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この記事でわかること

会社を退職すると、それまで加入していた健康保険(協会けんぽや組合健保)から脱退しなければなりません。退職後の医療保険には主に「任意継続被保険者制度(退職前の健康保険をそのまま継続する制度)」と「国民健康保険(市区町村が運営する保険)」の2つの選択肢があります。
この記事では、40〜70代の退職者・転職者が直面する「どちらに入れば保険料が安いのか」「手続きはどうすればいいのか」という疑問に、具体的な計算例・比較表・手順を交えながら徹底解説します。
- 任意継続と国民健康保険の保険料の違い
- それぞれの加入条件・申請期限
- ケース別(年齢・収入・家族構成)のおすすめ選択肢
- 必要書類と申請窓口
- よくある誤解とFAQ
先に結論

退職直後の保険料が安いのは、多くの場合「任意継続」です。ただし、前年の収入が低かった人・扶養家族がいない人・退職後に収入がゼロになる人は「国民健康保険」が安くなるケースもあります。
任意継続の保険料は「在職中の標準報酬月額(給与をもとに決める等級)をベースに計算した金額の全額自己負担」です。在職中は会社が半分を負担してくれていましたが、退職後はその分も自分で払うことになります。一方、国民健康保険の保険料は「前年の所得」をもとに計算するため、退職して収入が大幅に下がった翌年は安くなる傾向があります。
どちらが得かは個人の収入・家族構成・居住する市区町村によって異なるため、必ず両方の保険料を試算してから決めてください。
対象となる人

任意継続と国民健康保険、それぞれ加入できる条件が異なります。下の表で自分がどちらに該当するか確認しましょう。
| 項目 | 任意継続被保険者 | 国民健康保険 |
|---|---|---|
| 対象者 | 退職前に継続して2か月以上、健康保険(協会けんぽ・組合健保)に加入していた人 | 健康保険・共済組合などに加入していない75歳未満の居住者すべて |
| 年齢制限 | 75歳未満(75歳以上は後期高齢者医療制度へ移行) | 75歳未満(同上) |
| 申請期限 | 退職日の翌日から20日以内(厳守・延長不可) | 退職日の翌日から14日以内(遅延しても加入は可能だが無保険期間が発生) |
| 加入期間 | 最長2年間 | 次の健康保険に加入するまで継続 |
| 扶養家族 | 被扶養者として継続可能(保険料は変わらず) | 家族それぞれに保険料が発生(人数が多いほど高くなる) |
| 保険料の基準 | 退職時の標準報酬月額(上限あり) | 前年の所得・資産・均等割・平等割など(自治体により異なる) |
| 途中脱退 | 2022年改正により申し出による任意脱退が可能 | いつでも脱退可能(就職等により資格喪失) |
| 給付内容 | 在職中とほぼ同等(傷病手当金・出産手当金は原則対象外) | 法定給付あり(傷病手当金は自治体により異なる) |
※2022年(令和4年)1月の健康保険法改正により、任意継続被保険者は申し出によって任意に脱退できるようになりました。これにより「1年目は任意継続、2年目から国民健康保険に切り替える」という戦略が取りやすくなっています。
※制度の詳細は厚生労働省公式サイト(https://www.mhlw.go.jp/)でご確認ください。
制度・手続きの概要

任意継続被保険者制度とは
任意継続とは、退職前に加入していた健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)に、退職後も最長2年間継続加入できる制度です。退職後は会社負担分がなくなるため、在職中の約2倍の保険料を自己負担することになりますが、国民健康保険より保険料が安くなるケースが多いです。詳細は厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/)の「退職後の医療保険制度」ページをご参照ください。
保険料の計算方法(任意継続)
任意継続の保険料は以下のいずれか低い方の標準報酬月額を使って計算します。
- 退職時の標準報酬月額
