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在職老齢年金制度の仕組み 働きながら年金を受け取る条件

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この記事のもくじ

この記事でわかること

Senior couple reviewing documents and managing finances together at home, showing collaboration and care.
Photo by Kampus Production on Pexels

「働きながら年金をもらうと損をする」という話を聞いたことはありませんか?60代以降も会社で働き続けている方や、再雇用・パートで収入を得ている方にとって、在職老齢年金制度(ざいしょくろうれいねんきんせいど)は避けて通れない重要なテーマです。

この記事では、在職老齢年金の仕組みと計算方法、年金が減額・支給停止になる条件、そして手続きの方法まで、40〜70代の方が知っておくべき情報をすべて網羅して解説します。

  • 在職老齢年金とは何か、誰が対象になるか
  • 年金が減額・停止される「基準額(50万円)」の意味
  • 会社員・自営業・海外居住など、ケース別の扱いの違い
  • 繰り上げ・繰り下げ受給との組み合わせ方
  • 必要書類と届出先・手続きの注意点

先に結論

Elderly couple reviewing financial documents together at home in Portugal.
Photo by Kampus Production on Pexels

在職老齢年金制度のポイントを先に整理します。

  • 対象者:厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取っている60歳以上の人
  • 減額の仕組み:「総報酬月額相当額(給与+賞与の月換算)」+「基本月額(年金の月額)」が50万円(2024年度の基準額)を超えると、超えた分の半額が年金から差し引かれる
  • 支給停止の条件:超過額が年金月額の2倍を上回ると年金全額が支給停止になる場合がある
  • 自営業者・国民年金のみの人には適用されない
  • 手続き:原則として年金事務所または日本年金機構への届出が必要。収入が変わるたびに確認が必要

「基準額を超えたから働くのをやめよう」と短絡的に考える前に、制度の全体像を正しく理解することが大切です。以下で詳しく解説します。

対象となる人

Elderly men in traditional attire participate in a cultural parade during a sunny day in Tokyo.
Photo by Iban Lopez Luna on Pexels

在職老齢年金制度が適用される人・されない人を正確に把握しておきましょう。制度の対象は「厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受給している人」に限られます。

区分 在職老齢年金の対象 主な年金の種類 備考
会社員・再雇用者(60〜64歳) ◎ 対象 老齢厚生年金(特別支給含む) 基準額:50万円(2024年度)
会社員・再雇用者(65歳以上) ◎ 対象 老齢厚生年金+老齢基礎年金 基準額:50万円(2024年度)
自営業者・フリーランス ✕ 対象外 老齢基礎年金のみ 厚生年金未加入のため減額なし
パート・アルバイト(厚生年金加入) ◎ 対象 老齢厚生年金 週20時間以上・月収88,000円以上等の条件で加入義務あり
パート・アルバイト(厚生年金未加入) ✕ 対象外 老齢基礎年金のみ 収入が多くても年金は減額されない
海外居住者 △ 条件による 老齢厚生年金 日本の厚生年金に引き続き加入している場合は対象
扶養に入っている配偶者 ✕ 本人への直接適用なし 自身が年金受給者でなければ関係なし
繰り下げ受給を選択中の人 △ 受給開始後に対象 老齢厚生年金 繰り下げ中は年金未受給のため適用なし。受給開始後は対象
繰り上げ受給を選択した人 ◎ 対象 老齢厚生年金(減額済み) 年金額が減額された状態でさらに在職老齢年金が適用される

※2024年(令和6年)度の基準額は50万円です。毎年度改定されるため、最新情報は日本年金機構公式サイト(https://www.nenkin.go.jp/)でご確認ください。

制度・手続きの概要

Close-up of elderly hands holding and counting coins, captured in black and white for a timeless feel.
Photo by – landsmann – on Pexels

在職老齢年金の計算方法

年金が減額されるかどうかは、次の2つの合計額で判定します。

  • 基本月額:受け取る老齢厚生年金の月額(加給年金額を除く)
  • 総報酬月額相当額:その月の標準報酬月額(給与の月額)+直近1年間の標準賞与額の合計÷12

この2つを合算した金額が50万円(2024年度)を超えた場合、超えた分の2分の1が年金から差し引かれます。

具体的な計算例

ケース 基本月額 総報酬月額相当額 合計 超過額 支給停止額(月) 実際の年金受給額(月)
Aさん(67歳) 15万円 30万円 45万円 0円 0円 15万円(全額受給)
Bさん(65歳) 15万円 40万円 55万円 5万円 2.5万円 12.5万円
Cさん(63歳) 10万円 60万円 70万円 20万円 10万円(全額停止) 0円(停止額が基本月額と同額のため全額停止)

手続きの基本フロー

  1. 老齢年金の請求書を年金事務所に提出(65歳到達時または請求時)
  2. 在職中は毎年9月に「算定基礎届(さんていきそとどけ)」を事業主が提出→標準報酬月額が更新される
  3. 給与や賞与が大きく変わった場合は「月額変更届(げっがくへんこうとどけ)」を随時提出
  4. 退職・転職・収入減少などで支給停止が解除になる場合は年金事務所に申し出る

