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この記事でわかること

会社を退職したとき、最も頭を悩ませる問題のひとつが「健康保険をどうするか」です。退職後の健康保険には大きく分けて「任意継続被保険者制度」と「国民健康保険への切り替え」の2つの選択肢があります。どちらを選ぶかによって、毎月の保険料が数千円から数万円単位で変わることもあります。
この記事では、以下の内容をわかりやすく解説します。
- 健康保険の任意継続とは何か(制度の基本)
- 任意継続と国民健康保険、保険料はどちらが安いか
- 対象者・加入条件・手続き期限
- 必要書類と申請窓口
- ケース別のどちらが得かの判断ポイント
- よくある誤解とFAQ
退職前後の方はもちろん、家族が退職を控えている40〜70代の方にも役立つ情報をまとめました。
先に結論

「任意継続」と「国民健康保険」のどちらが得かは、退職前の給与水準と退職後の収入状況によって異なります。ただし、一般的な傾向として以下のように整理できます。
- 退職前の給与が高かった人(標準報酬月額が高い人):国民健康保険の方が安くなるケースが多い
- 退職前の給与が平均的〜やや低めだった人:任意継続の方が安くなるケースが多い
- 扶養家族が多い人:任意継続は扶養家族の保険料が無料のため、家族全体で見ると任意継続が有利になりやすい
- 退職後すぐに収入がゼロになる人:翌年度の国民健康保険料が大幅に下がる可能性があるため、1〜2年のスパンで再計算が必要
重要なのは、退職後20日以内に意思決定と手続きを行わなければならないという期限です。焦らず正しく判断するために、この記事を最後までご覧ください。
対象となる人

健康保険の任意継続制度を利用できる人は、一定の条件を満たす必要があります。以下の表で、任意継続と国民健康保険それぞれの条件・特徴を比較してください。
| 条件項目 | 任意継続 | 国民健康保険 |
|---|---|---|
| 対象者 | 退職前に2か月以上、健康保険(協会けんぽ・組合健保)に継続加入していた人 | 日本国内に住所がある75歳未満のすべての人(他の保険に未加入の人) |
| 加入期間の条件 | 退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間が必要 | 条件なし(退職翌日から加入義務が発生) |
| 申請期限 | 退職日の翌日から20日以内(厳守・期限後は不可) | 退職日の翌日から14日以内(住民票のある市区町村へ) |
| 加入できる期間 | 最長2年間 | 制限なし(次の保険に加入するまで継続) |
| 扶養家族の扱い | 被扶養者として追加可能(保険料の追加負担なし) | 家族1人ごとに均等割保険料が加算される |
| 保険料の決め方 | 退職時の標準報酬月額または保険者が定める上限額のいずれか低い方をもとに計算。全額自己負担(会社負担分がなくなる) | 前年の所得・資産・世帯の加入人数などをもとに市区町村が計算 |
| 傷病手当金 | 任意継続加入後に新たに発生した傷病は対象外(在職中からの継続受給は条件付きで可) | なし |
| 給付内容 | 在職中とほぼ同等。組合健保では独自の付加給付がある場合も | 法定給付のみ(出産育児一時金あり、傷病手当金・出産手当金なし) |
| 途中解約 | 2022年1月の法改正により任意のタイミングで解約可能 | 次の健康保険加入時に自動的に脱退 |
| 年齢上限 | 75歳未満(75歳になると後期高齢者医療制度へ移行) | 75歳未満(同上) |
※75歳以上になると後期高齢者医療制度へ自動的に移行するため、任意継続・国民健康保険いずれも対象外となります。詳しくは厚生労働省の公式サイト(https://www.mhlw.go.jp/)をご確認ください。
制度・手続きの概要

