結論:2026年12月の年末調整では、所得税の基礎控除・給与所得控除などの改正を反映して、1年分の税額を計算し直します。高市首相は2026年中の所得税負担軽減を納税者1人あたり3万~6万円程度と説明していますが、全員にその額が現金で戻る制度ではありません。実際に還付されるか、いくらになるかは、年間所得、扶養・保険料控除、毎月の源泉徴収額などで異なります。
また、10月9日に臨時国会へ提出された食料品の消費税率引下げ法案とは別の制度です。年末調整の改正は第221回国会で成立した2026年度税制改正に基づき、食料品減税法案は第222回臨時国会で審議される段階です。2026年10月12日時点の国税庁・衆議院・首相官邸資料で、家計に関係する点を整理します。
「1人3万~6万円」は還付保証額ではない
首相官邸は、2026年12月の年末調整で納税者1人あたり3万~6万円の所得税負担軽減があるとの見通しを示しています。この数字は政府側が説明した目安で、個人ごとの還付額を保証するものではありません。
年末調整では、会社が1年間の給与と控除を基に所得税額を計算し、すでに給与から引かれた源泉徴収税額と比べます。引かれ過ぎていれば差額が還付され、足りなければ追加で徴収されます。したがって「減税がある=全員に3万~6万円が振り込まれる」とは限りません。還付が給与に反映される月も、勤務先の年末調整・給与支給の運用によって異なります。
2026年12月から反映される所得税の変更点
所得税法等の一部を改正する法律は、2026年3月31日に成立・公布されました。国税庁によると、主な変更は基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の見直しです。
- 基礎控除の基本額は、合計所得金額2,350万円以下の場合、58万円から62万円に引き上げ。
- 給与所得控除の最低保障額は、65万円から69万円に引き上げ。所得の低い層には時限的な加算があり、条件により最低保障額は合計74万円になります。
- 基礎控除は所得に応じた特例加算があり、2026年分は要件を満たす人の控除額が最大104万円です。
| 給与年収の例 | 給与所得控除後の所得目安 | 2026年分の基礎控除 | 改正前の額 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約202万円 | 88万円 | 88万円 |
| 600万円 | 約436万円 | 68万円 | 68万円 |
| 給与収入が約206万円以下 | 合計所得132万円以下 | 104万円 | 95万円 |
| 給与収入約665万5,556円超~850万円以下 | 合計所得489万円超~655万円以下 | 67万円 | 63万円 |
2026年度改正による基礎控除額は所得区分で異なります。300万円・600万円の例では、基礎控除そのものは改正前と同額です。還付額には、2026年分の控除全体、毎月の源泉徴収、扶養や保険料などが関係するため、控除額の増加分をそのまま還付額と考えないでください。
改正は原則2026年12月1日に施行され、2026年分所得税から適用されます。国税庁は、11月までの源泉徴収事務には変更がなく、12月の年末調整で年間税額を調整すると案内しています。
年収300万円・600万円ならいくら戻る?条件付き試算
「自分の場合はいくらか」を考える目安として、国税庁の令和8年分の税額表と控除額を使った概算を示します。どちらも給与のみ、単身、扶養親族なし、賞与なし、年間を通じて月給一定と仮定し、協会けんぽ東京支部の保険料率などから社会保険料を300万円で約45.7万円、600万円で約88.0万円として計算しました。月々の源泉徴収額は、社会保険料控除後の給与を国税庁の令和8年分月額表に当てはめています。
| 給与年収 | 月給の仮定 | 年間源泉徴収の概算 | 年税額の概算 | 還付試算 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 25万円 | 約5万7,200円 | 約3万4,800円 | 約2万2,400円 |
| 600万円 | 50万円 | 約21万4,300円 | 約18万6,200円 | 約2万8,100円 |
自分の還付額を概算するには、年収だけでは足りません。源泉徴収された所得税、社会保険料、扶養、保険料控除などを確認し、年間の税額と差額を比べます。まず次の数字を給与明細や控除証明書から集めます。
| 確認する数字 | 確認先 | 計算に使う理由 |
|---|---|---|
| 1〜12月の給与・賞与の総額 | 給与明細、賞与明細 | 年間の給与所得を計算するため |
| 給与・賞与から天引きされた所得税の合計 | 各月の給与明細 | 年税額と比べる「すでに納めた額」になるため |
| 社会保険料、生命保険料、地震保険料など | 給与明細、保険会社の控除証明書 | 課税対象となる所得や控除額を計算するため |
| 配偶者・扶養親族の年末時点の状況と所得見込み | 家族の収入見込み、勤務先の申告書 | 扶養・配偶者・特定親族の控除判定に使うため |
