「減税すれば楽になる」なんて、それは幻想かもしれない。
物価高にあえぐ中、ガソリン税や消費税の減税が叫ばれている。でも、制度の“つぎはぎ”を続けたまま、税だけ下げても意味はあるのか? 本記事では、今の暮らしを圧迫している「制度の構造」そのものに焦点を当て、再設計という選択肢を提示する。増税/減税の二元論にモヤモヤしていた人こそ、読んでほしい。
届いている。
実際、会見でも玉木代表はこう語っている。
「地方を回っていると、“ガソリンなんとかしてくれ”という声を103万円の壁より多く聞く」
生活そのものを脅かすインフラコストの高騰。それを「国民の努力」で乗り越えろ、というのはあまりにも乱暴ではないだろうか?
このままでは、“車を動かすことを諦める”世帯が増えるだろう。それは買い物をやめることであり、仕事を辞めることであり、地方経済の縮小であり、地域社会の衰退である。
第2章
実は“二重課税”!? ガソリン税と“暫定税率”のしくみを解説
「なんでこんなに高いの?」
ガソリンスタンドでつい口をついて出るこの疑問。実は、答えは明確だ。
ガソリンには税金が“二重に”かかっているからである。
しかもその仕組みは、知れば知るほど「なんでまだこんなことが続いてるの?」と感じる、不思議な構造なのだ。
■ ガソリン1リットル=税金いくら?
まず、ざっくりいこう。
ガソリン価格の内訳は以下の通り:
- ガソリン本体価格:約90〜100円
- ガソリン税:53.8円(内訳:本則税28.7円+暫定税率25.1円)
- 地球温暖化対策税:0.76円
- 消費税:約16〜18円(※価格により変動)
はい、ここで気づいた方。
ガソリン税にさらに消費税がかかっている。
つまり、税金に対してまた税金がかかっている「二重課税」状態なのだ。
■ “暫定”のはずが40年以上継続中…
ここで出てくる「暫定税率」という言葉。聞いたことはあるけれど、深く考えたことがないという人も多いだろう。
この暫定税率、実は1974年のオイルショックを機に導入された“時限的”な増税措置。つまり「とりあえず今だけ上げさせてね」という話だった。が、これが2025年現在も続いている。
一時的なもののはずが、完全に“固定化”されてしまったのだ。
しかも名前はずっと「暫定」。もはや**“暫定詐欺”**と言いたくなるほどだ。
■ 暫定税率の実態=25.1円の“隠れ税”
今、1リットルあたりのガソリン税のうち、約半分がこの“暫定”部分。
これがなければ、少なくとも25円は安くなる。
仮に現在180円のガソリンが155円になるとしたらどうだろう?
地方では「明日からまた車出せる」と歓喜する人が続出するだろう。
配送業者にとっても死活問題であり、**ガソリン代は“インフラの血液”**とも言える。
■ 暫定税率の“言い訳”とその終焉
よく言われるのが「この税金は道路整備に使われている」というもの。
が、すでにその名目も実態も崩れている。
現在、この税収は一般財源化されており、必ずしも道路に使われるとは限らない。
つまり「もう一生、上乗せしていいよね?」と国家が言ってるようなものだ。
■ 野党は本気?与党は動く気ある?
実はこの“暫定税率廃止”は、国民民主党がずっと訴えてきた政策だ。
最近では立憲民主党や日本維新の会も声を上げ、野党共闘の動きも出始めた。
しかし与党である自民・公明の本気度は微妙。
「時限措置を見直す必要はあるが、タイミングが重要」など、玉虫色のコメントに終始している。
■ ガソリン価格=“民意”で下げられるのか?