- 加入する保険者(協会けんぽ等)の全被保険者の平均標準報酬月額(令和5年度は約30万円が目安)
【計算例】協会けんぽ(東京都)に加入、退職時の標準報酬月額が35万円の場合:
- 上限の平均額(約30万円)が適用される
- 令和5年度の協会けんぽ東京都の保険料率:約10.00%(介護保険料率含む場合は約11.64%)
- 保険料(40歳未満):300,000円 × 10.00% = 月額約30,000円
- 保険料(40〜64歳):300,000円 × 11.64% = 月額約34,920円
国民健康保険の保険料計算方法
国民健康保険の保険料は市区町村によって大きく異なりますが、一般的に「所得割(前年所得に応じた部分)+均等割(加入者1人あたり)+平等割(世帯あたり)」で構成されます。退職後に収入がゼロになった場合、翌年の保険料は大幅に下がります。ただし、退職した年(退職前の所得が高かった年)は高くなる点に注意が必要です。
【計算例】前年の給与収入が500万円(所得約346万円)、単身・東京都新宿区の場合(令和5年度概算):
- 所得割:(346万円 − 43万円)× 約7.19% ≒ 約217,869円
- 均等割:約47,600円
- 合計(概算):年間約265,000円 → 月額約22,100円
※この計算例はあくまで参考値です。正確な金額はお住まいの市区町村窓口または自治体のWebサイトで確認してください。
必要書類と確認先
任意継続の申請に必要な書類
- 健康保険任意継続被保険者資格取得申出書(加入していた健保組合または協会けんぽの書式)
- 退職証明書または資格喪失証明書(勤務先から取得)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- (扶養家族がいる場合)続柄・収入を確認できる書類(戸籍謄本、収入証明書など)
- (協会けんぽの場合)振込先金融機関の口座情報
申請窓口:加入していた健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)の都道府県支部。退職日の翌日から20日以内に申請してください。協会けんぽの詳細はhttps://www.kyoukaikenpo.or.jp/でご確認いただけます。
国民健康保険の加入に必要な書類
- 健康保険・社会保険の資格喪失証明書(勤務先から取得)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- マイナンバーがわかる書類(マイナンバーカードまたは通知カード)
- 印鑑(自治体によって不要な場合あり)
- (世帯主と別に申請する場合)世帯主の情報がわかる書類
申請窓口:お住まいの市区町村役場の国民健康保険担当窓口。退職日の翌日から14日以内に手続きするのが原則です。窓口の所在地・受付時間はお住まいの市区町村の公式Webサイトでご確認ください。
ケース別の注意点
ケース1:50代・給与収入が高かった会社員が早期退職する場合
退職前の標準報酬月額が高い(例:50万円以上)場合でも、任意継続の保険料には上限があります(協会けんぽは標準報酬月額の上限が約30万円)。そのため、高収入だった人ほど任意継続の恩恵が大きく、保険料を抑えられる可能性があります。退職後に収入がゼロになる場合でも、退職した年の国民健康保険料は前年の高い所得をもとに計算されるため、退職1年目は任意継続の方が安くなることがほとんどです。
注意点:再就職の見込みがない場合、任意継続の2年間終了後は国民健康保険に移行します。2年目以降の保険料も事前に試算しておきましょう。
ケース2:扶養家族(配偶者・子ども)がいる場合
任意継続では、扶養家族を被扶養者として継続できます。扶養家族が多いほど任意継続が有利です。なぜなら、国民健康保険は家族全員分の均等割がかかるため、家族の人数が増えるほど保険料が高くなるからです。例えば夫婦2人+子ども2人の場合、国民健康保険では4人分の均等割が発生しますが、任意継続では保険料は変わりません。
注意点:扶養家族の収入が一定額(年収130万円)を超えると、被扶養者から外れ、各自で国民健康保険などに加入する必要があります。