基本的に在職中の標準報酬月額の更新は事業主(会社)が手続きを行うため、従業員本人が個別に申請する場面は少ないですが、退職後や状況変化時は自分で動く必要があります。

必要書類と確認先

老齢年金の受給開始手続き(初回請求)に必要な書類

  • 老齢給付裁定請求書(ねんきんネットまたは年金事務所で入手)
  • 年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 戸籍謄本または戸籍抄本(生年月日確認のため)
  • 住民票(マイナンバー記載のもの、または世帯全員分)
  • 預金通帳またはキャッシュカード(振込先口座確認のため)
  • 雇用保険被保険者証(60〜64歳で特別支給の老齢厚生年金を請求する場合)
  • 在職証明書または給与明細(在職老齢年金の計算に必要な場合)
  • マイナンバーカードまたはマイナンバー確認書類

支給停止解除の届出・退職後の手続きに必要な書類

  • 老齢給付支給停止解除申請書
  • 退職(解雇)証明書または離職票
  • 年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証等)

手続き期限と注意点

  • 初回の年金請求:受給開始年齢到達後、できるだけ早めに手続きをする(遡及(そきゅう)請求は原則5年が時効)
  • 退職後の支給停止解除:退職した翌月分から年金が全額支給されるが、申請が遅れると受け取り開始も遅れる
  • 給与変動時:固定的賃金が2等級以上変動した場合は月額変更届を事業主が速やかに提出する義務がある
  • 毎年の現況届(げんきょうとどけ):現在は原則不要(マイナンバー連携により廃止)だが、一部の方は提出が必要な場合がある

確認先・手続き窓口

ケース別の注意点

ケース①:65歳以降も正社員として在職する会社員

65歳以降は「老齢厚生年金」と「老齢基礎年金」の両方を受給できますが、厚生年金に加入している限り在職老齢年金の対象となります。基準額(50万円)は2022年の改正で60〜64歳と65歳以上が統一されたため、年齢による差はなくなりました。給与が高い役職者・管理職の場合、年金が大幅に減額される可能性があるため、退職時期や報酬設定を会社と相談することが重要です。

ケース②:自営業・フリーランス・国民年金のみ加入の人

厚生年金に加入していない自営業者やフリーランスは、在職老齢年金制度の適用外です。どれだけ収入が多くても、老齢基礎年金は全額受け取れます。ただし、老齢基礎年金の額は支払った保険料の期間で決まるため、収入ではなく納付記録を確認することが大切です。ねんきんネットで自分の納付記録をいつでも確認できます。

ケース③:繰り上げ受給・繰り下げ受給を選択した人

繰り上げ受給(くりあげじゅきゅう):60〜64歳に受給開始した場合、年金額は最大24%減額(1か月あたり0.4%減)されます。さらに在職老齢年金により追加で減額される可能性があり、二重に不利になるリスクがあります。繰り上げと在職を同時に選択する場合は慎重な試算が必要です。

繰り下げ受給(くりさげじゅきゅう):66歳以降に受給開始した場合、年金を受け取るまでは在職老齢年金の適用がないため、高収入でも年金が減額される心配はありません。ただし、繰り下げ中に受け取れる年金がゼロになるリスクも考慮が必要です。長寿であるほど繰り下げが有利になります。

ケース④:海外在住・海外企業勤務の人

海外に居住していても、日本の厚生年金保険に任意加入または継続加入している場合は、在職老齢年金の適用対象となります。一方、外国の社会保障制度にのみ加入している場合は対象外です。社会保障協定(しゃかいほしょうきょうてい)を結んでいる国(アメリカ・ドイツ・韓国等)では二重加入が免除される場合があるため、年金相談センターへの確認が必須です。

ケース⑤:配偶者の扶養に入りながらパートで働く人

配偶者の扶養(第3号被保険者)に入りながらパートで働く場合、自身が厚生年金に加入しているかどうかで扱いが変わります。2022年の法改正により、従業員101人以上の企業では週20時間以上・月収88,000円以上等の条件で厚生年金加入が義務化されています(2024年10月からは51人以上の企業に拡大)。加入後に老齢年金も受給している場合は在職老齢年金の対象となります。

今日やること3つ

  1. 【ねんきんネットで自分の年金見込み額と標準報酬月額を確認する】
    ねんきんネット(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)にアクセスし、基礎年金番号またはマイナンバーでログイン。「年金見込み額試算」機能を使って、現在の収入条件での実際の受給額を確認しましょう。
  2. 【自分の「基本月額+総報酬月額相当額」を計算して基準額と比べる】
    直近の給与明細と賞与明細を用意し、総報酬月額相当額を計算してください。老齢厚生年金の月額と合算して50万円(2024年度基準)と比較することで、年金が減額されるかどうかを自分で判断できます。計算が難しい場合は年金事務所の窓口で一緒に確認してもらうことも可能です。
  3. 【年金相談センターまたは年金事務所に電話・来所予約を入れる】
    計算結果に疑問がある場合や、退職・転職を検討中の場合は専門家に相談するのが確実です。年金相談センター(https://www.nenkin.go.jp/section/soudan/)または最寄りの年金事務所に予約を入れて、現在の状況を整理した上で相談に臨みましょう。

