STEP1:トランプ再登場で市場がざわつく ― 2025年の関税シナリオ
「またトランプがやってくる」——そんな報道が現実味を帯びた瞬間、世界の市場はピリッと緊張した。2025年、米大統領選が近づく中、ドナルド・トランプ前大統領が再び政界の主役に戻ろうとしている。そして、彼が再選されれば、まず間違いなく動く政策がある。それが“関税強化”だ。
これは単なる「過去の焼き直し」ではない。むしろ、彼が政権を握っていた2017〜2021年に比べて、世界情勢は格段に複雑化している。米中関係、ウクライナ情勢、中東の地政学リスク、そして国内の分断。こうした要素の中で、トランプ関税が再登場するなら、それは新たな波乱の号砲になるだろう。
「アメリカ第一」の再来:関税カードの本当の目的
トランプ氏が掲げる“America First”は、単なるスローガンではない。彼にとって関税は、貿易赤字を正すためのツールではなく、政治的・外交的カードとして機能する「武器」だ。実際、彼の発言や行動を振り返ると、経済合理性というより“交渉術”としての側面が強い。
・「関税をかける」と発言するだけで交渉が有利になる
・国内の支持層(労働者や保守的な製造業)へのパフォーマンスになる
・ドル高を抑えるための市場圧力になる可能性もある
つまり、関税政策とは、「相手国への圧力」であると同時に、「国内政治へのアピール」でもある。これが厄介な点だ。なぜなら、論理的な経済指標よりも、政治的タイミングで動くからである。
トランプ・ショックは“リアルタイム爆弾”
過去を振り返ると、2018年の鉄鋼・アルミ関税、そして中国製品への追加関税が典型例だ。これらの政策は、唐突に発表され、市場に瞬間的なパニックを引き起こした。
当時の特徴として、
・政策内容が突然ツイートで発表される
・詳細は後出し、解釈が分かれるためマーケットは迷走
・株安・円高・金利低下という“典型的なリスクオフ”が同時に起きる
というパターンがあった。重要なのは、トランプ氏の関税政策が「予見可能な経済指標」ではなく、「感情とタイミング」で動いてくる点。まさにリアルタイムで炸裂する“言葉の爆弾”である。
関税が通貨市場に火をつける構造
では、なぜこの関税政策が「円高」につながるのか? そのメカニズムについては次章で詳しく解説するが、ここでも軽く触れておこう。
関税が発動されると、まず最初に米国の貿易相手国の経済活動が鈍る。次に、それが世界全体の景気減速シナリオを呼び込み、「リスク資産売り/安全資産買い」が起きる。この“安全資産”に円が含まれるため、「円買い=円高」が進むのだ。
つまり、トランプの発言ひとつが、為替市場の流れを根本から変えてしまう可能性を持っている。
トランプ再登場は“投資家への試練”か“チャンス”か
結論から言えば、トランプ関税の再来は、投資家にとって試練であると同時に、波を読めば“絶好のチャンス”になる可能性もある。重要なのは、「予測」よりも「即応性」だ。
誰もがニュースを見ている時、先に動けるか?
他人が混乱している時に、冷静に材料を分解できるか?
そして何より、“トランプの言葉”をそのまま信じず、背景を読めるか?