ケース3:退職後にすぐ再就職する予定がある場合
3〜6か月以内に再就職が決まりそうな場合は、任意継続への加入も有効です。ただし、2022年の法改正により任意継続は申し出によって途中脱退が可能になったため、再就職が決まった時点で脱退して新しい健康保険に切り替えられます。短期間の無収入期間であれば、任意継続で安定した保険料を払い続ける方が安心です。
注意点:任意継続の保険料は月払いが原則ですが、前納(6か月・1年)すると割引になる場合があります。ただし、短期間で脱退する可能性がある場合は前納を避けた方が無難です。再就職に関する相談はハローワーク(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)をご活用ください。
ケース4:前年の所得が低い・失業給付を受ける予定がある場合
失業給付(雇用保険の基本手当)は収入として国民健康保険料の計算に影響しません(非課税)。退職前の所得が低かった人や、育児・介護で休職期間があり所得が少なかった人は、国民健康保険の方が保険料が安くなるケースがあります。また、特定受給資格者(会社都合退職など)は国民健康保険料の軽減制度が適用される場合があります。
注意点:軽減制度の申請は自動的には行われません。必ず市区町村の窓口で「非自発的失業者に係る軽減制度」の申請を行ってください。
今日やること3つ
- 【退職前に勤務先へ「標準報酬月額」と「資格喪失証明書の発行」を依頼する】退職後の手続きに必須の書類です。退職日が決まったら早めに総務・人事部門に請求しておきましょう。同時に、健保組合または協会けんぽに任意継続の保険料を問い合わせ、国民健康保険の試算額と比較してください。協会けんぽの連絡先はhttps://www.kyoukaikenpo.or.jp/から確認できます。
- 【お住まいの市区町村窓口またはWebサイトで国民健康保険料の概算を確認する】多くの自治体がWebサイト上で保険料の試算ツールを提供しています。前年の源泉徴収票を手元に用意して、実際の保険料をシミュレーションしましょう。任意継続と国民健康保険の両方を比較したうえで、退職日の翌日から20日以内(任意継続)または14日以内(国民健康保険)に申請してください。
- 【厚生労働省のWebサイト(https://www.mhlw.go.jp/)またはハローワーク(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)で最新情報を確認する】制度は毎年改正されます。特に保険料率・標準報酬月額の上限・軽減制度の内容は変わることがあるため、申請前に必ず公式情報を確認してください。不明な点はハローワークや市区町村の相談窓口に問い合わせると確実です。
よくある誤解
誤解1:「任意継続は2年間やめられないから不便」
2022年(令和4年)1月の健康保険法改正により、任意継続被保険者は申し出によっていつでも脱退できるようになりました。改正前は、保険料を納付しない(わざと未納にする)という方法でしか脱退できませんでしたが、現在は正規の手続きで任意脱退が可能です。再就職が決まった、国民健康保険に切り替えたい、などの理由で脱退できます。ただし、一度脱退すると再加入はできません。
誤解2:「国民健康保険は退職後すぐに安くなる」
国民健康保険料は前年の所得をもとに計算するため、退職して収入がゼロになっても、退職した年(翌年3月まで)の保険料は前年の高い所得で計算されます。つまり、退職1年目の国民健康保険料は高くなることがほとんどです。保険料が下がるのは翌年度(4月以降)からです。この点を理解せず「退職したら国保の方が安い」と思い込むのは危険です。必ず試算してから判断してください。
誤解3:「任意継続の保険料は在職中と同じ」
在職中は会社が保険料の半分を負担していますが、退職後の任意継続では全額自己負担になります。在職中に給与から天引きされていた額の約2倍が、退職後の任意継続保険料の目安です。「退職前と同じ保険証が使えるから保険料も同じ」という誤解が多いため、注意が必要です。
FAQ
Q1. 退職後、健康保険の手続きをしないとどうなりますか?
