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この記事でわかること

毎年10〜11月になると、会社から「年末調整の書類を提出してください」と言われます。しかし、扶養控除や保険料控除の欄をどう書けばよいか迷う方は非常に多いです。この記事では、40〜70代の方が特に間違えやすいポイントを具体的な数字と事例を使って解説します。
- 年末調整と確定申告、どちらが必要かの判断基準
- 扶養控除申告書の正しい書き方と注意点
- 保険料控除申告書(生命保険・地震保険・社会保険)の書き方
- よくある記載ミスとその防ぎ方
- 必要書類の一覧と入手先
先に結論

年末調整の書類で最も多いミスは、「扶養家族の所得金額を書き漏らす」「保険料控除証明書の金額を新旧で混同する」「配偶者の収入が扶養の上限を超えているのに申告する」の3点です。これらを事前に把握しておけば、書き直しや税務調査のリスクを大幅に減らすことができます。
また、年末調整だけでは対応できないケース(医療費控除、ふるさと納税の寄附金控除、副業収入など)は、翌年2〜3月に確定申告が別途必要です。年末調整さえすれば何でも完結するわけではありません。この区別を正確に理解することが第一歩です。
対象となる人

年末調整の対象者と、確定申告が必要になる人の違いを以下の表で確認してください。自分がどのケースに当てはまるかを把握することで、やるべき手続きが明確になります。
| 区分 | 主な該当者 | 年末調整 | 確定申告 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 給与所得者(会社員・パート) | 1か所から給与を受け取っている人 | 必要(会社が実施) | 原則不要 | 医療費控除などは別途申告が必要 |
| 給与所得者(副業あり) | 副業収入が年間20万円超の人 | 必要(本業分) | 必要(副業分) | 20万円以下なら確定申告不要 |
| 給与所得者(医療費控除希望) | 1年間の医療費が10万円超の人 | 必要 | 必要(医療費控除のみ) | 年末調整では医療費控除は対応不可 |
| 年金受給者(公的年金のみ) | 年金収入400万円以下かつ他の所得20万円以下 | 対象外 | 原則不要 | 各種控除を受けたい場合は申告推奨 |
| 年金受給者(給与収入あり) | 再雇用や嘱託で給与も得ている人 | 必要(給与分) | 状況による | 2か所以上から収入がある場合は要確認 |
| 個人事業主・フリーランス | 事業所得がある人 | 対象外 | 必要 | 青色・白色申告のいずれかで申告 |
| 転職者(当該年内) | 年の途中で転職した人 | 必要(現職場) | 前職の源泉徴収票が間に合わない場合は要申告 | 前職の源泉徴収票を現職に提出 |
※年末調整は勤務先が行うため、提出書類に漏れや誤りがあると還付が受けられなかったり、追加徴税になることがあります。
制度・手続きの概要

