Step1:トランプ再登場、「関税再燃」のリアルな可能性
2024年、アメリカの大統領選は再び“お騒がせ男”トランプの再登場で世界中をざわつかせている。再選を狙う彼の舌鋒(ぜっぽう)は相変わらず鋭く、そして、驚くほどブレがない。とくに経済政策、なかでも「関税」は、彼にとって“最強の武器”であり、“最強のパフォーマンス”でもある。
選挙演説では、こんな発言が飛び出した。
「中国製品に一律60%の関税をかける」
「すべての輸入品に10%の関税を導入する」
…いやいや、ちょっと待ってくれ。世界は今、インフレ、サプライチェーン混乱、地政学リスクのオンパレード。そんな中で、またあの関税祭り?と思ったあなたは、正しい反応だ。だが、問題はその“あり得ないこと”が“現実になるかもしれない”という点にある。
■なぜ、また「関税カード」が出てくるのか?
トランプ氏にとって関税は、アメリカの国内産業を守る盾であり、外交交渉の矛でもある。そして彼の支持層は、グローバル化に振り回された中間層や地方の製造業者。関税政策は、そうした層への“わかりやすいアピール”になる。
現職のバイデン大統領も、対中強硬路線では妥協していないが、やり方はあくまで「静かに、段階的に」。一方、トランプは違う。関税でドカンと殴る。その“ショック療法”的な手法は、前回の政権時にも「米中貿易戦争」として現実化した。
つまり、「また関税をやるぞ」と公言しただけで、マーケットにはすでに冷や汗がじわじわ流れているわけだ。
■バイデン vs トランプ:「貿易観」の違いが見えてきた
ここでちょっと、両者の貿易に対するスタンスを比較してみよう。
ポイント | バイデン | トランプ |
---|---|---|
関税の使い方 | 最終手段、外交圧力として | 初手からぶっ放す武器 |
国際協調 | 多国間主義(同盟重視) | アメリカ・ファースト(単独主義) |
目的 | 同盟国と協調しつつ対中包囲網を形成 | 自国産業の保護と政治的パフォーマンス |
この違いは、市場にも大きく作用する。バイデンの政策は徐々に影響を及ぼす“温度差型”だが、トランプの政策はある日突然“氷水をかぶる”ようなショックを与える。
■市場が恐れているのは「過去の再現」
投資家の脳裏に焼きついているのは、2018年に始まった米中貿易戦争の光景だ。日経平均が乱高下し、自動車・電子部品・機械などの輸出系銘柄が次々と売られたあのとき。
「まさかまた同じことになるのか?」
そう思っている投資家は、少なくない。いや、むしろ多い。
そして、問題はそれが“まさか”で終わらない可能性が出てきたということだ。
■「今回は違う」とは限らない。むしろ、もっとややこしい
今回は前回と違って、状況がさらに複雑だ。
- 中国経済はすでに減速傾向。反撃の余力が落ちている
- 米国内の物価高と金利高止まりが続く中、追加関税はインフレ再燃を招くリスク
- サプライチェーンはすでに東南アジアやインドなどへシフトし始めており、単純な「中国叩き」が効果的とは言えない
つまり、「また関税で脅して終わり」とは限らず、「関税をかけたらかけたで、他のところで火がつく」構造になっているのだ。
■だから今、「過去」を知ることが最大の武器になる
というわけで、この記事では次のステップで「前回の関税騒動」で何が起きたのか、日本株はどう動いたのか、そして今回はどう備えるべきなのかを、具体的なデータと投資行動を交えてお伝えしていく。
言い換えれば、「歴史は繰り返す」かもしれないなら、「その歴史を先に学んでおく」ことが、最大の防御であり、最大のチャンスでもあるというわけだ。
さあ、次は2018年に起きた“あの大混乱”の実像を掘り起こしていこう。
Step2:2018年の記憶を掘り起こせ:米中貿易戦争で日本はどう動いたか?
