先に結論:会社員の「20万円」は副業の売上ではなく所得
年末調整を受けた会社員でも、副業など給与以外の所得が一定額を超えると、所得税の確定申告が必要です。よく知られる「20万円」は、原則として副業の売上そのものではなく、収入から必要経費を差し引いた所得の基準です。ただし、20万円以下なら誰でも申告不要という意味ではありません。給与の状況や他の所得、医療費控除などで申告する場合によって扱いが変わります。
確認日:2026年10月13日。この記事は一般的な制度の整理です。個別の申告義務や所得区分は収入の内容・働き方・他の所得などで異なります。迷う場合は国税庁または所轄税務署、住民税はお住まいの市区町村に確認してください。
副業の所得はいくらから確定申告が必要?
給与を1か所から受け、年末調整を受けている人は、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えるなど、一定の条件に当てはまると所得税の確定申告が必要です。給与の収入金額が2,000万円を超える場合、複数の勤務先から給与を受けている場合など、別の条件もあります。すべての人に「副業20万円ルール」が当てはまるわけではありません。
| 状況 | 確認の目安 |
|---|---|
| 年末調整済みの給与が1か所で、給与以外の所得が20万円超 | 原則、所得税の確定申告が必要。ほかの条件も確認する |
| 給与以外の所得が20万円以下 | 一定の給与所得者は所得税の確定申告が不要となる場合がある。例外と住民税は別に確認 |
| 医療費控除などを受けるため確定申告をする | 20万円以下の副業所得も含め、申告対象の所得をあわせて記載する |
| 給与が2か所以上、年末調整なし、給与収入2,000万円超など | 20万円の基準だけで判断せず、国税庁の要件を確認する |
国税庁は、年末調整済みの給与所得者でも、給与以外に20万円を超える所得がある場合などは確定申告が必要と案内しています。該当条件は国税庁「給与所得者と電子申告」、副収入の例は国税庁「給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」で確認できます。
「収入」と「所得」の違い
収入は副業で受け取った売上・報酬などの総額、所得は原則として収入から必要経費を差し引いた金額です。たとえば報酬が年間100万円で、業務に必要な経費が20万円なら、所得の計算例は100万円-20万円=80万円です。実際に経費として認められる範囲や所得区分は、取引の内容によって異なります。
給与所得者の20万円基準は、このような所得金額を確認するものです。売上が20万円を超えたかどうかだけで申告要否を決めないでください。
副業は雑所得?事業所得?本人が自由に選べるわけではない
副業の所得区分は、税負担の希望だけで自由に選べません。事業所得か雑所得かは、収入を得る活動の規模・継続性・営利性・帳簿の状況などを含め、社会通念上、事業といえる実態があるかを踏まえて判断します。副業という名前だけで雑所得と決まるわけでも、継続しているだけで事業所得になるわけでもありません。
- 事業所得:独立して継続的に行い、事業としての実態がある活動から生じる所得。要件を満たして青色申告の承認を受けると、青色申告の特典を利用できる場合がある。
- 雑所得:ほかの所得区分に当たらない所得。会社員の原稿料、講演料、単発の副収入などが該当することがある。
判断の詳細は国税庁「事業所得の意義」と国税庁「雑所得」を参照してください。
「年収300万円以下なら雑所得」と一律には決まらない
300万円は、事業所得か雑所得かを自動的に決める境界ではありません。国税庁の通達では、帳簿書類の保存がない場合の所得区分や、収入が僅少な場合・営利性が認められない場合などを踏まえた判断が示されています。帳簿を付ければ必ず事業所得になる、収入が300万円以下なら必ず雑所得になる、という単純なルールではありません。
また、業務に係る雑所得では、前々年の収入金額が300万円を超える場合、請求書・領収書などの現金預金取引等関係書類を保存する義務があります。これは記録保存のルールであり、所得区分を300万円で自動判定する制度とは別です。詳しくは国税庁「所得税基本通達の改正について」と帳簿・書類の保存案内で確認できます。
副業の所得税額は、売上だけでは計算できない
副業所得が20万円を超えても、その所得に一定の税率を掛けただけで最終税額が決まるわけではありません。給与所得、各種控除、所得区分、必要経費などを含む全体の所得状況で計算します。したがって「副業収入がいくらなら税金はいくら」と一律の金額を示すことはできません。
まずは報酬明細・入金履歴から収入を集計し、業務に直接必要だった経費の根拠書類を整理します。私用と共用する支出は、業務で使った割合を説明できる記録を残し、全額を安易に経費扱いしないようにします。