年末調整とは何か
年末調整とは、1年間に給与から天引きされた所得税(源泉徴収税)の過不足を、年末に会社が精算する手続きです。毎月の給与では「概算」で税金が引かれているため、年末に実際の所得・控除額をもとに正確な税額を計算し直します。多く払っていれば12月の給与や賞与で還付、少なければ追加徴収されます。
扶養控除の基本と計算例
扶養控除は、一定の要件を満たす家族(扶養親族)を養っている場合に所得から差し引ける制度です。控除額は扶養親族の年齢や状況によって異なります。
| 区分 | 控除額(所得税) | 主な対象 |
|---|---|---|
| 一般の扶養親族(16〜18歳、23〜69歳) | 38万円 | 同居・別居の子、親など |
| 特定扶養親族(19〜22歳) | 63万円 | 大学生の子など |
| 老人扶養親族(70歳以上・同居) | 58万円 | 同居の父母・祖父母 |
| 老人扶養親族(70歳以上・別居) | 48万円 | 離れて暮らす親など |
【計算例】課税所得500万円の会社員Aさんが、大学生の子(21歳)を扶養に入れた場合:特定扶養控除63万円が適用され、課税所得は500万円-63万円=437万円となります。所得税率(概算20%)で計算すると、63万円×20%=約12.6万円の節税になります。
なお、扶養親族として申告できる人の要件は次のとおりです。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)または里子・養護老人
- 納税者と生計を一にしている
- 年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入のみなら103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者として給与を受け取っていないこと
保険料控除の種類と新旧制度の違い
保険料控除には「生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」「地震保険料控除」「社会保険料控除」があります。生命保険料控除は2012年1月1日以降に締結した契約(新制度)と、それ以前の契約(旧制度)で控除限度額が異なります。
| 控除の種類 | 新制度の上限(所得税) | 旧制度の上限(所得税) |
|---|---|---|
| 一般生命保険料控除 | 4万円 | 5万円 |
| 介護医療保険料控除 | 4万円(新制度のみ) | なし |
| 個人年金保険料控除 | 4万円 | 5万円 |
| 地震保険料控除 | 5万円(上限) | 旧長期損害保険は最大1万5千円 |
新旧両方の契約がある場合、合算して申告できますが、合計上限は所得税で12万円です。証明書に記載の「新契約・旧契約」の区別を必ず確認してください。詳細は国税庁タックスアンサー「生命保険料控除」を参照してください。
必要書類と確認先
年末調整の提出書類を事前にそろえておくことで、記入ミスや提出漏れを防げます。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書:勤務先から配布。最初に提出する基本書類
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書:2020年分から1枚に統合された書類
- 給与所得者の保険料控除申告書:生命保険・地震保険・個人年金などを申告する書類
- 生命保険料控除証明書:各保険会社から10月頃に郵送される(紛失した場合は保険会社に再発行依頼)
- 地震保険料控除証明書:損害保険会社から郵送される
- 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書:日本年金機構から11月上旬頃に郵送(ハガキ形式)
- 小規模企業共済等掛金払込証明書:iDeCo(個人型確定拠出年金)加入者に国民年金基金連合会から郵送
- 住宅ローン控除の残高証明書:2年目以降の住宅借入金等特別控除を受ける人(金融機関から郵送)
- 前職の源泉徴収票:当年中に転職した人は必須(前の勤務先から取得)
- マイナンバー(個人番号)確認書類:書類記入・本人確認に必要
最新の申告書の様式と記載例は国税庁「年末調整のしかた」から無料でダウンロードできます。電子申告にはe-Tax(国税電子申告・納税システム)が利用できます。
ケース別の注意点
ケース1:親(70歳以上)を扶養に入れている場合
別居している親を扶養に入れる場合、最もよくあるミスが「生計を一にしている」要件の確認不足です。仕送りをしていれば別居でも生計一と認められますが、親が年金収入158万円超(65歳以上)または年金収入108万円超(65歳未満)の場合は合計所得48万円超となり、扶養に入れられません。年金額を必ず確認してください。
また、親が同居か別居かで控除額が異なります(同居の老人扶養親族:58万円、別居:48万円)。「住民票が別だから別居」ではなく、実態として同居しているかどうかで判断します。
ケース2:配偶者控除・配偶者特別控除の選択を誤るケース
配偶者(主に妻)がパートで働いている場合、その収入額によって申告できる控除が変わります。2018年の改正で上限が引き上げられましたが、依然として「103万円の壁」だけを意識して申告を誤るケースが目立ちます。
| 配偶者の給与収入(年間) | 配偶者の合計所得 | 控除の種類 | 控除額(納税者の所得900万円以下の場合) |
|---|---|---|---|
| 103万円以下 | 48万円以下 | 配偶者控除 | 38万円(70歳以上は48万円) |
| 103万円超〜201万円以下 | 48万円超〜133万円以下 | 配偶者特別控除 | 最大38万円(収入に応じて逓減) |
| 201万円超 | 133万円超 | なし | 0円 |
配偶者の収入を「だいたい100万円くらい」と曖昧に記入するのは厳禁です。源泉徴収票や給与明細で正確な年収を確認してから記入しましょう。
ケース3:生命保険を複数契約している場合の計算ミス
複数の生命保険に加入していると、証明書も複数届きます。ここで多いミスが「全部足して一つの欄に書いてしまう」というものです。正しくは、「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3種類に分けて、それぞれ計算し記入します。
【計算例】新制度・一般生命保険料として年間払込額が8万円の場合:
- 払込額が6万円超の場合の計算式:控除額=払込額×1/4+2万円
- 8万円×1/4+2万円=4万円(上限4万円なのでちょうど上限に到達)