「日経平均がまた下がってる…」
2018年、投資家たちの間では、そんな声が日常のように交わされていた。
トランプ政権が発表した対中関税第一弾。そこから始まったのは、言ってみれば“関税によるチキンレース”だった。最初は鉄鋼とアルミ、その後すぐに中国製品500億ドル分に25%の関税。そして中国も黙っていなかった。農産物や自動車に対抗関税。
その波紋は、遠く離れた日本市場にも直撃することになる。
■第一波・第二波で日経平均はどう動いた?
2018年3月に鉄鋼・アルミ関税が発表された直後、日経平均は一時1,000円以上の下落を記録。その後もトランプの“ツイートひとつ”で、株価が上がったり下がったりを繰り返す、ジェットコースター相場に突入した。
特に2018年10月。追加関税と米中協議の決裂懸念が重なり、日経平均は2週間で約2,500円も下げた。
これ、実は2018年の年間下落幅のほぼ半分に匹敵する。
当時を覚えている投資家からすると、「あの感じ、また来るのか…」というざわざわ感は、決して他人事じゃない。
■セクター別に見えてきた「勝ち組」「負け組」
当時、真っ先に売られたのは以下のようなセクターだった。
▼下げが目立ったセクター:
- 自動車(特に北米輸出比率が高い企業)
- 電子部品(スマホ・PC向け)
- 工作機械・FA関連
- 商社(資源価格下落の影響も連動)
いっぽうで、意外と粘った(むしろ上がった)セクターも存在した。
▼粘った・買われたセクター:
- 内需関連(通信、食品、小売)
- 医薬品(グローバル要因に左右されにくい)
- 高配当株(不安定相場で“配当狙い”が人気に)
つまり、「関税=全部下がる」ではなく、“選別”が始まったのがこの時期の特徴だった。
■個人投資家の動きはどうだったか?
当時、ネット証券各社が公表したデータを見ると、個人投資家の行動にも大きな特徴があった。
- 売りが先行するパニック売却層:ニュースを見て反射的に売るパターン
- 押し目買い狙いの逆張り派:短期反発にかけてインデックス買い
- 資産逃避でゴールド・米ドルに移した層:現物株→ETF→現金化
特にSBI証券や楽天証券では、「関税発表の翌日に売買代金が2〜3倍に跳ね上がった」というデータも出ている。
SNS上では、「トランプ砲きた!」「また朝から日経が真っ赤」など、いまのウクライナ・中東情勢とはまた違った、“政策でマーケットが踊る”タイプの不安感が広がっていた。
■結局、得した人・損した人の差はどこにあったのか?
ここが重要なポイントだ。
あの時、損した人の多くは「ニュースを見てから動いた人」だった。
一方で、得をした人の特徴は次のようなものだった。
- 情報を“1次ソース”から取っていた(Bloomberg、FRB、企業決算)
- 一部の業種に“張らず”、分散を徹底していた
- 換金性の高いETFや外貨資産を組み込んでいた
- 「下がる」より「いつ戻すか」に目を向けていた
つまり、彼らは“慌てない準備”をしていた。
言い換えれば、「想定の範囲内だった」ので、大きく崩れなかったというわけだ。
■だから今、“あのとき”を学ぶ意味がある
2025年の今、トランプ氏の関税構想が再浮上した時点で、すでに「投資家としてどう構えるか?」が試されている。
もしまた2018年のような流れになるとしたら——
次は、もっと落ち着いて、もっと準備を整えて動けるか?
ここから先は、「次に何が起きるのか?」を事前にシミュレーションしておくフェーズだ。
次章では、「今回、実際に狙われるのはどの業界なのか?」
日本がどんな影響を受けそうなのか、関税対象や為替リスクをふまえて詳しく掘り下げていこう。
Step3:今回のターゲットは誰?関税再導入の具体的な影響予測
「今回は何がやられるのか?