任意継続とは
健康保険の任意継続(正式名称:任意継続被保険者制度)とは、会社員が退職後も最長2年間、在職中に加入していた健康保険(全国健康保険協会=協会けんぽ、または会社の組合健保)に引き続き加入できる制度です。
在職中は保険料を会社と折半していましたが、退職後は全額を自分で負担することになります。ただし、退職時の標準報酬月額が保険者の定める上限(協会けんぽの場合は標準報酬月額30万円)を超えていた場合は、上限額をもとに保険料が計算されるため、現役時代の自己負担より低くなることもあります。
保険料の計算例(概算)
以下は、協会けんぽ(東京都)を例にした概算計算です(2024年度料率:10.00%)。国民健康保険料はお住まいの市区町村によって大きく異なるため、必ず市区町村窓口またはWebの試算ツールでご確認ください。
| 退職前の標準報酬月額 | 在職中の自己負担(約半額) | 任意継続の保険料(全額・月額) | 国民健康保険の目安(単身・前年収入のみ) |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 約10,000円 | 約20,000円 | 約15,000〜18,000円 |
| 30万円 | 約15,000円 | 約30,000円(上限適用) | 約22,000〜26,000円 |
| 40万円(上限適用) | 約20,000円 | 約30,000円(上限) | 約28,000〜33,000円 |
| 60万円(上限適用) | 約30,000円 | 約30,000円(上限) | 約38,000〜45,000円 |
※扶養家族がいる場合、任意継続では追加保険料なしで被扶養者に入れられますが、国民健康保険では家族の人数分が加算されるため、家族が多いほど任意継続が有利になります。
手続きの流れ(任意継続)
- 退職日を確認し、退職日の翌日から20日以内の申請期限を把握する
- 在職中に加入していた保険者(協会けんぽまたは健保組合)に申請書を提出する
- 初回保険料を納付する(納付期限を過ぎると資格を失うため注意)
- 新しい健康保険証が届く(通常1〜2週間程度)
必要書類と確認先
任意継続の申請に必要な書類
- 健康保険任意継続被保険者資格取得申出書(協会けんぽ所定の書式・公式サイトよりダウンロード可)
- 退職証明書または雇用保険被保険者離職票(退職日が確認できるもの)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 被扶養者がいる場合:被扶養者の収入を証明できる書類(直近の課税証明書など)
- 振替納付を希望する場合:預金口座振替依頼書
- (組合健保の場合)健保組合が独自に定める書類が必要な場合あり
国民健康保険への加入に必要な書類
- 健康保険資格喪失証明書(退職先の会社または協会けんぽが発行)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- マイナンバーがわかるもの(マイナンバーカード、通知カードなど)
- 印鑑(認印可)
- 在職中に使用していた健康保険証(返却が必要な場合あり)
申請・相談窓口
- 協会けんぽ加入者:全国健康保険協会(協会けんぽ)各都道府県支部。申請書はWebからダウンロード可能。
- 組合健保加入者:在職中に加入していた健康保険組合(会社の総務・人事部に確認)
- 国民健康保険の加入・保険料試算:お住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口(市役所・区役所・町村役場)
- 退職後の給付全般の相談:最寄りのハローワーク(公共職業安定所)(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)
ケース別の注意点
ケース1:60歳で定年退職し、しばらく無職になる場合
定年退職後に収入がなくなる場合、退職した年の国民健康保険料は「前年の給与所得」をもとに計算されるため、初年度は高額になりがちです。一方、任意継続の保険料は退職時の標準報酬月額をもとに計算されるため、比較的安定しています。
ポイント:退職1年目は任意継続の方が安くなる場合が多く、2年目以降(収入ゼロが続けば)は国民健康保険の方が安くなる可能性があります。2022年の制度改正により、任意継続被保険者は任意のタイミングで資格を喪失して国民健康保険に切り替えることが可能になりましたので、保険料が逆転したタイミングで切り替えを検討しましょう。
ケース2:退職後すぐに再就職する見込みがある場合
3か月以内に再就職する予定がある場合、新しい会社の健康保険に加入するまでの短期間をどうカバーするかが問題になります。任意継続と国民健康保険の両方を比較した上で、手続きの手間が少ない方を選ぶのも一つの考え方です。
ポイント:就職して新たな健康保険に加入した場合は、その時点で任意継続の資格が自動的に喪失します。短期間であれば国民健康保険でも大差ない場合があります。再就職先が決まっている場合は、入社日をもとに逆算して保険の空白期間が生じないよう注意してください。
ケース3:配偶者や子どもを扶養に入れている場合
家族を扶養している人にとって、任意継続は非常に有利です。国民健康保険では、被扶養者(家族)1人ひとりに均等割保険料がかかりますが、任意継続では扶養家族の保険料は無料です。
計算例:配偶者と子ども2人(計3人の扶養家族)がいる場合、東京都の国民健康保険では均等割だけで年間約16万〜20万円が追加される計算になります。扶養家族が多いほど任意継続が有利と言えます。
ケース4:傷病手当金を受給中の場合
在職中に病気やケガで傷病手当金(標準報酬日額の3分の2)を受給していた場合、退職後も一定の条件を満たせば継続して受給できます。ただし、任意継続に切り替えた後に新たに発生した病気・ケガに対しては傷病手当金が支給されません。退職後も傷病手当金の継続給付が必要な方は、受給終了後に改めて保険の切り替えを検討しましょう。
今日やること3つ
- 【退職日と20日後の日付をカレンダーに記入する】任意継続の申請期限は退職日の翌日から20日以内です。この期限を過ぎると任意継続は選べなくなります。今すぐ手帳やスマートフォンのカレンダーに「保険手続き期限」を登録してください。
- 【保険料を両方試算して書き比べる】任意継続の保険料は全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料額表(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r151/)で確認できます。国民健康保険料はお住まいの市区町村のWebサイトに試算ツールがある場合があります。両者の金額をメモして比較してください。