これらが、今回の関税再来相場をサバイブするカギになるだろう。
STEP2:関税がなぜ“円高”を引き起こすのか? 為替が動くロジックを分解
関税の話をすると、多くの人がまず思い浮かべるのは「貿易摩擦」や「物価上昇」だろう。だが、為替市場において関税が及ぼす影響は、想像以上にスピーディかつ繊細だ。
特に“円高”という反応が起きる背景には、実は複数の力学が絡み合っている。ここでは、「関税→円高」のつながりを、できるだけわかりやすく分解してみよう。
円は“安全資産”? 世界がパニックになると買われる理由
円はよく「安全資産」と呼ばれる。これは、世界中の投資家がリスクを嫌う局面、つまり「株安・地政学リスク・経済減速」などが表面化するときに、真っ先に円を買う傾向があるからだ。
「でも、日本って経済成長してないのに、安全なの?」
という疑問は当然だが、重要なのは“相対的な安心感”だ。
・日本は経常黒字国家であり、対外純資産世界一
・外国にあまり頼らず経済を回している(=資金が逃げにくい)
・金融政策が比較的安定している
この3点が、“リスク回避の円買い”を支える根拠だ。
トランプ関税→世界経済減速→リスクオフ→円高という連鎖反応
トランプの関税発動は、単なる米国と中国の問題にとどまらない。むしろ、それが波紋のように広がり、世界経済そのものに冷や水を浴びせることになる。
以下のような流れが、為替市場でよく起こる。
- 米国が関税を引き上げる
↓ - 中国や欧州の景気が悪化する(輸出減・消費減)
↓ - グローバルなリスクオフムードが高まる
↓ - 株価が下がり、リスク資産から資金が逃げる
↓ - “安全資産”である円が買われ、円高が進む
このように、関税という「貿易の武器」が、為替にまで深く影響する構造があるのだ。
実例:2018年〜2019年、米中貿易戦争時の円高の動き
ここで過去のケースを見てみよう。
2018年、米中貿易戦争が激化した際、ドル円相場は114円台から一気に104円台まで円高が進んだ。この動きは、トランプ政権が2000億ドル規模の中国製品に追加関税をかけると発表した直後に発生している。
当時、市場では「米中の報復合戦が続けば、世界景気が悪化する」という観測が広まり、リスク回避の円買いが急増。特に機関投資家やヘッジファンドが、株や新興国通貨から一斉に資金を引き上げて円にシフトしたのが大きかった。
この時、為替は経済指標というよりも「市場心理」で大きく動いた。
為替は“期待”と“恐れ”で動く——数字より先に感情が走る
ここがポイントだ。為替相場は、GDPや雇用統計といった「確定データ」ではなく、“これから何が起こるか”という「期待と恐れ」で先回りして動く。
トランプの関税発言が出ただけで、「これから景気が冷え込むかも」「新たな摩擦が起こるかも」という連想が広がる。こうして、まだ何も実行されていない段階から“円高”が始まることも珍しくない。
特に現在のように、AIによる自動売買や高速トレーディングが普及した市場では、わずかな発言やツイートがトリガーになり、秒速で円買いが発生する。
トランプがツイートするたびに、為替はゆれる?
これは冗談のようで、実際にあった現象だ。2019年当時、「トランプがツイートした直後にドル円が一気に2円動いた」という事例が何度も記録されている。
つまり、今後も彼が発信を始めれば、再び「口先介入による円高リスク」が顕在化する可能性がある。
個人投資家が知っておくべき、“関税→円高”のサインとは?
では、投資家は何を見ておくべきか? 以下のような材料が出たら、円高の兆候と考えて警戒すべきだ。
- トランプ、または共和党有力議員の「関税」発言
- 米中・米欧間の通商交渉の硬直化ニュース
- 米国株がリスク回避で下落したタイミング
- 日経平均が下落する一方で円が強含んでいるとき
これらが重なった場合、“一時的な円高”が起きる公算は高い。特に為替市場は“噂で動き、事実で戻る”傾向があるため、材料が出た時点で一歩早く動けるかがカギになる。
この章のポイントは、
「為替はロジックで動くけれど、スピードは感情で決まる」
ということ。
トランプの関税政策は、その“感情”のトリガーを何度も引いてくる。だからこそ、個人投資家はただニュースを追うだけではなく、その背後にある心理の流れを読み解く必要があるのだ。
STEP3:円高が日本株を直撃? 為替と株価の意外な関係性
