2026年8月診療分から、高額療養費制度の月額上限が見直され、年間上限が新設されました。一方、2027年8月には所得区分がさらに細分化されます。高額な治療を受ける人は、年収だけでなく加入する健康保険、年齢、治療が続く期間で負担額が変わります。
この記事では、2026年8月時点の制度、2027年改定の予定、医療費100万円の計算例、窓口負担を抑えるための確認手順を厚生労働省資料で整理します。更新日:2026年10月12日
- 2026年8月から月額上限が改定。70歳未満・年収約370万〜770万円の区分では、医療費総額100万円の月の上限は約9万2,940円。
- 2026年8月から、8月〜翌7月を1年とする年間上限もスタート。月ごとの上限には届かない治療が続く人にも軽減となる場合があります。
- 2027年8月から所得区分を細分化。年収約510万円を超える層などでは、月額上限が上がる区分があります。
- 制度の適用や払い戻しの手順は加入先の保険者に確認してください。
高額療養費制度とは?対象になる医療費
高額療養費制度は、保険診療の自己負担が1か月(1日から末日)で所得・年齢ごとの上限を超えた場合、超過分が支給される制度です。厚生労働省によると、上限は年齢や所得に応じて決まります。医療機関や薬局の窓口で支払う金額が対象です。
ただし、入院時の食事代、差額ベッド代、先進医療など保険適用外の費用は、原則として高額療養費の対象外です。月をまたぐ入院では月ごとに計算するため、同じ治療でも受診日や入院期間によって自己負担が異なることがあります。
2026年8月から何が変わった?月額上限と年間上限
2026年8月診療分から、所得区分に応じた月額上限が改定されました。70歳未満で年収約370万〜770万円に相当する区分の場合、月の医療費総額が100万円なら、計算上の上限は次のとおりです。
| 診療月 | 月額上限の計算 | 上限額の目安 |
|---|---|---|
| 2026年7月まで | 80,100円+(1,000,000円−267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月から | 85,800円+(1,000,000円−286,000円)×1% | 92,940円 |
この例では、同じ総医療費でも上限が5,510円上がります。厚労省も、70歳未満・年収約370万〜510万円の人が医療費100万円の治療を受けた例で、自己負担を約9.3万円と案内しています。実際の区分判定は年収目安だけではできず、被用者保険は標準報酬月額、国民健康保険は旧ただし書所得などで決まります。
年額上限は8月から翌年7月まで
新設された「年間上限」は、毎年8月から翌年7月までの自己負担を合算して判定します。70歳未満の年収約370万〜770万円の区分では年額53万円が目安です。月ごとの上限に届かない自己負担が続く場合でも、年間上限に達すれば、それを超える分が保険者から支給されることがあります。年間上限額は所得区分で異なります。
また、直近12か月のうち高額療養費に該当した月が3回以上ある場合、4回目以降の月額上限を下げる「多数回該当」は基本的に据え置かれました。年収200万円未満の課税世帯では、2027年8月から多数回該当の上限を引き下げる措置も予定されています。
2027年8月の改定で負担はどう変わる?
2027年8月からは、負担能力に応じて所得区分が細かく分かれます。たとえば、現在ひとまとめになっている年収約370万〜770万円の範囲は、次の3区分に分かれる予定です。
| 年収の目安(70歳未満) | 月額上限の計算式(2027年8月〜) |
|---|---|
| 約370万〜510万円 | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% |
| 約510万〜650万円 | 98,100円+(医療費−327,000円)×1% |
| 約650万〜770万円 | 110,400円+(医療費−368,000円)×1% |
このため「2027年に全員が同じ割合で上がる」わけではありません。年収約370万〜510万円の区分は月額計算式が維持される一方、約510万円を超える区分では上限が上がります。高所得帯も区分が細分化されるため、勤務先の健康保険証に記載された標準報酬月額や加入先の案内で確認してください。厚労省の表には、70歳以上の外来特例や非課税世帯など別の区分もあります。
制度を使うには?窓口で高額を立て替えない方法
- マイナポータルまたは資格確認書で、自分の保険者(協会けんぽ、健康保険組合、市区町村など)を確認する。
- 加入先の保険者に、自分の所得区分、年間上限の対象、払い戻し申請の要否を問い合わせる。
- 窓口負担を上限額までに抑えたい場合は、マイナ保険証で限度額情報の提供に同意する方法や、限度額適用認定証が使えるか事前に確認する。
- 領収書や保険者から届く通知を保管する。同じ世帯の合算など適用条件は年齢・保険の種類で異なるため、自己判断せず保険者に確認する。
マイナ保険証を利用しない場合、認定証の交付が必要となるケースがあります。医療機関や保険者の扱いを、入院・治療開始前に確認すると、窓口で一時的に大きな金額を支払う不安を減らせます。
臨時国会での焦点は?決定済みの改定と再検討を求める声
今回の改定を含む医療保険制度改正法は、2026年5月29日に成立しています。したがって、2026年10月の臨時国会で改定法案がこれから採決される、という状況ではありません。
一方、患者団体や関係者からは、2027年8月の負担見直しについて再検討を求める声が出ています。厚生労働大臣は10月6日の会見で、2026年8月と2027年8月の変更を一体のパッケージとして国会で審議し、法律と予算が成立したと説明し、施行準備を進める考えを示しました。現時点で確認できるのは政府のこの説明までです。今後の国会質疑や政府発表で変更があれば、ここを更新します。
よくある質問
高額療養費の上限は年収だけで分かりますか?
年収は目安です。実際の区分は、保険の種類により標準報酬月額や所得などで判定されます。保険証・資格確認書にある保険者へ確認してください。
年間上限は1月から12月までですか?
いいえ。今回の制度でいう年間は、8月から翌年7月までです。年間上限は所得区分などにより額が異なります。
差額ベッド代や入院中の食事代も上限に含まれますか?
原則として含まれません。高額療養費は保険診療の自己負担を対象とする制度です。保険適用外の費用は医療機関に確認してください。
まとめ:まず保険者に自分の区分と手続きを確認
2026年8月から月額上限の改定と年間上限の新設が始まり、2027年8月には所得区分の細分化が予定されています。治療を受ける本人や家族は、年収目安だけで決めつけず、保険者に現在の所得区分・多数回該当・年間上限・窓口負担を抑える方法を確認しましょう。制度内容や申請方法に変更があれば、厚生労働省と各保険者の最新案内を確認してください。
参考資料
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2026年7月31日更新)
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(2026年8月診療分から・2027年8月からの表)
- 厚生労働省「上野大臣会見概要」(2026年10月6日)
- 厚生労働省「医療保険制度改正法が成立しました」(2026年5月29日)
※本記事は公表資料をもとにした制度の一般的な解説です。個人の負担額・対象可否・払い戻し手続きは加入先の保険者にご確認ください。