これが、2024年のトランプ“関税再宣言”を聞いた市場関係者の最初のリアクションだった。
前回(2018〜2019年)のターゲットは主に中国だったが、トランプはその後、日本やEUにも自動車関税をちらつかせていた。しかも今回は、選挙公約として「すべての輸入品に一律10%」というパワーワードまで飛び出している。
もはや「中国vsアメリカ」だけの話では済まない。“全部巻き込むタイプ”の関税戦争になりかねない。
そして、日本も、まさにその「巻き込まれる側」だ。
■関税対象となり得る日本の“有力ターゲット”
まず前提として、トランプが想定しているのは「貿易赤字の削減」だ。つまり、アメリカにたくさんモノを売っている国が優先的にターゲットになる。日本は、その“上位常連国”のひとつ。
では、どの分野が具体的に狙われるのか?
1. 自動車・自動車部品
トランプが前政権時代から“目の敵”にしていたのがここ。
トヨタ、ホンダ、日産といった日本の大手自動車メーカーは、アメリカ市場への依存度が高く、部品まで含めた供給網は極めて広い。
仮に25%の関税が課された場合、米国内の販売価格が上昇し、販売台数の減少につながる可能性大。
特に「現地生産率が低いモデル」が狙われやすい。
2. 鉄鋼・非鉄金属
前回も対象となった鉄鋼・アルミ関税。すでに10%〜25%の関税がかかっていたが、これをさらに強化する可能性もある。日本の鉄鋼メーカー(JFE、神戸製鋼など)は一部米国市場に出荷しており、間接的影響も大きい。
3. 半導体・電子部品
トランプは米国内の半導体製造復活を強く訴えている。となれば、外資系の部品供給企業(たとえば村田製作所、ローム、TDKなど)にもプレッシャーがかかる。
加えて、“中国に部品を売っている”日本企業も標的になり得る。これは「中国を叩きながら、日本にも間接的にダメージを与える」という構図。
■為替・業績へのインパクト:1ドル=160円時代の現実味
そして関税と並行して注視すべきが為替の動きだ。
トランプは円安を「為替操作」と批判した過去がある。2024年末には、1ドル=160円という水準が一時的に現実味を帯び、市場は大きく反応した。
関税+円安は、輸出企業にとっては「プラスとマイナスが打ち消し合う」複雑な構造になる。実際、トヨタやソニーのようなグローバル企業は、為替が円安でも関税でマイナスが吹き飛ぶ可能性がある。
しかも、関税が導入されれば、消費者価格に転嫁され、需要減速→売上減少という悪循環に陥るおそれもある。
■中小企業・サプライチェーンへの「静かなダメージ」
もっと深刻なのは、中小企業やサプライチェーンの末端にある企業群だ。
たとえば、自動車部品の一部を作っている下請け企業、輸出品に使う原材料を米国から輸入しているメーカーなどが、「関税コストのしわ寄せ」をまともに受ける。
彼らには価格転嫁の余力がない。さらに悪いことに、情報が届くのが遅く、対応のタイミングを逃しやすい。
これは株価には表れにくいが、地域経済や雇用への影響としてジワジワ出てくるタイプのダメージだ。
■アメリカ企業も巻き込む「自爆型関税」
ここで忘れてはいけないのが、「関税はブーメラン」という事実だ。
トランプが掲げる一律関税は、実はアメリカ企業自身にもコスト増をもたらす。
たとえば:
- 米国の自動車メーカー:日本製部品が高くなる → 製造コスト上昇
- 家電・スマホメーカー:東アジアからの部品が値上がり → 製品価格上昇
- 一般消費者:最終価格に転嫁される → 消費冷え込み
これらの“副作用”が現実化すれば、株価だけでなく、アメリカ国内の景気全体に波及し、それが再びグローバルなリスクオフ(投資回避)モードにつながる。
■市場は“本気で織り込み始めた”のか?
現時点では、マーケットは「言うだけでは?」という空気感も残っている。しかし、政権交代の現実味が高まるにつれ、徐々に株価にも“関税リスク”が織り込まれ始めている。
- 一部輸出株に売り圧力
- 内需株への資金シフト
- VIX(恐怖指数)の上昇傾向
このような兆候は、投資家心理が「ちょっと警戒モード」に入った証拠でもある。
次章では、こうした関税リスクが現実になったときに、投資家としてどう備えるか?