「円高が進むと、日経平均が下がる」——そんな言葉を聞いたことがある人も多いだろう。だが実際にその理由をきちんと説明できる人は案外少ない。これは単なる“連動”ではなく、日本経済の構造と企業の収益モデルに深く根ざした現象だ。
この章では、円高がなぜ日本株にとって逆風になるのか、どの銘柄が影響を受けやすいのか、そして投資家がどう行動すべきかを掘り下げていこう。
円高は“輸出企業の敵” ― 収益が為替で削られる構造
まず基本の仕組みからおさらいしよう。
たとえば、トヨタが1ドル=120円のときにアメリカで1台30,000ドルの車を売ったとする。円換算すると360万円の売上になる。ところが、円高が進み1ドル=100円になった場合、同じ車を売っても円換算で300万円にしかならない。為替だけで収益が約60万円削られるのだ。
つまり、ドル建てで売上が変わらなくても、円高によって「見かけの利益」が減ってしまう。これが、輸出比率の高い日本企業が“円高を嫌う”理由だ。
円高=株安という「見えない連動」
この構造から、為替と株価の間に「自然な連動性」が生まれる。実際、ドル円が1円動くごとに、日経平均が100円以上動くことも珍しくない。もちろんこれが常に当てはまるわけではないが、短期的には非常に強い相関関係がある。
・円高 → 輸出企業の業績悪化 → 株価下落 → 日経平均も連動して下がる
・円安 → 輸出企業の業績改善 → 株価上昇 → 日経平均も上がる
この連動があるからこそ、為替相場は株式市場にとって“最重要の外部要因”とされるのだ。
セクター別に見る“円高ショック”の影響度
ただし、「全部の株が円高で下がる」わけではない。ここが重要なポイントだ。業種やビジネスモデルによって、為替の影響度は大きく異なる。
円高の影響を受けやすい業種(要警戒):
- 自動車(トヨタ、ホンダなど)
- 電機・精密機器(ソニー、キャノン、キーエンス)
- 化学・鉄鋼・輸送用機器
これらは売上の多くが海外依存で、かつ為替の影響を受けやすい。
逆に、円高でも強い業種(注目):
- 内需系(小売、外食、医薬品)
- インフラ・通信(NTT、KDDIなど)
- 一部のREIT(為替影響が少なく安定志向)
このように、“為替に強い銘柄”に資金を逃がすのは、円高局面のひとつの防衛戦略になる。
「円高+株安」のWパンチにどう対応するか?
円高が進むと、多くの輸出企業が“下方修正”に追い込まれる。そのたびに株価が調整し、マーケットは一時的な混乱に陥る。
たとえば、2016年の“ブレグジットショック”時。ポンド急落の影響で世界的にリスクオフとなり、ドル円は106円台から99円台まで急落。円高を嫌気してトヨタ、マツダ、ソニーといった代表的な輸出銘柄が軒並み大きく下げた。
この時、内需株や食品株の値動きは比較的穏やかで、「資金の逃げ場」としての役割を果たしていた。
円高=チャンス? 空売り・業種ローテーションという逆張り発想
ここまで読むと、「円高=悪」のように感じられるかもしれないが、相場の世界では“逆を突く”戦略もある。
たとえば、明らかに為替に弱い銘柄が過剰に売られたタイミングで「空売り」や「業種ローテーション」を活用する手もある。
- 空売り戦略: 円高ニュース直後に、短期的に輸出株を売って利益を狙う
- 業種ローテ: 円高に強いセクター(通信、医薬、内需)に資金を振り替える
- ETF活用: 為替に強弱が分かれるETF(TOPIX vs 日経平均など)でバランスを取る
特に短期トレーダーにとっては、“円高ショック”は実は“絶好のボラティリティ”とも言える。
株は“期待の塊”——だから為替だけで判断しない
とはいえ、為替と株の関係には“例外”もある。たとえば「円高なのに株価が上がる」という局面が稀に存在する。その代表例が「円高+景気回復」のコンボだ。
これは、海外経済が好調で、日本の輸出企業も業績が改善するような場合に見られる。つまり、円高でも「世界の需要」が伸びれば、企業収益は維持できるのだ。
だからこそ、為替だけで株の判断を下すのではなく、「為替+景気+企業決算」の3つをセットで見る視点が重要になる。
まとめ:円高は怖くない、“構造”が分かれば味方になる
結局のところ、円高そのものが敵なのではない。問題は、「それがどの企業・どの業種にどう効くのか」を理解していないことだ。
一歩深く掘り下げれば、「円高ショック」はチャンスの宝庫でもある。
慌てて手放す前に、「構造で理解する」。
この目線こそが、個人投資家が市場で生き残るための最大の武器になる。