旧制度の計算式は異なるため、証明書の「新・旧」の表示を必ず確認してください。国税庁のタックスアンサー「生命保険料控除」に計算式の詳細も掲載されています。
ケース4:iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金を申告し忘れるケース
iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除になります。しかし、会社の給与天引きではなく個人払いの場合、自分で証明書を保険料控除申告書に添付しないと控除が受けられません。毎年10月下旬〜11月上旬に国民年金基金連合会から証明書が届くので、必ず保管しておきましょう。
今日やること3つ
- 【扶養家族の年収・所得を今すぐ確認する】配偶者や親の直近の給与明細・年金通知書を手元に用意し、年間合計所得が48万円(給与収入のみなら103万円)以下かどうかを確認する。超えている場合は扶養から外す手続きが必要です。
- 【保険料控除証明書が全部そろっているか確認する】加入している生命保険・地震保険・iDeCoの証明書が届いているかリストアップする。見当たらない場合は各保険会社や国民年金基金連合会に再発行を依頼する(再発行には数日〜1週間かかる場合があります)。
- 【国税庁の公式サイトで記載例を確認してから書く】国税庁「年末調整のしかた」にある記載例と照らし合わせながら書類を作成する。不明点は勤務先の総務・経理担当か、最寄りの税務署(税務署所在地マップ)に問い合わせる。
よくある誤解
誤解1:「年末調整を出せば確定申告は一切不要」
年末調整だけでは対応できない控除があります。医療費控除(年間10万円超の医療費)、ふるさと納税でワンストップ特例を使わなかった場合の寄附金控除、住宅ローン控除の初年度(2年目以降は年末調整で可能)、副業・雑所得が20万円超の場合などは、必ず翌年の確定申告が必要です。「年末調整を出したから大丈夫」と思い込んで確定申告を忘れると、控除が受けられない・追徴課税になるリスクがあります。確定申告はe-Taxを使えばオンラインで完結できます。
誤解2:「扶養控除は誰でも何人でも申告できる」
扶養控除は「生計を一にしている」「合計所得48万円以下」などの要件を満たす必要があります。成人して独立している子どもや、収入が一定以上ある親は対象外です。また、同じ人を複数の納税者が扶養に入れることはできません(いわゆる「重複扶養」)。兄弟姉妹で親の扶養を分担している場合、誰がどの親を扶養に入れるかを家族間で確認・調整してください。重複申告は税務署から指摘を受ける原因になります。
誤解3:「生命保険料は払った全額が控除される」
生命保険料控除は「払った金額がそのまま控除される」わけではありません。所得税の場合、新制度では最大4万円(一般・介護医療・個人年金それぞれ)が上限であり、合計でも最大12万円です。年間保険料が100万円でも、控除される金額は最大12万円です。「保険に入るほど節税になる」という誤解に注意してください。
FAQ
Q1. 年末調整の書類を期限内に出し忘れた場合どうすればよいですか?
A. 勤務先の締め切りを過ぎた場合、会社によっては翌年1月末までの年末調整に間に合わせてくれる場合もあります。まずは総務・経理担当に相談してください。それも間に合わない場合は、翌年2月16日〜3月15日の確定申告期間中に自分で確定申告を行うことで、各種控除の適用を受けることができます。e-Taxを使えばオンラインで申告が完結します。
Q2. 配偶者が育児休業中で収入がほとんどない場合、扶養に入れられますか?
A. 育児休業給付金は非課税所得のため、所得計算には含まれません。産前産後の給与と育休前の給与収入の合計が103万円(合計所得48万円)以下であれば、その年の配偶者控除を申告できます。ただし、育休中であっても健康保険・年金の扶養(社会保険上の扶養)とは基準が異なるため、それぞれ個別に確認が必要です。
Q3. 学生アルバイトの子どもを扶養に入れたままにしてよいですか?
A. 子どものアルバイト収入が年間103万円以下(合計所得48万円以下)であれば、引き続き扶養親族として申告できます。103万円を超えると扶養から外れ、扶養控除が受けられなくなります。子どもの年収が103万円前後になりそうな場合は、年末に本人に収入額を確認してから申告してください。
Q4. 転職して前の会社の源泉徴収票がまだ届いていません。どうすればよいですか?
A. 転職した年は、前の会社の源泉徴収票を現在の勤務先に提出して合算した年末調整を行う必要があります。源泉徴収票は退職後1か月以内に交付する義務が会社にあります(所得税法第226条)。届かない場合は前の勤務先に請求してください。年末調整に間に合わない場合は、翌年の確定申告で対応することになります。確定申告書の作成は国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」から行えます。
Q5. 地震保険と火災保険の両方に入っていますが、どちらも控除できますか?
A. 地震保険料控除の対象は「地震保険料」のみです。火災保険料(地震特約がないもの)は2006年以降の新規契約では控除対象外となっています。ただし、2006年12月31日以前に締結した長期損害保険契約(満期返戻金があるもの)については旧長期損害保険料として一定の控除が受けられる場合があります。詳しくは国税庁タックスアンサー「地震保険料控除」を確認してください。
まとめ
年末調整は毎年繰り返す手続きですが、家族構成の変化(子どもの就職・進学、親の年齢・収入変化など)によって申告内容は毎年変わります。前年と同じ内容をそのままコピーするのは危険です。
特に注意すべきポイントをもう一度整理します。
- 扶養親族の所得(年金・アルバイト収入)を毎年必ず確認する
- 配偶者の収入が103万円・201万円のラインを超えていないか確認する
- 生命保険料は新制度・旧制度を区別し、3種類に分けて計算する
- iDeCoの証明書など、届いた書類をすべて漏れなく添付する
- 医療費控除など年末調整で対応できないものは確定申告を行う
- 不明点は国税庁の公式サイトや税務署・税理士に必ず相談する
書類の書き方に少しでも疑問があれば、自己判断せずに勤務先の担当者や税務署、税理士に確認することを強くおすすめします。正確な申告が、適切な税還付と将来の安心につながります。
公式情報・相談先
- 国税庁トップページ(法令・通達・最新情報):https://www.nta.go.jp/
- 国税庁「年末調整のしかた」(公式申告書・記載例ダウンロード):

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