結論:飲食店の納税額が一律に増えるわけではありません。店内飲食は10%のまま、対象となるテイクアウト食品や食材仕入れは1%になる政府案です。原則課税では、食材の仕入税額控除が小さくなり、納税額が増えるケースがあります。一方、簡易課税には国税庁Q&A案の計算特例があり、結果が異なります。
この記事では、飲食店の売上と仕入れを仮定した試算、原則課税と簡易課税の違い、届出の特例を整理します。制度案の確認日は2026年10月13日です。
家庭での節約額や対象品目、法案の成立状況を確認したい方は、食料品消費税1%の対象・開始時期・家計への影響もご覧ください。
飲食店の消費税1%案は成立した?
政府は2026年10月9日、飲食料品の税率を2027年4月から2年間1%にする法案を第222回臨時国会へ提出しました。10月13日時点では成立前です。国税庁のQ&Aも「法案が可決・成立した場合」の案内で、現在の店頭税率や申告方法がすでに変わったという意味ではありません。
案では、スーパーの食品や持ち帰りの弁当など、現在8%の飲食料品が1%の対象です。店内飲食や酒類は10%のままです。同じ弁当でも、持ち帰りと店内飲食で税率が異なります。
原則課税では、なぜ納税額が増える場合がある?
原則課税の納付税額は、売上にかかる消費税から、仕入れや経費にかかった控除対象の消費税を差し引いて計算します。店内飲食の売上が10%のままでも、食材の仕入れが8%から1%に下がると、差し引ける仕入税額が少なくなるため、他の条件が同じなら納付額が増えることがあります。
以下は税抜金額を使った単純なモデルです。税率は国税・地方税を合わせた表示で、店内飲食の売上800万円、持ち帰り食品の売上200万円、食材仕入れ400万円、その他の課税経費200万円とします。食材仕入れはすべて対象食品、その他経費はすべて10%で、仕入税額控除の要件を満たすと仮定します。
| 項目 | 現在の税率で試算 | 案が成立した場合 |
|---|---|---|
| 店内飲食800万円 | 売上税額80万円 | 売上税額80万円 |
| 持ち帰り食品200万円 | 売上税額16万円(8%) | 売上税額2万円(1%) |
| 食材仕入れ400万円 | 控除額32万円(8%) | 控除額4万円(1%) |
| その他経費200万円 | 控除額20万円(10%) | 控除額20万円(10%) |
| 納付額の概算 | 44万円 | 58万円 |
このモデルでは、売上税額は96万円から82万円へ減りますが、仕入税額控除も52万円から24万円へ減るため、納付額は44万円から58万円へ14万円増える計算です。テイクアウト売上の税率低下による減少分より、食材仕入れの控除減少が大きい設定だからです。
すべて店内飲食の売上が1,000万円、対象となる食材仕入れが400万円、その他経費が200万円なら、単純試算は現在48万円、案の下で76万円となり、28万円増えます。ただし、これは税抜価格と売上・仕入れ額を固定した例です。実際の納付額は売上構成、仕入れ先、経費、価格改定、控除の可否で変わります。
簡易課税は原則課税と同じ結果にならない
簡易課税は、実際の仕入税額ではなく、売上税額に業種ごとの「みなし仕入率」を掛けて仕入控除額を計算する制度です。国税庁の現行案内では、飲食店業は第4種事業・みなし仕入率60%の例に挙げられています。ただし事業区分は取引ごとの判定が原則で、店内飲食・食品販売・他のサービスを併営する店は一律に決められません。
今回の国税庁Q&A案には、簡易課税で申告する事業者が1%対象の飲食料品を販売する場合、その売上税額と同額を仕入税額として計上する特例が示されています。2割特例・3割特例を使う場合も同様とされています。したがって「食材仕入れが1%になるから、簡易課税でも必ず納付額が増える」とは言えません。
簡易課税を選択している飲食料品販売事業者については、2027年4月1日を含む課税期間中に届出をすれば、その期間から一般課税へ切り替えられる特例案もあります。通常の2年間継続適用要件を適用しない設計ですが、法案成立が前提です。制度案だけで課税方式を変更せず、売上区分、実際の仕入率、届出状況を税理士や税務署に確認してください。
店が確認するポイント
- 店内飲食、持ち帰り、酒類、食品小売の売上を分けて把握できるか
- 原則課税か簡易課税か、適用中の届出と基準期間の売上高を確認する
- 仕入れのインボイスや帳簿で税率区分を記録できるか
- 税率変更時にレジ、メニュー、持ち帰り表示、請求・会計ソフトをどう更新するか
- 価格を据え置くか、税込価格を分けるか。税率変更だけで利益や納付額を断定しない
試算を自店に当てはめるには、年間売上を税率・取引形態別に、仕入れや経費を税率別に分けて確認します。特に簡易課税の特例、事業区分、インボイス、届出期限は個別事情で結論が変わるため、法案成立後の正式な資料と専門家の確認が必要です。
よくある質問
飲食店の店内メニューも1%になりますか?
政府案では、店内飲食は10%のままです。対象となる持ち帰り食品などは1%の案ですが、法案は2026年10月13日時点で成立していません。
飲食店の納税額は必ず増えますか?
必ずではありません。原則課税では食材仕入れにかかる税が減り、控除額が小さくなって納付額が増えることがあります。一方、持ち帰り売上の税率低下や簡易課税の特例が影響します。売上構成と課税方式を分けて試算してください。
今すぐ簡易課税から一般課税へ変更すべきですか?
この記事の試算だけでは判断できません。政府案には届出の特例がありますが、法案成立が前提で、事業区分や課税期間によって手続が異なります。自店の帳簿と税理士等の確認をもとに判断してください。
参照した資料
- 内閣官房:第222回臨時国会の提出法案一覧(2026年10月9日提出)
- 国税庁:飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A案(簡易課税特例・届出特例)
- 国税庁:納付税額の計算のしかた
- 国税庁:簡易課税制度の事業区分
確認日:2026年10月13日。政府案・国税庁Q&A案を紹介しています。法案の提出は成立を意味しません。試算は税抜金額に単純に税率を掛けた概算で、実際の申告額ではありません。