青色申告の特典を使うには、所得区分と事前手続きが必要
事業所得などについて青色申告の承認を受け、必要な帳簿・決算書類や期限などの要件を満たすと、青色申告特別控除などを受けられる場合があります。65万円控除には、複式簿記、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告に加え、原則としてe-Taxによる申告または要件を満たす電子帳簿保存が必要です。条件により控除額は異なります。
青色申告を始めるには、原則として青色申告をしようとする年の3月15日までに承認申請書を提出します。その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、開始日から2か月以内が期限です。期限や手続きは国税庁「青色申告承認申請手続」で確認してください。期限を過ぎた場合、その年分について青色申告の特典を使えないことがあります。
なお、青色申告の特典を使いたいからといって、実態に合わない事業所得を選ぶことはできません。所得区分と適用要件を分けて確認してください。
所得税の確定申告と住民税の申告は別
給与所得者の「副業所得20万円以下なら所得税の確定申告が不要」という取扱いが当てはまっても、住民税の申告まで一律に不要になるわけではありません。所得税の確定申告をしない場合に住民税の申告が必要か、どの書類を使うかは、自治体の案内で確認してください。所得税の確定申告書を提出すれば、原則としてその情報が自治体にも送られるため、通常は別の住民税申告を重ねて提出する必要はありません。具体的な扱いは市区町村へ確認しましょう。
申告前にそろえるもの
- 副業の売上・報酬が分かる支払明細、入金記録、契約書など
- 必要経費の領収書・請求書・利用明細と、業務との関係を説明できる記録
- 給与がある場合は源泉徴収票
- 控除を受ける場合は、その控除に応じた証明書類
- 事業所得として申告する場合は、帳簿や青色申告決算書・収支内訳書など必要な書類
書類の種類や保存期間は所得区分と申告方法で異なります。「支払調書がなければ申告できない」とは限らず、自分の収入・経費を証明できる記録を保管しておくことが大切です。
よくある質問
副業の売上が20万円以下なら確定申告は不要ですか?
20万円の目安は、原則として売上ではなく給与以外の所得金額です。また、給与の状況やほかの申告理由で結論が変わります。条件を確認し、住民税の申告も別に確認してください。
副業所得が20万円以下でも確定申告できますか?
医療費控除などを受けるため確定申告をする場合は、ほかの所得も含めて申告します。還付になるかどうかは所得や控除、源泉徴収額などによります。
副業が会社に知られないようにできますか?
住民税の徴収方法などが勤務先に知られるきっかけになることはありますが、申告方法だけで会社に知られないと保証することはできません。申告義務を避ける方法として「普通徴収」を案内するのは誤りです。自治体や勤務先の制度を確認し、法令に沿って申告してください。
副業で赤字なら給与の税金から差し引けますか?
損益通算できるかは、赤字が生じた所得の種類や事業の実態などによって異なります。雑所得の損失は原則として給与所得などと損益通算できません。事業所得の赤字も個別の要件を確認してください。申告前に国税庁や税務署へ相談すると確実です。
まとめ
- 会社員の20万円基準は、副業の売上ではなく原則として給与以外の所得で確認する
- 20万円以下でも、別の理由で確定申告する場合や住民税申告が必要な場合がある
- 雑所得・事業所得は自分の希望だけで選べず、活動の実態や帳簿などに基づいて判断する
- 300万円は所得区分を自動的に決める金額ではなく、書類保存のルールにも関係する
- 青色申告特別控除は、所得区分・承認手続き・帳簿・提出方法などの要件を満たす必要がある
副業収入が増えたときは、収入・経費の記録を早めに整え、税務署または自治体の最新案内で自分の条件を確認しましょう。あわせて、2026年の年末調整・還付金の確認ガイドもご覧ください。
参考にした公式情報
- 国税庁:給与所得者と電子申告
- 国税庁:給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合
- 国税庁:事業所得の意義
- 国税庁:雑所得
- 国税庁:所得税基本通達の改正について(事業所得と雑所得の区分)
- 国税庁:個人で事業を行う方の帳簿・書類保存
- 国税庁:青色申告制度
- 国税庁:青色申告承認申請手続
最終確認日:2026年10月13日。法令・申告手続きは改正されることがあります。この記事は個別の税務判断を代替するものではありません。