2018年からの“学び”をベースに、具体的な投資アクションを解説していきます。
Step4:「投資家はこう備える」過去から学ぶリスク対策術
“備えあれば、憂いなし”とはよく言ったもので、相場もまさにそれ。
関税のような政治リスクは、「来てから動く」ではもう遅い。いや、正確には「来る前から準備していた人だけが生き残る」のがこの世界だ。
では、2018年に乗り切った投資家たちは、いったい何をしていたのか?
そして、今この瞬間にできることは?
■まずやるべき「資産点検チェックリスト」
何より先に確認したいのは、自分のポートフォリオの脆さだ。
以下の質問に、すべて「YES」と自信を持って答えられるだろうか?
- 自分の保有銘柄は輸出依存度が高すぎないか?
- 為替の変動に強いセクターに資金を振っているか?
- 関税ショックに直撃される業種への集中投資になっていないか?
- キャッシュポジション(現金比率)は確保できているか?
ここで1つでも「ん…」と迷ったら、それはポートフォリオの見直しどきだ。
■“逃げ先”はどこ?リスクに強い資産の再確認
市場が荒れるとき、資金はどこに逃げるか? 2018年と同じような流れを想定すると、主な「逃げ先」は以下の通り。
- 金(ゴールド):インフレ耐性&安全資産としての定番。ETFでもOK。
- 米ドル建て資産:日本株が売られても、米ドル高が進めば為替差益で一部カバーできる。
- 高配当株・ディフェンシブ株(内需):通信、電力、医薬品などは値動きが比較的穏やか。
重要なのは、「リスクが来ても逃げ道を用意しておく」こと。
そしてその道は、危機が来る前に舗装しておく必要がある。
■“あのとき買われた銘柄”、今も通用するのか?
2018年〜2019年の関税ショックで買われた銘柄や資産クラスを振り返ると、以下のような傾向があった。
- KDDI、NTT、JT:内需・高配当・安定業績で資金の逃げ場に
- 金ETF(SPDRゴールドなど):安全資産として注目
- REIT(不動産投資信託):利回り目的の資金がシフト
とはいえ、2025年は金利環境も異なる。
当時のような「配当だけで正義」な相場ではないため、盲目的な再現投資は危険だ。
ここで大事なのは、「当時の投資行動のロジックを理解し、今の環境に応じて翻訳する力」だ。
■「下がったら買う」は正解か?
よく聞くフレーズに、「暴落は買い場」という言葉がある。
確かに、2018年の関税ショック時に粘り強く買い増した人は、2020年以降の株高で報われた。
でも大事なのは、“どのタイミングで” “何を” “どれくらい”買ったのか。
- 日経平均が○○円まで下がったら…?
- 為替が○○円を割り込んだら…?
- 日米の金利差が○○%を超えたら…?
こうした「事前に決めておく買いのルール」があるかどうかが、勝敗を分ける。
■分散投資の再定義:「とりあえず広く持つ」では意味がない
投資の鉄則として語られる“分散”だけど、それがただの「バラ撒き」になっていないかも今一度見直しておきたい。
たとえば:
- 日本株ばかり → 海外ETFは?
- 株式だけ → 債券やREIT、コモディティは?
- 大企業だけ → 中小型株や成長株も含んでいる?
大事なのは、「異なるリスクを持つ資産」に分けておくこと。
そして、何かが下がったときに、下がりすぎてない何かがポートフォリオを支えてくれるバランスを作ることだ。
■“売らない判断”の重要性
そして最後に…これはあえて強調したいのだが、「売らない」という選択肢もまた、立派な戦略である。
2018年の急落相場では、多くの人がパニックに陥り、底値で売ってしまった。その後株価が戻った時、戻る株はあっという間に回復してしまい、「あのとき売らなければ…」という後悔が続出した。
もちろん全力ホールドが正しいわけじゃないが、「売る理由が感情的になっていないか?」は、チェックすべきだ。
次章では、そうした“情報過多時代”の中で、
何を信じ、どこを見て、どう動くか?
