――それが今、日本が直面する最大の課題である。
専門家・有識者の見解と今後の展望

政府が進める外国人政策の見直しは、経済・安全保障・社会の三つの側面にまたがる包括的な課題である。そのため、各分野の専門家からも多角的な意見が寄せられている。ここでは、有識者の見解を踏まえながら、政策の方向性と今後の課題を整理する。
経済面では、労働力確保と成長戦略の両立が焦点となる。日本総研の村上卓史主任研究員は「外国人労働者の受け入れは、地域経済を支える生命線だが、低賃金構造の固定化を防ぐ制度改革が不可欠」と指摘する。単純労働の依存ではなく、専門技能やデジタル分野の人材登用を進めることで、生産性向上につながるとの見方が強い。
安全保障面では、土地取得や重要インフラへの外国資本の関与が懸念されている。防衛大学校の伊藤健司教授は「外国資本による土地取引は、情報収集や通信インフラへのアクセス経路となり得る。自由な経済活動と国家安全保障の線引きを、法的に明確化する必要がある」と述べる。土地取引監視制度の実効性を高めるためには、自治体と防衛省の情報共有が不可欠だという。
一方、社会面では“共生社会”実現のための国民理解がカギとなる。社会学者の星野由美氏(立命館大学)は「制度改革だけでは共生は成り立たない。地域住民が外国人をどう受け入れるかが最も重要だ」と語る。教育・福祉・地域活動などの場で、外国人と日本人が自然に交流できる仕組みを育てることが、長期的な安定につながると強調した。
政府はこれらの意見を踏まえ、2025年1月に「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」を改訂する予定だ。関係閣僚会議では、土地取得規制・入管制度改革・共生推進策の三本柱を軸に、法改正や制度設計の最終調整が進められている。
政策学の専門家・真鍋政彦氏(東京大学)は「政府の狙いは“外国人を制限する政策”ではなく、“持続可能な受け入れ制度の構築”にある」と分析する。つまり、外国人を排除するのではなく、ルールと信頼のもとで共に暮らす社会モデルへの転換を目指しているというわけだ。
外国人政策は、経済再生と国際競争力を支える柱でもあり、同時に国の安全と文化的多様性を守る盾でもある。来年1月に発表される新方針は、そのバランスをどのように取るのか――日本社会の未来を左右する試金石となるだろう。
まとめ|「安全」と「共生」の両立に向けた道筋

政府が進める外国人政策の見直しは、単なる制度改革ではなく、日本社会全体の価値観を問う転換点にある。経済のグローバル化が進む中で、外国人の存在はもはや一時的な労働力ではなく、地域社会の一員として欠かせない存在となっている。一方で、安全保障や治安維持の観点から、ルールの厳格化が求められるのも現実だ。
高市早苗首相は「外国人との共生と国民の安心を両立させる」と明言しており、そのために政府は土地取得ルールの見直し、出入国・在留管理の適正化、そして共生社会の再構築という三つの柱を打ち出した。これらは個別の政策ではなく、相互に補完し合う「包括的外国人戦略」として位置づけられている。
2025年1月に改訂される「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」は、今後10年の日本社会を方向づける基本方針となる見込みだ。経済安全保障の強化、地域社会の安定、多文化共生の推進――これらをいかに調和させるかが、政府の最大の挑戦である。
市民の側にも意識の変化が求められる。外国人を「外から来た存在」として区別するのではなく、「同じ社会を支える仲間」として受け入れる姿勢が、共生社会の土台を築く。制度の整備と同時に、教育や地域活動を通じた相互理解の深化が欠かせない。
政策学者の真鍋政彦氏は「外国人政策は、経済政策でもあり、安全保障政策でもあり、人間の尊厳に関わる社会政策でもある」と語る。つまり、この問題は単なる行政の枠を超え、日本の将来ビジョンそのものを映し出す鏡なのだ。
外国人政策の見直しは、国の“守り”を固めると同時に、“開かれた共生”を実現する試みである。政府が打ち出す新方針が、国民の安心と信頼を得ながら、持続可能な社会への第一歩となるか――来年1月、その答えが示される。







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