今こそ問われているのは、「暫定税率」を“国民の声で終わらせられるか”だ。
国民民主党の玉木代表も強調するように、この問題は生活に直結する切実なテーマ。
一部の人ではなく、ほぼすべての国民が当事者だ。
にもかかわらず、政策の優先順位は下がりがち。
だからこそ、“国民の声”が可視化されることでしか、政治は動かない。
ガソリン価格を下げる“鍵”は、暫定税率の撤廃にある。
そしてその撤廃は、国民の関心と声がなければ動かない。
今、この“暫定詐欺”に終止符を打つ時なのだ。
第3章
“ただの節約術”では追いつかない
ガソリン高騰がもたらす「生活全体の値上げ連鎖」
「最近、なんでもかんでも高くなってない?」
そう思ったあなた。気のせいではありません。
しかもその“物価上昇の起点”にあるのが、ガソリン価格なのです。
■ ガソリン価格は“生活コストの起爆剤”
まず考えてみてください。
私たちの暮らしは、ガソリンを使うトラックや配送網に支えられています。
- スーパーの商品:トラックで運ばれてくる
- 宅配便:ガソリンで走るバンが届ける
- 農作物:耕運機や運搬機器はすべて燃料で動く
- バス・タクシー:ガソリン・軽油が必須
つまり、ガソリンが高くなると、生活のあらゆる物とサービスの価格が連鎖的に上がるのです。
■ 「また値上げか…」の裏に、燃料費あり
例えば、牛乳1本の値上げ。
理由をよく見ると「原材料費・配送コストの高騰のため」と書かれている。
これ、つまりはガソリン代が上がってるからです。
ピザの宅配、アマゾンの送料、タクシー料金、果ては美容室の料金まで。
「ガソリン=血液」と例えるなら、その血液がドロドロになった状態が、今の日本経済なのです。
■ 節約では限界。車が生活の“命綱”な人たち
特に、地方や郊外に住んでいる人にとって、車は「生活の足」どころか「命綱」です。
- 通勤:電車がない、バスは1時間に1本。車しか選択肢がない
- 買い物:近所にスーパーがない。車で片道20分
- 通院:高齢者の送迎も自家用車頼み
こうした生活を送る人々にとって、ガソリンの価格は家計の心臓に直結しています。
10円上がるだけでも、月数千円〜1万円以上の支出増になるケースも。
■ 企業も悲鳴。物流コスト=商品価格へ転嫁
さらに、企業も苦しんでいます。
配送業、農業、建設業、観光バス、タクシー、全てがガソリン依存。
コストが跳ね上がれば、商品価格に反映するしかない。
たとえば:
- トマト1個→+10円
- 引っ越し費用→+5,000円
- 牛乳→+15円
- Amazonの“送料無料”→実質値上げ
個人が節約しても、全体が値上げの波に飲まれている限り、逃げ場はないのです。
■ だからこそ、“構造”から変えなければ意味がない
「なるべく運転控えよう」
「エンジンのアイドリングを減らそう」
「カーシェアに切り替えよう」
もちろん、これらは素晴らしい心がけです。
でも、どれも**“一時しのぎ”でしかありません。**
- 一度値上がりしたモノは、なかなか下がらない
- ガソリン高騰が続けば、値上げが定着する
- 定着すれば、それが「新しい価格帯」になる
つまり、ガソリン税の構造を見直さない限り、物価高は常態化するということ。
■ 生活防衛は、節約ではなく「制度改革」でこそ実現する
いま、必要なのは根本治療です。
その1つが、ガソリン税(特に暫定税率)の廃止。
これは「車を使う人のため」だけの政策ではありません。
- 物価上昇を抑える
- 地方の移動インフラを守る
- 企業のコストを下げて雇用を守る
- 若者や子育て世代の家計を救う
これほど幅広く、そして現実的な対策は他にないかもしれません。
ガソリン価格は、あなたの財布だけでなく、日本全体の“呼吸器”を締めつけている。
今こそ「節約」ではなく「仕組み」を問い直す時です。
第4章
“エコ”と“節約”のジレンマ
EVシフトとガソリン税の、すれ違う現実
近年、国も企業も「EVシフト(電気自動車化)」を叫んでいます。
カーボンニュートラル。脱炭素。ゼロエミッション。
一見、地球に優しい未来に向かっているように思えます。
…でも、あなたの財布には優しくなっていますか?
■ EVシフトは「ガソリン離れ」を促す、はずだった
本来の流れはこうです:
- 地球温暖化を止めるため、ガソリン車を減らす
- EV(電気自動車)への買い替えを促進
- 二酸化炭素の排出量が減り、地球が救われる
- 同時にガソリンの使用量も減るので、税収も下がる
ここまでは理想的な話。
■ でも、現実にはEVなんて買えない
ところが――
EVは高い。インフラは足りない。充電に時間がかかる。地方には向かない。
つまり**「EVは欲しいけど、無理」**という人が大多数なのです。
例えば:
- トヨタ bZ4X:約600万円
- ホンダ e:約450万円
- テスラ モデル3:約550万円〜
中古でも200万円以上はザラ。しかも充電設備が自宅にない人は…そもそも対象外。
庶民の足元には、EVはまだ遠すぎる。
■ EVに乗れない人に“罰金”のようなガソリン税
ここで不思議な矛盾が起こります。
「EV買えない」=「ガソリン車を使い続ける」
↓
「ガソリン車を使い続ける」=「高額な税金を払い続ける」
↓
結局、環境より生活がしんどい。
本来、環境に配慮した行動に対してはインセンティブがあるべき。
けれど現状は、EVが買えない人に**“罰金のような税金”**を課している構図。
■ ガソリン税の中に隠れる“謎の二重取り”
ガソリン1リットルあたり、どれだけ税金がかかっているかご存知ですか?