| 住宅ローン控除額(年末調整の対象となる場合) | 金融機関の年末残高証明書、控除申告書 | 年税額から差し引く税額控除を反映するため |
基本的な見方は年間の源泉徴収税額 − 年末調整後の年税額です。プラスなら還付、マイナスなら追加徴収の目安になります。ただし、税額表の端数処理や適用できる控除の判定があるため、最終額は勤務先が計算した年末調整結果で確認してください。給与明細がそろっていない段階では、年収だけから還付額を断定できません。
これは説明用のモデル計算で、国税庁が示す個人別の還付額ではありません。賞与、月ごとの給与変動、扶養家族、生命保険料控除、住宅ローン控除、勤務先の源泉徴収方法、健康保険の種類や地域で結果は変わります。毎月の天引きが少なければ、改正後でも還付が小さい、または追加徴収となる場合があります。正確な金額は勤務先の年末調整結果で確認してください。
対象者と、年末調整で確認する書類
会社員など給与を受ける人は、まず勤務先から案内される提出期限を確認します。国税庁の令和8年分の様式では、基礎控除申告書などが前年から変更されており、基礎控除を受けるには申告書の提出が必要です。
- 年間の給与収入と、給与以外の所得がある場合の所得見込み。
- 配偶者・扶養親族・19歳以上23歳未満の親族などの所得見込みと年末時点の状況。
- 給与天引きではない生命保険料、地震保険料、社会保険料などの控除証明。
複数の勤務先から給与を受けている場合や、年末調整の対象にならない場合は、確定申告が必要になることがあります。年末調整の対象かどうか、提出が必要な書類は勤務先と国税庁の案内で確認してください。申告書を提出し忘れた場合も、会社へ早めに相談しましょう。
食料品の消費税1%法案とは別の支援
臨時国会の所信表明で首相が触れた「今年の年末調整」の所得税負担軽減は、3月に成立した2026年度税制改正に基づくものです。一方、政府は10月9日に、飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間1%にする法案を第222回臨時国会へ提出しました。こちらは10月12日時点で成立していません。
このため、2026年の年末調整で食料品の消費税が返金されたり、2026年の買い物に減税が適用されたりするわけではありません。年末調整は所得税の年間精算、食料品減税は成立した場合に将来の購入税率を変更する案です。報道やSNSで「年末に3万~6万円が戻る」と見かけても、個人の還付確定額とは分けて考えてください。
よくある質問
年末調整で3万~6万円が必ず戻りますか?
いいえ。首相が示したのは納税者1人あたりの負担軽減の目安です。年末調整では過不足を精算するため、還付額は個人の税額と源泉徴収額によって決まります。
11月の給料から所得税が少なくなりますか?
国税庁は、今回の改正による源泉徴収事務の変更は2026年12月以後で、11月までの源泉徴収事務に変更はないと案内しています。
自分で税務署に申請すれば還付されますか?
通常の給与所得者は勤務先で年末調整を受けます。基礎控除申告書など、勤務先から求められた書類を期限までに提出してください。年末調整の対象外の場合や申告漏れがある場合は、勤務先または税務署に相談し、確定申告が必要か確認します。
食料品の消費税減税と同じですか?
別の制度です。年末調整は2026年分の所得税を精算するもので、食料品の税率引下げは臨時国会で提出された将来の消費税法案です。成立前のため、実施は確定していません。
参考文献
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」(施行日、年末調整への反映時期、控除の変更)
- 国税庁「令和8年度税制改正による源泉徴収事務の変更の概要」(基礎控除等の所得区分別金額)
- 国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」(毎月の源泉徴収額の試算に使用)
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」(年税額の概算に使用)
- 全国健康保険協会 東京支部「令和8年度保険料率のお知らせ」、厚生労働省「令和8年度雇用保険料率」(試算上の社会保険料率)
- 国税庁「令和8年分年末調整のしかた」(申告書、過不足額の精算、還付の方法)
- 衆議院「所得税法等の一部を改正する法律案(第221回国会)」(審議経過、2026年3月31日公布)
- 首相官邸「第222回国会における高市内閣総理大臣所信表明演説」(今年の年末調整における負担軽減の説明)
- 首相官邸「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置及び物価高対策等についての会見」(納税者1人あたり3万~6万円という政府説明)
- 内閣官房「社会保障国民会議」(消費税・支援金法案が2026年10月9日に臨時国会へ提出された事実)
- 税理士法人日本経営「令和8年度の年末調整」(2026年10月1日、改正点の専門家解説)
確認時点:2026年10月12日。年末調整の実施月や還付方法、社内提出期限は勤務先によって異なります。個別の税額は国税庁の案内または勤務先・税理士に確認してください。