STEP4:投資家はどう動く? 円高局面での“防衛”と“攻め”のポジション略
円高。
それは多くの個人投資家にとって、“なんとなく嫌なニュース”だ。
でも本当に怖いのは、「何が起きるかわからない」ことよりも、「どう対応すればいいのか分からない」ことではないだろうか。
実際、円高局面にも勝ち筋はある。
この章では、「守る」と「攻める」、2つの戦い方を整理していこう。
状況に応じた柔軟なポジショニングができれば、円高相場はピンチではなく“収益機会”に変わる。
守りの戦略①:「為替ヘッジ」は投資家の防弾チョッキ
まずは“守り”から。最も基本的かつ有効な手段は、「為替ヘッジ」だ。
たとえば、米国株や海外ETFを保有している場合、円高になると円換算の評価額が減ってしまう。そこで、為替ヘッジ付き商品を選んでおくことで、為替変動のリスクだけを切り離すことができる。
- 為替ヘッジ付きETF(例:ヘッジ付きS&P500連動型)
- 外貨建て資産に対して為替予約(FXを使った簡易ヘッジも可)
- 米ドルMMFや外貨預金の一部を円転しておく
「円高時は、資産評価が下がるのが怖くて何も動けない…」という投資家は、まずこの“防弾チョッキ”を装着するだけで、かなり安心感が違うはずだ。
守りの戦略②:円高メリット銘柄を押さえておく
円高でも“得をする”企業はある。むしろ、為替が円高になったことで仕入れコストが下がり、利益が増える企業だ。
代表例は以下のようなセクター:
- 輸入型ビジネス(商社、小売、エネルギー)
→ 原材料を海外から仕入れる企業はコスト削減メリット大 - 国内消費主導型企業(外食、ドラッグストア、内需系小売)
→ 為替変動にあまり左右されず、業績が安定 - 旅行・航空関連(JAL、ANAなど)
→ 海外コストが下がり、インバウンド需要回復との相乗効果あり
あらかじめポートフォリオに“円高メリット株”を含めておけば、円高局面でのダメージヘッジにも、逆張りのチャンスにもなる。
攻めの戦略①:FXで「円買いポジション」を狙う
ここからは“攻め”の戦略。
円高が進行するというシナリオを描けるのであれば、FXでの“円買い”は王道の戦い方だ。
例:
- ドル/円(USD/JPY)でショート=ドル売り・円買い
- ユーロ/円でショート、ポンド/円でショートなど
注意点は、「短期で動く」「レバレッジをかけすぎない」こと。
トランプの発言1つで相場が急変する今の時代、リスク管理が甘いとすぐに“焼かれる”。
勝てるポイントは、
- トランプ発言→米株下落→円買いの流れが出た瞬間
- 世界の株式指数(S&P500、DAXなど)が大きく下落しているとき
こうした局面で「仕掛ける」「逃げる」のタイミングを見極められるかが、FX戦略の分かれ道だ。
攻めの戦略②:短期逆張りで“割安株”を拾う
円高で輸出株が急落した時、その下げは「実態以上の悲観」によることが多い。
この“オーバーシュート”を狙って拾いにいくのが、短期逆張り戦略だ。
たとえば、円高報道が出て、トヨタやソニーが5〜7%下げた場合、そこにはすでに「恐れすぎた価格」が織り込まれていることも多い。
もちろん、ファンダメンタルズを無視した買いは危険だが、以下のような“仕込み条件”が揃えば、逆張りチャンスとしては有効だ。
- 直近の決算が好調(円高を織り込んでいても業績堅調)
- 大口の出来高(“売らされている”動き)が目立つ
- 株価が急落→急反発を複数回繰り返している(セリングクライマックスの兆候)
攻めと守りの“両立”が最強の戦略
最終的には、**「守りながら攻める」**ことが最も安定した投資成果につながる。
たとえば、
- 外貨建て資産に為替ヘッジをかけつつ、FXで短期の円買いを仕掛ける
- 輸出株を一部利確し、円高メリット株へ資金をシフト
- 株式で守りを固め、円高ショック時はETFやCFDで攻める
一方向に賭けない。常に複数の選択肢を持っておく。
この“両利き思考”こそが、激動の為替相場に対応する最大の武器となる。
まとめ:円高を「嫌う」か「利用する」かはあなた次第
相場にとって、「上がる」「下がる」はどちらもチャンスだ。
だが、情報の渦に飲まれて立ち尽くすか、準備して飛び込むかで、結果は真逆になる。
円高は脅威ではない。
それは、予測不能な時代を生きる投資家たちに与えられた“シナリオのひとつ”にすぎないのだ。
「円高=ピンチ」と刷り込まれた先入観を脱ぎ捨て、
今度は、“使える武器”として円高をポケットに忍ばせておこう。