実はこんなにかかっています:
- ガソリン税:28.7円
- 地方揮発油税:5.2円
- 暫定税率(本来一時的なもの):25.1円
- 消費税:10%(なんと税金にも税金がかかってる!)
合計すると、1リットルあたり70円超が税金なんです。
しかも、そのうち25.1円は「本来もう終わってるはずの」暫定税率。
まるで“解約し忘れたサブスク料金”のように、ずっと払い続けているのです。
■ 環境対策は必要。でも、「負担の公平性」が抜けてる
もちろん、脱炭素や温暖化対策は必要です。
でも、それを推進するならこうであるべきでは?
- EV車への補助だけでなく、「今使っているガソリン車の負担軽減」も同時に考える
- 地方や低所得層への代替交通手段の整備
- 税負担が偏らないような、再分配設計の見直し
つまり、「エコ」の名の下で一部の人にだけ負担が集中するのは、制度の歪みです。
■ “エコ”に協力したくても、生活が持たないなら無意味
EVに乗れず、ガソリン車で仕事や通勤をする人たちが、税で苦しんでいる今。
それはもう、「環境問題」ではなく「生活権の問題」です。
人は余裕があるときにこそ、環境を意識できます。
まずは、「普通の人が普通に生活できる経済環境」を整えることが、
結果的に“持続可能な社会”につながるのではないでしょうか。
生活に余裕がない社会では、エコもSDGsも絵に描いた餅になる。
その現実を見て、まず“生活に直結する税金”から見直す必要があるのです。
第5章
「103万の壁」ならぬ「ガソリンの壁」
家計を直撃する“燃料インフレ”の見えない障壁
「103万円の壁」は耳なじみがあるかもしれません。
扶養控除や社会保険料の制度上、ある年収を超えると手取りが減る“逆転現象”。
でも今、もう一つの“壁”が国民を苦しめています。
それが――
**ガソリン価格という“生活の壁”**です。
■ ガソリンの値段が「ライフプラン」を壊している
「ガソリン高くて通勤きついから、バイト日数減らそうかな…」
「実家の介護、週2に減らさないとガソリン代が持たない」
「子どもの送迎、タクシーじゃなくてもう自転車で…」
これは極端な例ではなく、いま地方や郊外に住む人たちのリアルな声です。
■ 交通インフラが“ある前提”で税金が作られている
都市部では電車・地下鉄・バスが通っていて、「マイカーなし」でも生活可能。
でも地方では、車が**“足”どころか“命綱”**です。
- 通勤も
- 買い物も
- 病院も
- 子どもの送り迎えも
すべてがガソリンを必要とします。
ガソリン価格の上昇=日常生活の破綻
その現実に、都市部の政治は気づいていない、または見て見ぬふりをしている――。
■ ガソリン代が“第2の税”になっている
今やガソリンは「課税商品」というより、生活費の一部です。
しかしその中に、
- ガソリン税
- 消費税(税に税をかける構図)
- 暫定税率(継続中)
- 二酸化炭素排出量に応じた“環境負荷”コスト
これだけの“名目”が重ねられています。
ここまでくると、もはや“納税”というより**“懲罰”**に近い。
使わざるを得ない人ほど罰を受ける。そんな構造になっているのです。
■ なぜ「ガソリン税の廃止」は実現しないのか?