よくある誤解

誤解①「年金が減額されるなら、働くだけ損だ」

多くの方が「年金が削られるなら働かない方がいい」と考えますが、これは大きな誤解です。在職老齢年金で削られるのは年金の一部または全部であり、給与収入は別に全額受け取れます。たとえば月給30万円・年金15万円の方が年金5万円を削られても、手取り合計は40万円(30万円+10万円)となり、働かずに年金15万円だけ受け取るよりも大幅に収入は多くなります。さらに在職中に支払い続けた厚生年金保険料は退職時に再計算され、将来の年金額が増額されるメリットもあります(在職定時改定)。

誤解②「自営業でも収入が多いと年金が止まる」

在職老齢年金制度はあくまでも厚生年金加入者を対象とした制度です。個人事業主・フリーランス・農業従事者など国民年金のみ加入の方は、年収が1,000万円を超えていても老齢基礎年金は全額受け取れます。「年金が止まる」という話は会社員・公務員など厚生年金被保険者に限定された話であり、自営業者には当てはまりません。

誤解③「年金を繰り下げれば在職老齢年金の影響を永久に避けられる」

繰り下げ受給中は年金を受け取っていないため在職老齢年金の対象にはなりませんが、受給を開始した瞬間から在職老齢年金が適用されます。受給開始後も高収入で働き続けると年金が減額される可能性があります。繰り下げはあくまでも「受給額を増やす」手段であり、在職老齢年金を完全に回避できるわけではありません。

FAQ

Q1. 在職老齢年金で停止された年金は、退職後に戻ってきますか?

A. 在職中に支給停止になった年金は、退職後に遡って受け取ることはできません。ただし、退職後は翌月分から全額受給が再開されます。また、在職中に支払い続けた厚生年金保険料は退職時に「在職定時改定(ざいしょくていじかいてい)」または退職時改定により再計算され、将来の年金額が増額されます。払った分はきちんと将来に反映されるため、「損した」とは一概に言えません。

Q2. パートで週3日・月10万円程度働いています。年金は減りますか?

A. 年金が減るかどうかは、厚生年金に加入しているかどうかが最初の判断基準です。月収10万円・週20時間未満の勤務で従業員51人未満の企業であれば、厚生年金に加入しない可能性が高く、その場合は在職老齢年金の対象外で年金は全額受給できます。加入している場合でも、基本月額+総報酬月額相当額が50万円を超えなければ減額はありません。まずはねんきんネットや年金事務所で加入状況を確認しましょう。

Q3. 60歳で繰り上げ受給を選んだあとに就職した場合はどうなりますか?

A. 繰り上げ受給後に厚生年金に加入する職場に就職した場合、在職老齢年金の対象となります。繰り上げにより年金額自体が減額されている上に、さらに在職老齢年金による減額が重なる可能性があります。また、繰り上げ受給は一度選択すると取り消しができないため、将来的に就職する可能性がある方は繰り上げ受給を慎重に検討することをお勧めします。詳細は年金相談センターにご相談ください。

Q4. 会社を辞めた翌月から年金はすぐに満額もらえますか?

A. 退職した月の翌月分から在職老齢年金による支給停止は解除され、満額受給が再開されます。ただし、日本年金機構に退職の情報が伝わるまでに多少のタイムラグがある場合があります。速やかに受給を再開したい場合は、退職後に最寄りの年金事務所または年金相談センターに連絡し、退職証明書や離職票を提出することをお勧めします。

Q5. 在職老齢年金の基準額(50万円)は毎年変わるのですか?

A. はい、在職老齢年金の基準額(支給停止調整額)は毎年度の物価や賃金の変動に基づいて改定されます。2024年度は50万円ですが、2023年度は48万円でした。毎年4月に改定されるため、自分の収入と年金額の合計が基準額付近にある方は、毎年4月以降に最新の基準額を日本年金機構公式サイト(https://www.nenkin.go.jp/)で確認する習慣をつけましょう。

まとめ

在職老齢年金制度は、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取る会社員・再雇用者に適用される仕組みです。「基本月額+総報酬月額相当額」が基準額(2024年度:50万円)を超えると、超過分の半額が年金から差し引かれます。

ただし、重要なのは「年金が減っても、給与と合算した総収入は増える」という視点です。在職中の保険料納付は将来の年金額増加にもつながるため、単純に「損」とは言い切れません。自営業者・国民年金のみの方には適用されず、繰り上げ・繰り下げとの組み合わせによっても受給額は大きく変わります。

まずはねんきんネットで自分の年金記録と見込み額を確認し、疑問があれば年金相談センターや年金事務所に相談することが、最も確実な行動です。制度を正しく理解した上で、自分に合った働き方・受給戦略を選びましょう。

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