STEP5:ドル依存からの脱却? 分散投資とリスクヘッジの再構築
「ドルにさえ突っ込んでおけばなんとかなる」
数年前まで、そんな感覚で投資をしていた人も多いだろう。
米国株は右肩上がり、ドルは世界の基軸通貨、成長も堅調。
まさにドルは“絶対王者”だった。
しかし今、状況は変わりつつある。
トランプ再登場の気配、米財政赤字の膨張、利下げ観測の高まり——
この“ドルの不安定化”が、円高の背景とも連動している。
だからこそ今、投資家に問われているのは「ドルから逃げろ」ではなく、
「ドルに偏りすぎた資産設計を見直せるか」 という視点だ。
ドル一極集中は、もはや“リスク”である
ここまでに述べたように、米国の政治・経済は、トランプ要因だけでなく根本的な変化にさらされている。
- 財政赤字と国債発行の増加
- 利下げ観測により金利低下=ドル安圧力
- 米中摩擦による世界経済の不確実性
これらはすべて、「ドルが売られやすくなる」要因だ。
しかもその動きは、過去のように「じわじわ」ではなく、“イベントドリブン”で急変するリスクがある。
この状況下で、ポートフォリオの6〜7割をドル資産に依存している投資家は、少し立ち止まって考えるべきだろう。
リスクを“薄める”という発想:通貨分散の重要性
資産運用において、最も基本でありながら忘れられがちなのが「通貨の分散」だ。
株や債券だけでなく、「どの通貨で持つか」 も立派なリスク管理になる。
たとえば:
- 日本円: 安全資産・生活通貨としての安定性
- 米ドル: 世界最大の流動性・株式投資のベース
- ユーロ: ドルとの対比で中立的立場をとれる通貨
- 豪ドル/カナダドル: 資源国通貨としてインフレ耐性を持つ
- シンガポールドル/スイスフラン: 政治安定+信用通貨として人気上昇中
もちろん、すべてに分散する必要はない。
だが「すべてがドル」になっていないか?
「為替変動に対応する現金ポジションは十分か?」
を定期的にチェックするクセを持つだけで、守備力は大きく変わる。
“外貨=ドル”の時代は終わる? 世界は多極化へ
ここで少し長期視点の話をしよう。
地政学の変化、米国の影響力の低下、新興国の台頭。
これらが示しているのは、**「世界経済が多極化していく」**という現実だ。
つまり、これからの世界では
- 米国主導の金融相場に乗る(米ドル)
- ユーロ圏の金融政策にも敏感になる(ユーロ)
- アジア経済の成長を拾う(人民元、シンガポールドル)
というように、複数の経済軸に対してアンテナを張る必要が出てくる。
「どこの通貨が強いか?」ではなく、
**「どこの通貨が“自分の戦略に合うか?”」**を考える時代に入っているのだ。
「守りながら増やす」ポートフォリオ再設計術
では、実際にどう資産を分散すればいいのか?
一例として、現時点で考えられる“円高耐性×分散投資”のモデルケースを挙げてみよう。
資産タイプ | 割合 | ポイント |
---|---|---|
円建て現金・預金 | 20% | 為替リスク回避+下落時の買い余力に備える |
為替ヘッジ付き外国株ETF | 20% | 為替リスクを抑えてグローバル成長に投資 |
海外株(無ヘッジ) | 25% | 長期目線でドル資産を持つならボラティリティも受容 |
国内株(円高メリット株中心) | 15% | 為替変動に強いセクターで安定感をキープ |
コモディティ・金 | 10% | 有事の備え、通貨不安定時のリスク分散 |
オルタナティブ(REIT・債券など) | 10% | 通貨リスクが少ない資産で分散と安定性を両立 |
※投資スタイルや年齢、リスク許容度によって調整が必要です
大切なのは、「全部を守りに回す」のではなく、“逃げ場”と“攻め場”を共存させる構造をつくること。
それが円高リスクを含む相場でも、“投資を止めずに走り続ける”ための地図になる。
円高をきっかけに「自分の投資の型」を見直す
為替リスクは読めない。
トランプが再登場するのか、関税が本当に実施されるのかもわからない。
でも、自分の資産の偏りには、今すぐ向き合える。
ドルへの過信、為替変動への鈍感さを一度見直すだけで、次の局面での選択肢が大きく広がる。
円高というシグナルは、単なるマーケットイベントではなく、
**「自分の投資をアップデートするタイミングだよ」**というメッセージかもしれない。
以上がSTEP5の本文です。
全体のトーン、分散投資の視点、個人投資家目線の実用性など、いかがでしたでしょうか?