その理由の一つが、財源です。
「廃止したら、税収が減る」
「道路整備に使うお金が足りなくなる」
「環境対策の資金が…」
でも、よく考えてください。
その“道路”を一番使う人たちが、今苦しんでいるんです。
国民民主党はこの点に切り込もうと、暫定税率の廃止を掲げています。
一方、他の政党の多くは「検討します」「持ち帰ります」と歯切れが悪い。
要するに、“誰が得するか”ではなく“誰が困っているか”が見えない議論になっているのです。
■ “壁”は物理的じゃない。制度が作っている。
103万円の壁も、ガソリンの壁も。
それらは目に見えません。でも確実に人々の行動を制限します。
- フルタイムで働くことをあきらめる
- 移動を控えることで、経済活動も停滞
- 家庭内で無理な節約を強いられる
すべて、見えない“制度の壁”のせいです。
■ 「壁」は壊せる。“構造の見直し”こそが鍵
壁は人間が作ったもの。ならば、人間の意思で壊すこともできる。
- EV化を進めるなら、ガソリン税を段階的に減らす
- インフラ整備のための新たな税体系を再設計する
- 「生活者視点」で制度をゼロベースで考える
この柔軟性こそが、本来の政治に求められているものなのです。
「ガソリンは生活必需品」――その視点に立った政治を。
それが“ガソリンの壁”を取り払う第一歩になるはずです。
第6章
「生活から始める税制」
増税・減税よりも、“再設計”という選択肢
ここまで読んでくださったあなたは、こう感じたかもしれません。
「もう、減税とか増税とかの二択じゃ、話にならないんじゃないか?」
まさにその通り。
私たちがいま必要としているのは、増やす/減らすという“操作”ではなく、“設計し直す”という発想です。
■ 日本の税制は「積み重ねの遺産」
現在の税制度は、まるで「昭和の住宅を増改築し続けたボロ屋敷」。
- 所得税の控除制度
- 消費税の軽減税率
- ガソリン税と暫定税率
- 年金・介護・医療に連動する社会保険料
- 扶養控除や103万円・130万円の壁
それぞれは「時代のニーズ」に応じて作られたかもしれません。
でも、**全体として合理的か?**と問えば――答えはNO。
もはや「誰が得で誰が損かすらわからない複雑怪奇な迷路」です。
■ 減税=正義、増税=悪、ではない
ここに落とし穴があります。
「減税すればいい」という単純な話ではありません。
- 減税したら誰が得をするのか?
- 財源が減ったら、どこで穴埋めするのか?
- 減税によりサービスが減れば、結果的に誰が一番困るのか?
大切なのは、“何のための税か?”という根本に立ち返ること。
■ 生活の現場から制度を組み立て直す
たとえば――
- 通勤・通学・通院に車が不可欠な地方では、燃料税を減免
- 子育て世代には「所得の多寡」ではなく「支出の多寡」で支援
- 教育無償化は「未来への投資」として財源を国債で手当て
- 単身高齢者には医療・介護費だけでなく「移動手段」への支援も必要
これは机上の空論じゃない。
毎日の生活の中で、誰もが感じている「おかしさ」から生まれる現実的な発想です。
■ 再設計のために必要な「共通言語」
制度を変えるには、合意が必要です。
合意を得るには、「わかりやすい言葉」が不可欠。
- 所得控除? →「生活に使えるお金の量」
- 税額控除? →「払わなくて済む金額」
- 暫定税率? →「昔つけたオマケ税金が今も続いてること」
- 軽減税率? →「“本当に困ってる人”のためじゃなく“制度上の都合”のもの」
専門用語のまま議論しても、誰もついていけません。
まずは「生活の言葉」で話す。そこがスタートラインです。
■ 「制度を知らないと損する社会」からの脱却を
現在の日本は、「制度を知ってる人」だけが得をして、「知らない人」が取り残される仕組みです。
そのギャップは、情報格差を生み、最終的に**“制度不信”**へとつながっていきます。
私たちが目指すべきは――
「誰もが理解でき、実感でき、納得できる」制度。
- 手取りが増えるってどういうこと?
- 自分が払ってる税金は何に使われてる?
- どの支援が、自分の暮らしに効いてくる?
これを「当たり前」に理解できる社会こそ、持続可能な未来への土台です。
■ 再設計は、一人ひとりの声から始まる
政治家の発言、党の公約、国の制度改正――
その前に、まずあなたの暮らしがあります。
「なんかおかしい」と思ったら、その感覚が最初の突破口です。
“制度は生活のためにある”という原則を、もう一度社会の中心に据え直す。
それこそが、増税でも減税でもない、“再設計”という新しい選択肢です。
【最後に】
物価高、税負担、制度の壁――
日々の生活に押し寄せる見えない「圧力」を、無理に耐える必要はありません。
私たちは「文句を言うために選挙に行く」のではなく、
「暮らしを変えるために選ぶ」時代に入ったのです。
その第一歩は、制度に「自分ごと」として関心を持つこと。
あなたの一票、あなたの一声が、
この「再設計」の未来を動かします。
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