A. 日本は国民皆保険制度(すべての国民がいずれかの公的医療保険に加入する制度)を採用しています。手続きをしないと「無保険」状態になり、病院にかかった際に医療費が全額自己負担になります。また、国民健康保険は申請が遅れても最大2年間遡って保険料を請求されます。退職後はすみやかに手続きを行ってください。詳細は厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/)でご確認いただけます。
Q2. 任意継続と国民健康保険、どちらか途中で切り替えることはできますか?
A. 2022年の法改正により、任意継続から国民健康保険への切り替えは申し出によっていつでも可能になりました。逆に国民健康保険から任意継続への切り替えは、退職日から20日以内という期限を過ぎた後は原則できません。最初の選択が重要ですが、任意継続を選んだ後でも状況に応じて見直せるようになっています。
Q3. 配偶者の扶養に入ることはできますか?
A. 配偶者が会社員などで健康保険に加入している場合、一定の条件(年収130万円未満、同居など)を満たせば配偶者の被扶養者になることができます。この場合、保険料は発生しないため、最も費用を抑えられる選択肢です。配偶者の勤務先の健保組合または協会けんぽ(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/)に確認してください。
Q4. 任意継続の保険料を払い忘れた場合はどうなりますか?
A. 任意継続の保険料は納付期限(毎月10日)を過ぎると、翌日付けで資格を喪失します。ただし、前納(6か月・1年分まとめて前払い)をしている場合は、その期間は有効です。保険料を払い忘れた場合は速やかに国民健康保険の加入手続きをお住まいの市区町村役場で行ってください。なお、2022年の法改正後は未納による強制喪失ではなく、正規の申し出による脱退が可能になっています。
Q5. 国民健康保険料が高くて払えない場合、減免制度はありますか?
A. はい、あります。主に以下の制度があります。①低所得者向けの均等割・平等割の軽減制度(前年所得が一定以下の場合、2割・5割・7割の軽減)、②非自発的失業者(会社都合退職など)向けの軽減制度(給与所得を30/100として計算する特例)、③災害・生活困窮などを理由とした減免制度(各自治体の条例に基づく)。いずれも自動適用ではなく申請が必要です。お住まいの市区町村役場の国民健康保険担当窓口に相談してください。
まとめ
退職後の健康保険選択は、「任意継続」と「国民健康保険」のどちらが得かを必ず試算して比較することが最重要ポイントです。
- 任意継続が有利なケース:退職前の収入が高い・扶養家族がいる・退職した年(前年所得が高い年)に加入する場合
- 国民健康保険が有利なケース:退職前の収入が低い・扶養家族がいない・退職の翌年以降(前年所得がゼロまたは低い状態)に保険を選び直す場合
- 扶養に入れる場合:配偶者の被扶養者になるのが最もコストを抑えられる
任意継続の申請期限は退職日の翌日から20日以内(延長不可)です。この期限を過ぎると任意継続には加入できなくなります。退職が決まったら、まず標準報酬月額を確認し、国民健康保険料の試算と比較することを最優先で行ってください。
2022年の法改正で任意継続は途中脱退が可能になったため、「とりあえず任意継続に加入して、翌年以降に国民健康保険の方が安ければ切り替える」という柔軟な対応も可能です。制度を正しく理解して、最適な選択をしましょう。
公式情報・相談先
- 厚生労働省(任意継続・国民健康保険の制度解説)
https://www.mhlw.go.jp/
※「退職後の医療保険」「任意継続被保険者」などのキーワードで検索してください。 - 全国健康保険協会(協会けんぽ)-任意継続の手続き・保険料確認
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/
※各都道府県支部への連絡先もこちらから確認できます。 - ハローワーク(雇用保険・失業給付の手続き・再就職支援)
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
※失業給付と合わせて社会保険の相談も対応しています。 - お住まいの市区町村役場(国民健康保険の加入・保険料試算・減免申請)
各市区町村の公式Webサイトまたは窓口にお問い合わせください。
※国民健康保険の保険料は自治体によって異なります。必ず居住する自治体に確認してください。 - 日本年金機構(退職後の国民年金切り替え手続き)
https://www.

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