情報リテラシーの鍛え方と、ニュースの読み方を深掘りしていきます。
Step5:予測不能時代に必要なのは「情報の見極め力」
投資家にとって、情報は「武器」であり「毒」でもある。
とくにトランプのような“言葉の爆弾魔”が再登場するとなれば、もう日々のニュースに振り回されるのは避けられない。
だが、マーケットで生き残っている投資家は、情報を**「ただ受け取る人」ではなく、「選び、使いこなす人」**だ。
ではその“選び方”とは、どういうものだろうか?
■速報主義に踊らされない:ニュースの「出どころ」がすべて
情報は、どこから来たかで信頼度も温度感も変わる。
たとえば、以下のような情報ソースを比べてみてほしい。
- SNS(X、Instagram、YouTube):拡散力は高いが、情報の真偽はピンキリ。
- ネットメディア(Yahoo!、NewsPicksなど):編集が入ってはいるが、タイトルで煽りがち。
- 公式発表(米国政府発表、FRB、IMFなど):一次情報。マーケットが最も反応しやすい。
- 金融機関レポート(野村、ゴールドマンなど):分析は深いが、発表タイミングに注意。
何を信じるか?ではなく、どれを“先に”見るかが大事なのだ。
たとえば、トランプが「中国に60%の関税を課す」と言った場合、まず見るべきは:
- 実際にその発言があった公式ソース(演説、発表文)
- 米中の通商担当者がどう反応したか
- 市場(為替・先物)がどう反応したか
この順番が大切。SNSで誰かが「大変なことになるぞ!」と叫んでいても、それは“二次反応”。一次情報を押さえていれば、振り回されずに済む。
■“関税発表→市場反応”のタイムラグを読み解け
実は、関税のような政策リスクは、「発表されてすぐ」よりも「市場がじわじわ反応する」ことが多い。
これは2018年も顕著だった。
- 第一次関税発表の数日後に下げが本格化
- 市場は「本当にやるの?それともブラフ?」と探り合い状態
- 確実な実行タイミングが近づいてから“本気の売り”が来た
つまり、発表と同時にパニックになる必要はない。逆に、動きが鈍いうちに情報の裏を読み、自分なりのシナリオを用意しておく方が強い。
■“相場目線”でニュースを読む癖をつける
一般的なニュースの見出しは、「不安を煽る」ものが多い。
でも、投資家としては、次のような“変換スキル”が必要だ。
たとえば:
- 「関税60%」→ アメリカ企業のコストアップ?→ 国内インフレ?→ 金利再上昇?→ 債券価格どうなる?
- 「日本の鉄鋼に追加関税」→ JFE株は売られる?→ 代替素材は?→ 逆に得をする企業は?
こうして、ニュースを“株価にとって意味ある話か?”というフィルターで読む癖をつける。
これを繰り返すことで、情報に踊らされる側から、情報を料理する側に回れる。
■“静かな兆候”を見逃すな:数字に出ない空気の変化
マーケットは、ニュースより早く空気を読む。
その空気感を掴むには、チャートや指数だけでなく、“変な兆候”を拾えるアンテナが必要だ。
たとえば:
- VIX(恐怖指数)がジリジリ上がってきたら、プロがリスクヘッジを始めているサイン
- 為替市場でドル高円安が加速 → 海外投資家が日本株を避け始めた可能性
- 出来高が急増した内需株 →「逃げ場」を求める資金の移動
こうした「小さな変化」が、後から振り返ると“嵐の前の静けさ”だったりする。
情報の質と同じくらい、“タイミング”もまた重要だ。
■情報リテラシーこそ、最大のリスクヘッジ
結局のところ、どんなに優れた戦略も、間違った情報や遅れた判断によって意味を失う。
トランプのような劇場型リーダーが再び動き出す時代には、「情報を信じない力」も重要になる。
- どこから来た情報か?