STEP6:情報戦を制す者が相場を制す ― 使える情報源とチェックすべき指標
相場で生き残るには、「早耳」であることが最大の武器だ。
とくに円高のような“イベント連動型”の為替変動は、いかに速く気づき、動けるかがすべてを左右する。
でも、ネットには情報が溢れすぎている。
テレビ、SNS、ニュースアプリ、YouTube、証券会社レポート…どれを信じ、何を見ればいいのか?
この章では、トランプ関税→円高といった「政策起点の相場変動」に備えるために、本当に使える情報源と見るべき指標をまとめておこう。
「ファクト」と「ノイズ」を見極める3つの視点
まず、情報を受け取るうえでの基本原則を押さえておこう。
- 誰が言っているか?(発信元の信頼性)
- なぜ今それを言うのか?(発言の意図・タイミング)
- 市場がどう反応したか?(“言葉”より“値動き”を信じる)
トランプのような“言葉で市場を動かす人”の情報は、とくにこの3点を念頭に置いて精査する必要がある。
トランプ発言を追うなら、ここを見ろ!
まずは“トリガー”となるトランプ関連の情報収集ルートから。
- Truth Social(旧Twitter的存在)
→ トランプ本人の発言が最速で出る場所。口先介入に注意。 - FOX NEWS / Newsmax
→ 保守系メディア。トランプ寄りの論調だが、政策の“匂い”を早めに掴める。 - Reuters / Bloomberg / WSJ(英語)
→ 大統領選絡みの政策変更、関税の具体案、外交交渉の進展はここが最速で網羅。
日系メディアよりも、一次情報に近いソースを見ておくと、他よりも一歩早く動ける可能性が高い。
為替が動き出す“前兆”になる経済指標たち
次に、円高に傾くかどうかを事前に察知するために注目すべき指標を紹介しよう。
- 米国・中国の貿易統計/経常収支
→ トランプ関税によってどれだけ貿易が歪んでいるかを示すバロメーター。 - 米国のISM製造業指数
→ 景気後退の予兆が出ると“ドル売り→円買い”の流れに。 - 米国10年国債利回り
→ 利回りが下がれば、ドル安(=円高)トレンドが強まりやすい。 - 日銀・FRBの金融政策発表
→ 金利差の動きが、円安→円高に切り替わるスイッチになる。
加えて、「VIX指数(恐怖指数)」が急騰した時は要警戒。
これは市場の不安心理を示す指標で、リスクオフ=円買いのトリガーになることが多い。
ニュースを“見てるだけ”では意味がない——行動に落とす情報活用法
重要なのは、情報を「見た」あとにどう動くかだ。
たとえば:
- トランプが“関税を検討中”と発言 → ドル円が反応 → FXで円買いエントリー検討
- 米中関係悪化報道 → 米株先物が下落 → 日経平均の寄付き前にポジション調整
- 米金利急低下 → ドル安トレンド示唆 → 為替ヘッジ付き商品への資金シフト
こうした“情報→行動”のパターンを自分の中に持っておくこと。
これが“情報を制す”ということの本当の意味だ。
情報ソースまとめ:日々見るべき“5つの基地”
毎朝5〜10分でチェックできる情報源を以下に整理しておく。
このルーティンだけでも、相場の「空気」が一気に読めるようになるはずだ。
種類 | おすすめソース | ポイント |
---|---|---|
政治動向 | Reuters / Bloomberg / NewsPicks | トランプ発言・米政策の方向感をキャッチ |
為替・指標 | Investing.com / TradingView | 米金利・ドル円チャート・指標速報がリアルタイムで見られる |
日本株 | 日経電子版 / kabutan / Fisco | 個別銘柄の動き・先物・業種別パフォーマンスなどがわかる |
SNS速報性 | X(旧Twitter)「ドル円」「関税」検索 | 動きが出た瞬間のリアルタイム反応を把握できる |
マーケット全体 | CNBC / Bloomberg TV(英語音声も可) | 世界の株・債券・為替の動きが30分でわかる |
最後に:情報リテラシーは、投資家にとって“第2の通貨”
「情報の扱い方=資産運用のスキル」
といっても、決して大げさではない。
相場はニュースで動く。
だが、全員が同じニュースを見ていても、行動は大きく分かれる。
その差を生むのは、「情報をどう料理するか」だ。
見て、読み解いて、動く。
この3つを磨いていけば、たとえトランプが再び口火を切っても、
あなたは“最初の1人”として相場を制するポジションに立てるはずだ。
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