- 【会社の総務・人事部門に「健康保険資格喪失証明書」の発行を依頼する】国民健康保険への加入手続きに必要な書類です。任意継続の場合も、喪失日の確認に使います。退職が決まったら早めに申請しておくことをおすすめします。
よくある誤解
誤解1:「任意継続は在職中と同じ保険料で加入できる」
在職中は保険料を会社と折半していましたが、任意継続では全額を自己負担します。つまり、在職中の自己負担額の約2倍になります。「任意継続=今と同じ負担」と思っていると、実際の請求額に驚くことがあります。必ず事前に金額を確認してください。
誤解2:「任意継続は2年間やめられない」
かつては途中解約が認められていませんでしたが、2022年1月の健康保険法改正により、任意継続被保険者は任意のタイミングで資格を喪失できるようになりました。「国民健康保険の方が安くなった」と判断した時点で切り替えることができます。ただし、申出月の翌月1日付での資格喪失となる場合が多く、保険者によって取り扱いが異なるため、事前に確認を忘れずに。
誤解3:「国民健康保険は退職後いつでも遡って加入できる」
国民健康保険への加入は、健康保険の資格喪失日(退職翌日)から14日以内に手続きを行う必要があります。期限を過ぎても加入自体は可能ですが、保険料は資格喪失日に遡って発生します。手続きが遅れても「保険料が安くなる」わけではないので注意が必要です。
FAQ
Q1. 任意継続の申請はどこでできますか?
A. 在職中に協会けんぽに加入していた方は、全国健康保険協会(協会けんぽ)の各都道府県支部に申請します。組合健保に加入していた方は、その健康保険組合に申請します。申請書はそれぞれの公式サイトからダウンロードできるほか、郵送でも受け付けている場合があります。不明な点は会社の総務・人事担当者に確認してください。協会けんぽの情報は公式サイト(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/)で確認できます。
Q2. 保険料を払い忘れるとどうなりますか?
A. 任意継続の保険料の納付期限(毎月10日)を過ぎると、その翌日付で任意継続の資格が自動的に喪失されます。一度喪失すると再加入はできません。資格喪失後は速やかに国民健康保険または家族の被扶養者への加入手続きを行ってください。うっかり払い忘れを防ぐために、口座振替の利用を強くおすすめします。
Q3. 退職後に家族の扶養に入ることはできますか?
A. 配偶者や親族が会社員として健康保険に加入しており、その被扶養者の収入要件(年収130万円未満かつ被保険者の年収の2分の1未満など)を満たせば、家族の健康保険の被扶養者になることができます。この場合、自分自身の保険料負担はありません。任意継続・国民健康保険への加入だけでなく、この「家族の扶養に入る」という選択肢も必ず検討してください。
Q4. 任意継続中に再就職した場合はどうなりますか?
A. 新しい会社の健康保険に加入した時点で、任意継続の資格は自動的に喪失します。新しい健康保険証が発行されたら、速やかに任意継続の保険証を保険者(協会けんぽ等)に返却してください。重複して保険料を払っていた場合は、還付を受けられることがあります。再就職先が決まった際は、入社日と保険の切り替え日を早めに確認しましょう。
Q5. 任意継続と国民健康保険、給付内容に違いはありますか?
A. 医療費の自己負担割合(3割など)や高額療養費制度については、どちらも基本的に同等です。ただし、任意継続(特に組合健保)では、独自の付加給付(自己負担への上乗せ補助など)や健診費用の補助が受けられる場合があります。一方、国民健康保険には傷病手当金がなく、出産手当金もありません。給付内容の差は保険者によって異なるため、詳細は厚生労働省の公式サイト(https://www.mhlw.go.jp/)または加入中の保険者に確認してください。
まとめ
退職後の健康保険の選択は、保険料の負担額・扶養家族の有無・退職後の収入見込みの3点を軸に考えることが大切です。以下の表を参考に、ご自身の状況に合った選択をしてください。
| 比較ポイント | 任意継続が有利なケース | 国民健康保険が有利なケース |
|---|---|---|
| 保険料水準 | 退職前の給与が平均的〜低め、または上限額が適用される場合 | 退職前の給与が高く、退職後に収入が大幅に減少する場合 |
| 扶養家族 | 被扶養者が1人以上いる場合(追加保険料なし) | 単身で扶養家族がいない場合 |
| 加入期間の見込み | 数か月以内に再就職または短期の無職期間が見込まれる場合 | 2年以上の長期にわたって無職・低収入が見込まれる場合 |
| 手続きの柔軟性 | 2022年改正で途中解約・切り替えが可能になった | 次の健康保険加入時にスムーズに脱退できる |
最終的には実際の保険料額を試算して比較することが最も重要です。面倒でも、退職前に一度両方の保険料を計算しておくことで、毎月の家計への影響を最小限に抑えられます。判断に迷う場合は、お住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口や、協会けんぽの相談窓口へ遠慮なく相談してください。
公式情報・相談先
- 厚生労働省(健康保険・退職後の医療保険に関する公式情報):https://www.mhlw.go.jp/
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)任意継続の手続き・申請書ダウンロード・保険料額表:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r151/
- ハローワーク(雇用保険・退職後の給付・就職支援に関する相談):https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
- お住まいの市区町村窓口(国民健康保険の加入手続き・保険料試算):各市区町村の公式Webサイト、または役場の国民健康保険担当窓口にお問い合わせください。
- 健康保険組合連合会(組合健保加入者向けの情報・各健保組合の検索):https://www.kenporen.com/

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