- それは株価にとってどんな影響を及ぼすのか?
- 自分の資産にどう跳ね返ってくるのか?
この3つを常にセットで考える。
それだけで、関税ショックの波も、慌てずに乗りこなせる可能性がグッと高まる。
次章では、いよいよ総まとめとして、「じゃあ結局、日本株はどうなるのか?」
アナリストの予想と個人投資家の感覚、その温度差から“攻めるべきタイミング”を一緒に探っていきましょう。
Step6:結局、日本株はどうなる?プロと素人の見を比べてみた
「で、どうなるの?」
——ここまで読んできた投資家が最後に知りたいのは、やっぱりこの一言に尽きる。
トランプの再登場、関税政策の再燃、為替の乱高下、不透明な国際情勢…。
リスクは山積み、でも株価はそれを織り込んでいるのか、いないのか?
この章では、専門家の予測と個人投資家の“肌感覚”のズレをあえて炙り出し、そこから「動くか、待つか」「攻めるか、守るか」の判断材料を見つけ出す。
■証券会社やプロアナリストの予想:意外と強気?
2025年初頭、大手証券会社のレポートでは以下のような予測が並んでいた。
- 野村證券:日経平均年末予想 41,000円前後(輸出株の巻き返しを見込む)
- 大和証券:内需堅調、関税リスクは一時的と見る
- 外資系(ゴールドマン・サックス等):一部企業には打撃も、全体としては“調整の範囲”
つまり、**「関税が実際に発動されても、それはもう織り込まれた」「むしろ過剰に下げれば買い場」**という、ある種の強気スタンスが目立つ。
この背景には、以下のような視点がある。
- 日本企業の業績は為替によって底堅さを維持
- 関税によるコスト増は企業努力で吸収可能(特に大企業)
- トランプ政権が誕生しても“すぐには動かない”可能性
だが、である。
■個人投資家の本音:「いや、怖いっしょ」
SNSや掲示板、個人投資家向けコミュニティをのぞくと、全く違うムードが漂っている。
- 「あの関税地獄をもう一度とか、絶対ムリ」
- 「プロは楽観視してるけど、実際の被害は中小企業から来る」
- 「何が起こるかわからないから、しばらくノーポジ」
- 「現金比率高めてる。今は動くときじゃない」
ここで見えてくるのは、“リスクに対する肌感覚”の差だ。
プロは「数字と過去のデータ」で語り、個人は「痛みの記憶と直感」で動く。
どちらが正しいかではない。大切なのは、その温度差を認識することだ。
■“暴落=危機”ではなく、“暴落=機会”という考え方
これまで何度も暴落のたびに儲けた人がいる。
彼らに共通しているのは、“事前に”自分のシナリオを持っていたこと。
- どれくらい下がったら買う?
- どの銘柄なら買える?
- どの資産に一時避難する?
- どの段階で“攻め”に転じる?
逆に、暴落で損をした人は、常に**「その場で考えた」**。
感情に任せて売って、戻したあとに後悔する。これは投資家あるあるだ。
■最終戦略:「備えながら攻める」
結局、今このタイミングで求められるのは、“二律背反のバランス感覚”だ。
- 不透明だからこそ、守りを固める
- 守りを固めたからこそ、チャンスで攻められる
- 情報を読み、流されずに判断する
- シナリオを複数持ち、どれにも対応できるようにする
そして最後に、大切なのは**「自分に合ったリスクの取り方を知ること」**だ。
プロと同じように動く必要はない。あなたは、あなたなりの守り方と攻め方がある。
■まとめ:未来は読めない。でも備えはできる
トランプの再登場がもたらす関税リスクは、確かに不気味だ。
でも、2018年の記憶と行動を学び直すことで、私たちは“次”への対応力を持つことができる。
過去は変えられない。
未来も完全には予測できない。
でも、今からの行動だけは、自分で決められる。
それが、投資家として最も強い“武器”なのだ。
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